ティエリアの病気は、順調に回復していった。 そして、退院の日を迎える。 「愛しています、ロックオン」 形見となった指輪を手に、ティエリアは愛を囁く。 これからも命ある限り、ロックオンを愛していくだろう。 「ついたぞ」 刹那が、そっとティエリアを抱き上げる。 「刹那、一人で歩ける」 「だめだ、まだ大人しくしていろ」 「心配性だな、刹那は」 新しく用意された家は、ティエリアのためにロックオンの遺品も移してあった。 刹那は、ティエリアがロックオンを愛していると承知のうえで愛しているのだ。 ロックオンから、ティエリアを奪わない刹那。 それが、刹那の愛し方。 日本の経済特区、東京に新しい家を買った。 刹那とティエリアが、二人で暮らしていくための家だ。 「にゃおん」 「猫だ」 扉をあけると、子猫が二匹刹那とティエリアの元に駆け寄ってきた。 「道端に捨てられていたところを、拾ってきたんだ」 「綺麗な猫。白猫と黒猫か。なんだか対照的だな」 黒猫の瞳は金色で、白猫はブルーと金色のオッドアイだった。 「あ、この猫オッドアイだ。アレルヤみたいだな」 「そうだな」 アレルヤとは、退院の日にあった。マリーとライルとも会った。 皆、帰ってきたティエリアを暖かく迎えてくれた。 ロックオンという命があったことは、刹那とティエリアだけの秘密だ。 「愛している、ティエリア」 「刹那・・・」 ティエリアと刹那は、深いキスを交わす。 絶望に打ちひしがれていたティエリアを、ずっと刹那が支えてくれた。 そう、昔のように。 魂の双子は健在だ。 その愛は、昔のようにもう歪んではいない。 「猫の名前はもう決めたのか?」 「いや、まだだ」 「名づけてもいいか?」 「ああ」 「では、イフリールとマリア」 「バーチャル装置のAIの名前か」 「僕は、あのAIが二人とも好きなんだ。あと、アズラエルというAIもいるが、名づける相手がいないな」 「そんなことはないぞ」 「ワン!」 「うわ!」 刹那の言葉と一緒に、でっかいセントバーナードが飛び出してきた。 「この犬は、保健所から引き取ってきた。名前は太郎だ」 「太郎はあんまりだ。決めた、君の名前はアズラエルだ」 「またAIの名前か」 「僕はバーチャル装置のAIたちを愛していたから」 「そうか」 ティエリアは、セントバーナードを撫でると、次に二匹の子猫を抱いた。 「これからよろしく、マリア、イフリール、アズラエル」 「にゃおん」 「にゃあ」 「わんわん」 ティエリアの顔から、久しぶりの笑みがこぼれた。 NEXT |