焼かれたトーストをロックオンが口にする。 隣に座っていたティエリアも、同じようにトーストを口にする。 「あちち」 ロックオンが、トーストを放す。 ティエリアも、トーストを放す。 ロックオンが、ブラックコーヒーを飲む。 ティエリアは苦いのが嫌いなので、ホワイトメロンソーダを飲んだ。 そのまま、ロックオンはトーストに苺ジャムを塗る。 ティエリアも、同じように苺ジャムを塗る。 そのまま、一枚トーストを食べてしまう。 ティエリアも、トーストを食べ終わる。 目玉焼きに醤油をかける。 ティエリアは醤油ではなく塩をかけた。 そのまま、フォークで突き刺して、ロックオンは一口で食べてしまった。 ティエリアは、ナイフで一口サイズにしては食べていく。かなり急いでいる。 もう一枚のトーストの上に、ロックオンはなぜか細かく刻まれたピーマンを乗せた。そのまま食べる。 ティエリアも、トーストの上に細かく刻まれたピーマンを乗せる。 右手にもって、口の前に持ってくるが、食べない。 ティエリアはピーマンが嫌いだった。 苦いので、大嫌いだ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 しゅん。 肩を落として、ティエリアがうなだれる。 くくくと、ロックオンが笑う。 そして、ティエリアの頭を撫でた。 「ピーマンは、嫌いです」 「真似してるから、食うのかと思った」 「嫌いなものは食べません」 「さっきから何してんだ?」 「ロックオンの真似です」 「真似して面白いか?」 「全然面白くありません」 いつもの表情で、素直にそう答える。 目玉焼きをナイフて急いで切って食べているティエリアは可愛かった。 というか、真似する行動そのものもかわいらしい。 「何の本を読んだ?」 「親鳥を真似するカルガモの雛について」 そんなことだろうと思った。 すり込みと言われる現象についての本をティエリアは読んだ。 それを実践してみたのだろう。 IQは180をこえているというのに、どこか精神的に未熟で、幼子のようだ。 ティエリアがこの前読んでいた本は、科学の専門書だった。そんな本ばかり読んでいるのかと思えば、小説も読むし、絵本も見る。 大人びたティエリアと、幼子なままのティエリアと。 二つの顔が、交差しあう。 ロックオンはどちらも好きだった。 「ほら」 ピーマンの乗っていたトーストを、新しいトーストと交換してやると、ティエリアはすりこみの真似を止めて、普通に食べだした。 ロックオンは、ピーマンを乗せてしまったトーストを2枚食べた。まずかったが、まぁティエリアをからかうだしにしたのだし、食物を粗末にすることもできないし。 食べ終わったティエリアが、ロックオンにキスをする。 「ピーマンの味がする」 ティエリアは急いでホワイトメロンソーダを飲んで、大嫌いなピーマンの苦味をとるのだった。 まったく。 なにがしたいのか、ティエリアは。 くくくと、ロックオンは声を押し殺してまた笑うのだった。 |