「おはよう」 「おはようございます」 眠い目を擦って起きる。 着替えて、歯を磨いて顔を洗った。 「ブクブクブク・・・・・・・・・・」 いつものように、洗面所にためた水に顔を沈めるティエリアを、ロックオンが抱き上げる。 「洗面所なんかでおぼれるなよ」 「ふぁい・・・・・・ZZZZZ」 「こら、立ったまま寝るな」 ティエリアは器用だ。 歯を磨いたまま寝たり、立ったまま眠ったり、顔を洗う途中で眠ったり。 ロックオンが見ていないと、ベッドにふらふらもどって、こてんと倒れてそのままいつも昼まで惰眠を貪るティエリア。とても低血圧だ。 それを、毎日ロックオンが起こして、一緒に食堂にいって朝食を食べる。 「用意はいいか?」 「用意は万全でありまし」 言葉も変だし、途中で噛んだ。 ロックオンは声を押し殺して笑う。 「あ、待って」 扉を開き、先に出て行くロックオンに背を向けるティエリア。愛しのジャボテンダー抱き枕の「ジャボ子さん」年齢14歳、女性、を(勝手にティエリアが設定した)ベッドの上から抱き上げると、そのまま抱きしめて廊下に出る。 「ほら、行くぞ」 手を握られて、そのまま二人で食堂に向かう。 食堂では、すでにアレルヤと刹那が二人揃って食事していた。 「おはよう、アレルヤ、刹那」 「おはよう」 「・・・・・・・・・おはよう」 刹那はまだ眠そうだ。 「あれ、ティエリア?」 ティエリアは、食堂の入り口の自動扉にジャボテンダー抱き枕を挟めてしまい、おろおろしている。 「ジャボテンダーさんが!」 自動扉が、ティエリアの熱に反応して開く。 「ごめんなさい、ジャンボテンダーさん。朝から痛い思いをさせてしまいましたね。今日は特別にホワイトメロンソーダを奢ります」 ぺこぺことジャボテンダーに謝り、ロックオンが座ったカウンター席の隣に座ると、コップを二つもって、大好きなホワイトメロンソーダを二人分注ぐと、ティエリアの席の隣にもたせかけたジャボテンダーのカウンターに、コップを置く。それはそれは、申し訳なさそうに。 「ぶはっ」 刹那は、その行動を見てまたふきだして笑っている。 アレルヤも、なるべく騒がないように、声を落として笑っている。 「おいしいですか、ジャボテンダーさん」 隣のジャボテンダーを見る。 「おいしいってさ」 代わりに、ロックオンが答えてやる。 「良かったです」 ティエリアは、食事をはじめた。サラダの上に二つ置かれたプチトマトを、そっとロックオンのサラダの上に置くティエリア。トマトケチャップはスキだが、生のトマトは嫌いだった。 「こら、ちゃんと食べなさい」 「無理です」 ぶんぶんと首を振る。 「だめだ、食べろ」 目の前にもってこられると、ティエリアは青ざめた。 「もう、仕方ねーな」 ロックオンが、ティエリアの分までプチトマトを食べると、ティエリアは心から安堵したかのように胸を撫で下ろすのであった。 隣では、バランスを崩してジャボデンダーが床に転がっている。 「ああ、ジャボテンダーさん、まだ寝るには早いです。まだ朝ですよ?」 抱き起こして、また椅子にもたせかける。 カウンターの上にあるホワイトメロンソーダは、無論少しも減っていない。 ティエリアは、ジャボテンダーの分まで飲んだ。 もう慣れてしまった毎日の日常の風景。 ティエリアはいつでもおもしろおかしい。そしてかわいい。 毅然とした表情で凛々しくある時間も多いが、おもしろおかしい時間の方が多分多い。 じっと、ティエリアはロックオンのトレイの上に置かれたバナナパイを見つめる。 じー。 じーー。 じーーー。 視線に耐え切れず、ロックオンも食べたかったが我慢する。 「ほら、やるよ」 「ありがとうございます」 おいしそうにそれを食べる。無論、自分の分はもう食べてしまった。 ロックオンはティエリアに甘い。 それはそれは砂糖菓子のように、とても甘い。 刹那とアレルヤは、いつものようにだるだるになっていた。 二人のラブ空間の空気にあてられてしまって。 力ない手でカップを持ち上げ、刹那はミルクを飲む。身長が欲しい。もっともっと背が高くなりたい。毎日かかさずミルクを朝晩飲んでいる。 今のところ、効果はぼちぼちといったところだ。 そんな短期間ですぐに身長は伸びるものでもない。体質による。 「ジャボテンダーさん。なんて麗しい。今日は一段と美人ですね」 ジャボテンダー抱き枕をぎゅっと握り締めるティエリア。 今日も、平和だ。 幸せな一日がはじまろうとしている。 NEXT |