あなたの温もり







ぎゅっと、ティエリアがロックオンの服を握ったまま離さない。
「どうした、ティエリア?」
「いいえ」
首を振る。
サラサラと、綺麗な音をたてて零れていく紫紺の髪。
氷の華はいつでも美しい。
泣いているときも、笑っているときも、怒っているときも、喜んでいるときも。
そんな容姿に人工的につくられているのだから。
誰もが羨むような美を究極にまで高めたもの。
それがティエリア。
「傍に、居てください」
「いなくなったりしないから、安心しろ」
「あなたは僕を罰するべきなのに」
そっと、眼帯に覆われた右目を触る。
「あーもう、何度も言っただろ?あれは俺が勝手にした行動で、ティエリアに責任なんかねーよ」
「あなたに罰されたい」
「あのなー」
「あなたの罰なら、どんなつらいものでも受け入れます」
「じゃあ、望み通り罰を与えてやるよ」
片方だけのエメラルドの瞳が、何度か瞬く。
ぐいっと、腰を引き寄せられる。
そのまま、服の上のほうのぼたんを外され、鎖骨に噛み付かれた。
きつくはない。
「これが、俺の罰」
「あなたが与えてくれた罰。ずっと、その痕が一生残ればいいのに」
噛み付かれた痕を、そっと撫でるティエリア。
「あーもー」
ロックオンが、がしがしと頭をかく。
噛み付くように、少し乱暴にキスをする。
「あなたの痛みがほしい」
「だーめ」
「どうしてですか」
「大切にしたいから」
「あなたになら、どんなに乱暴に扱われも構わないのに」
乙女の表情で、目を伏せて大胆な発言を躊躇もなく口にする。
「きっと、僕はいつかあなたのせいで壊れる」
「誰が壊すかよ」
ぎゅっと、ティエリアを抱きしめる。
その温もり。
あなたの温もりが、すぐ傍にある。





「ねぇ。言ったでしょう。いつか、僕はあなたのせいで壊れるって」
ロックオンのジャケットを握り締めて、涙を零す。
「あなたの罰は、辛過ぎる。僕を一人にするなんて、これ以上酷い罰があるだろうか」
ダン!
床を拳で殴る。
「あなたの罰を享受すると決めていたのに。こんなのはあんまりだ」
あなたが傍にいて、その上で罰を受けたかった。
一緒に、傍にいて、温もりが隣にあって、その上であなたに罰されたかった。
あなたの温もりは、もうこの世界のどこを探してもない。
ポタリと、ジャケットに涙が滴る。
「あなたのせいで僕が壊れていく。でも、それを僕は望む。あなたのせいで壊れることができるなら、それもまた幸せだ」
こんなにも、こんなにも。
痛いくらい、痛いくらい。
どうしようも切ないくらい、切ないくらい。
ただ。

愛しているから。

「愛しています、ロックオン」

ポタリ、ポタリ。
涙の染みたジャケットをぎゅっと握り締める。
「うわあああああああ」
慟哭。
魂の、叫び。
それさえも、あなたには届かない。
あなたの罰は、なんて残酷なのだろうか。
あなたの温もりがないなんて。