「おはよう、アレルヤ」 「おはよう、マリー」 ドイツで一緒に暮らし始めたアレルヤとマリー。 今日も、新しい一日が始まる。 「朝食ができているわ、一緒に食べましょう」 マリーが作った朝食は、スクランブルエッグに、ハムを焼いてトーストに乗せ、レタスと一緒にはさんだもの。 簡単な食事ではあったが、朝ならそれくらいで十分だ。 「本当は、目玉焼きにしようと思ったの。でも、ぐちゃぐちゃになってしまって、えいって混ぜたらスクランブルエッグのできそこないになってしまったわ」 スクランブルエッグにしては、卵が分厚い。 「あははは。気にしなくてもいいのに」 「料理、もっと上手くなりたいわ」 「マリーは十分料理が上手だよ」 「そうかしら?」 アレルヤからしてみれば、マリーの料理の腕はよい。 確かに、どの料理も見た目が少し変だが、味はおいしい。 「マリーの作るものなんだから。もっと自信をもって」 「アレルヤは優しいのね」 マリーは、スクランブルエッグにケチャップをかけようとして、ドボドボとかけすぎた。 「あら。またやってしまったわ」 「僕のと交換しよう」 アレルヤが、スクランブルエッグを自分のものとマリーのものと取り替えた。 アレルヤは、ケチャップまみれになったスクランブルエッグを普通に食べる。 「味、おかしくないかしら?」 「僕はトマトケチャップも好きだから。平気だよ」 どこまでも優しいアレルヤ。 マリーは微笑む。 やがて、出勤の時間になる。 アレルヤのネクタイをちゃんと直して、マリーが口付けた。 「いってらっしゃい」 「いってくるよ。携帯で連絡するからね」 「ええ」 アレルヤは、ドイツにあるCB研究所に勤めている。 「さて、私も準備しなくちゃ」 マリーは朝食の食器を洗い終えると、洗濯物を干して、家の中を掃除する。 そして、昼近くになって、着替えた。 バイトしてる花屋にいくのだ。 今日も、綺麗な花の世話をしよう。マリーは心から花を愛していた。 「いってきます」 マリーは笑って、ドアに鍵を閉める。 二人で家庭を持った。 憧れていた生活。 「あら、マリーちゃん、元気がよさそうね」 花屋のおばさんが、マリーに声をかける。 「旦那様と何かいいことがあったのかしら?」 「うふふふふ。秘密です」 「今日も、一日頑張りましょうね」 「はい」 マリーは笑顔で、花に包まれて仕事をはじめる。 マリーとアレルヤは結婚してまだ日が浅い。 アレルヤは、マリーに働かなくてもいいと言ったのだが、一人家の中で退屈するのはマリーは嫌だった。 共稼ぎする必要はないので、時間を潰す程度の、1日4時間ほどのバイトを花屋ではじめた。 週に四日だし、楽だし、何より大好きな花に囲まれるし、店が終わったときにはいつも店の主人が綺麗な花を分け与えくれた。 おかげで、いつもアレルヤとマリーの家の庭は花で溢れているし、家の中も花瓶に飾られた花でいっぱいだ。 「お花さん、今日も綺麗ね」 銀色の乙女が、クスクスと笑う。 太陽が、優しく微笑んでいた。 |