とてててて。 トレミーの廊下をティエリアが走る。 ベチャ。 あ、躓いた。 ロックオンは、そんなティエリアを苦笑しながら見ていた。 とてててて。 さっきから、ティエリアは忙しそうにトレミーの廊下を走っている。 「なぁ。ティエリア、何してるんだ?」 「はい?」 ピタリと、ティエリアがロックオンの横で止まる。 「見て分かりませんか。走っているんです」 「いや、それは分かるけどさ。なんで走ってんの?」 「ジャボテンダーさんの針万本攻撃に対抗するためです!」 「は?」 「今日も戦闘で、ジャボテンダーさんに負けました!」 ファイナルファンタジー7に出てくる、サボテンダーの大きい版のジャボテンダーに戦闘を挑んで、今日もまた全滅したティエリアであった。 ちなみに、パーティーメンバーはクラウド、ヴィンセント、シドだ。 「あのさ。戦闘で負けたのは分かるけど、なんでティエリアが走るわけ?」 「ジャボテンダーさんの針万本攻撃をかわすくらい、速くなりたいと思ったからです」 「あ、そう。でも、トレミーの廊下は走ると危ないぞ」 ティエリアの首根っこを掴んで、ズルズルロックオンは引きずっていく。 「あの、どこへ?」 引きずられながら、ティエリアが声を出す。 そのまま、ロックオンに腕を絡ませる。 「渡したいものがある」 「なんでしょうか」 ドキドキ。 ティエリアの胸は、乙女のようにときめいている。 ロックオンの部屋にくると、ベッドの上に、ちょこんとかわいいサボテンダーのぬいぐるいが置いてあった。 「サボテンダーさんだ!」 ティエリアが駆け寄る。 「俺の手作り」 「ありがとういございます!」 花のように、女神の化身のような、天使のような美しい美貌はかわいい笑顔を形作る。 いや、ティエリアは天使かもしれない。 純粋で無垢であどけなくて。 とても愛しい。 「サボテンダーさん、これからよろしくお願いします」 ぬいぐるみに向かって、ペコリと行儀正しくお辞儀をするティエリア。 なんだかなぁ。 かわいいんだけどなぁ。 ちょっとアホだよなぁ。 まぁかわいいからいいかぁ。 ロックオンは、責任感のない考え方で、自分のせいで変わっていくティエリアを見つめる。 「ティエリア。ジャボテンダーと俺とどっちがすき?」 「む」 真剣な表情で悩むティエリア。 おいおい、そこ悩むとこなのか? 「むむむむ・・・・・・ロックオンかな?」 最後に?つけられたよ、おい。 俺の存在あやうし。 ジャボテンダーに負けてられねぇ! アレルヤにドンマイ!って言われちまうよ、俺! 「ティエリア、愛してるぜ」 「僕も愛しています、ロックオン」 細い腰を引き寄せる。 「なぁ。お前、ウェスト何センチ?」 「54です」 「うげー。細すぎ!」 「そうですか?」 首を傾げるティエリア。 「もっと太れ」 「無理です」 まぁ、ティエリアは華奢で細いのは今にはじまったことでもない。 甘いものを時折大量に食べるが、それでもティエリアは太らない。 世の中の女性が羨ましがるであろう体質だ。 ロックオンは、ティエリアの額にキスをする。 そのまま、ベッドに押し倒される。 「サボテンダーさんが見ています・・・・」 頬を染めて恥らうティエリアに、気にせずキスの雨を降らす。 「サボテンダーだけに、さぼってんだー」 ・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・。 シーン。 「あの、ティエリア?」 「僕、何も聞いていません。帰りますね」 サボテンダーの縫いぐるみを大切そうに抱いて、ティエリアは乱れた衣服を整えると、ロックオンの部屋を飛び出していった。 やべ。 やべぇ。 俺、まじでやべぇ。 見事に滑った。 あー。 ロックオンは、心の底から、ギャグなんて言うんじゃなかったと後悔するのであった。 |