「ティエリアはどこにいった!!」 カプセルから出たロックオンは、ミス・スメラギを問い詰めた。 「いったでしょう。もうあの子は、トレミーには置いて置けないわ。ガンダムマイスターじゃないのよ?」 「それでも仲間だろう!あんただって、仲間だろうが!」 「ティエリアはもうガンダムマイスターじゃないのよ」 「それでも仲間だ!俺は、ティエリアを守るって決めたんだ!」 ロックオンは、デュナメスを勝手に発進させ、ティエリアが収容されたという施設に向かった。 「なんだ・・・・・ここは・・・・」 コポポポポ・・・・・。 人工羊水の中に漂う、肉の塊。 人間になりそこねた標本。 「気味悪い・・・・」 CB研究員を銃で脅し、ティエリアの行方を問い詰める。 「ティエリアは・・・・破棄処分に・・・・」 「なんだと!」 ジャキっと、銃口がCB研究員のこめかみに当てられる。 「落ち着いて下さい」 「これが落ち着いてられるか!」 「ティエリアは、破棄処分になるのを防ぐために、今、治療を受けています。元に戻るみこみはありませんが・・・・この治療で戻らなかった場合、ティエリアは、コールドスリープにかけられ、イオリアの研究所のカプセルに戻されます」 「なんだと!」 つまりは、それが破棄処分。 捨てるのではないが、眠らせて放置する。 CBは、ティエリアを見捨てるというのか。 ガンダムマイスターの資格を失ったからと、一度目覚めさせたティエリアを都合だけでまた眠らせるというのか。 「そんなの、俺がゆるさねぇ!」 「・・・・・・・・・ティエリアのカプセルは、一番地下にあります。エレベーターで降りれます」 その言葉に、つきつけていた銃をおろす。 「待ってろ、ティエリア。今、迎えにいくからな」 長い長い廊下を歩く。 気味の悪い標本がいっぱい並んでいた。 CBも、イオリアと同じように人工生命体を開発している。すでに何人かは成功して生み出されている。その失敗作たちが、標本として並べられているのだ。 「CBのしてることも・・・・くそっ」 世界を正すためといいながら、CBも神の倫理に逆らう非人道的な行為をしているではないか。 そんな組織に目覚めさせられたティエリアは、組織の都合で廃棄処分されようとしている。 ロックオンは、ティエリアを助け出した後は、トレミーに戻らず、二人で逃げてどこかで一緒に暮らす心構えだった。廃棄処分されるなんて、あんまりだ。 ティエリアは、あんなにもCBのために努力して命をかけて尽くしてきたというのに。 やがて、一番地下にたどり着いた。 「うわ・・・・なんだ、これ・・・・」 ズラリと並ぶカプセル。 人工羊水に漂うのは、ティエリアと同じ容姿の少年たち。 それぞれ、カプセルにNOが記載されている。 「これが・・・・イオリアが作った・・・・ティエリアの兄弟たち・・・」 そっと、カプセルの一つに張り付く。 NO5と記載されたカプセルの中の少年が、突然目を開けた。 「うわっ」 金色に輝く瞳で、じっとロックオンを見ている。 ティエリアじゃない。 同じ顔をしていても分かる。 これは、明らかにティエリアじゃない。 CBは、ティエリアを廃棄処分した後は、きっとこの中の誰かを新しくティエリア・アーデとして目覚めさせるのだろう。 そんなの、ティエリアじゃない。 同じ名前をしていても、ティエリアであるわけがない。 金色の瞳でじっとロックオンを見つめていたティエリアタイプのバイオロイドは、すっと指を斜め右にさした。 そして、そのまま瞳を閉じて、何事かもなかったかのように、他の少年たちと同じようにまたカプセルの中に静かに漂っている。 指差した先に視線をやると、金色に輝くカプセルがあった。 特別製なのは、見てすぐに分かった。 「ティエリア!」 全裸でカプセルの中に漂っているのは、紛れもないロックオンが愛したティエリアだ。 無性の、天使。 金色の羊水の中で、胎児のように丸くなっている。 ロックオンは、カプセルに張り付いた。 「ティエリア!!」 すっと、石榴の瞳が開く。 ティエリアが目をあけて、カプセルごしにロックオンと手を合わせる。 ロックオンは、カプセルごしにティエリアとキスをした。ティエリアもキスをする。 届きそうで、届かないその距離。 ティエリアが、金色に瞳を輝かせた。 ザバァァァァア。 金色の人工羊水が流れ出る。 カプセルのハッチが開く。 「ティエリア!」 「・・・・・・・・・・・はじめまして」 「ティエリア?」 NEXT |