「どうして!どうしてあの人が死ぬ必要があったんだ!」 「落ち着きなさい、ティエリア」 刹那のせいだと責めた後、ミス・スメラギに敵はまだいるのだと恫喝された。 分かっていた。 そして、最後は自分を責めた。 自分のせいた。 ロックオンは、利き目を失っていなければ生きていたはずだ。 彼を殺したのは自分だ。 ティエリアは泣き叫んだ。 「あなたと、あなたと、未来を歩くときめたのに!!」 涙はいくつもいくつも溢れてくる。 「あなたが、あなたが・・・・あなたがいない」 ぎゅっと、ロックオンの部屋にこもり、ロックオンのジャケットを握り締める。 「ああああああああああ」 魂の慟哭。 何度泣き叫んでも、足りない。 「あなたは僕を一人にはしないといったのに!そばに居てくれるといったのに!」 ジャケットをぎゅっと抱きしめる。 ふと、ロックオンのベッドの上の棚に、ティエリアとロックオンがアイルランドの、ロックオンの生家で一緒に映った写真が飾られているのを見つける。 それを手にする。 「あなたは、笑っている。この中で、あなたは幸せそうに笑っている。でも、どうしていないの・・・・今傍にあなたはいない。どうしていなくなってしまったの」 ポタポタポタ。 いくつも涙がティエリアの白い頬を伝わって、床に零れ落ちる。 「ティエリア・アーデ」 「刹那・F・セイエイ」 ロックオンの部屋の中に入ってきた刹那に、ティエリアはたまらず抱きついた。 「あの人がいなくなってしまった。あの人が、あの人が。僕のせいで死んでしまった」 「ティエリア」 刹那は、黙ってティエリアを抱きしめた。 震えるティエリアは、こんなにも弱かっただろうか。 刹那の知っているティエリアは、かわいくもあったがかっこよく、そして強かった。 「ロックオンが・・・・出撃前に、こう言っていた。いつまでも愛している、幸せになってくれ、と」 「うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!」 ティエリアは泣き叫んだ。 「あなたのいない世界に幸せなんてあるものか!あなたのいない世界で、どうやって幸せになれというんだ!」 「ティエリア」 「僕は、僕は・・・・」 石榴の瞳から幾つもの涙が零れ落ちる。 数え切れない涙が。 「ロックオンは、とてもお前を愛していた」 「そんなこと、知っている!」 「誰よりも大切にしていた。誰よりも愛していた。世界で一番、ティエリアを愛していた。だが、彼は言っていた。ティエリアを残す結果になっても、やらなければならないことがあるのだと。そのために自分はずっと生きて、ソレスタルビーイングに入り、ガンダムマイスターになったのだと」 「ロックオン、あなたは卑怯だ!僕をこんなにも愛しておきながら、家族の敵をとって散ってしまうなんて。僕の前からいなくなってしまうなんて!」 「ティエリア」 ぎゅっと抱きしめると、ティエリアはまた嗚咽をもらした。 「僕は、僕は、まだあなたに言っていないのに!」 刹那にしがみつき、ティエリアは首を振る。 サラサラと、髪が零れる。 「あなたに、まだ愛しているって言っていないのに!!!!」 あなたに、僕はまだ愛していると一言も言っていない。 恥ずかしかったら、言えなかった。 どうして言わなかったのだろう。 「愛している」って。 簡単な言葉じゃないか。 こんなにも、こんなにもロックオンのことを愛しているのに。 「僕は、あなたを愛していた。愛しています、ロックオン。愛してる、愛してる、愛してる!」 刹那に抱きしめられながら、ティエリアは壊れたように繰り返す。 「愛してる、愛してる、愛してる、愛してる・・・・あなたに僕は言っていない。愛しているって、僕はあななに言っていない・・・・」 「ティエリア・・・・」 ティエリアは、ずっと泣き続けた。 NEXT |