「ハロさん、ハロさん」 ティエリアが、ハロを追い掛け回す。 「アーレ、アーレ、オダイカンサマカンニン、オダイカンサマカンニン」 昔少年時代の刹那がハロに覚えさせた謎の言葉を合成音声であげながら、ハロがパタパタ飛ぶ。 そんなハロをティエリアが少女のように追い掛け回す。 「ハロさんハロさん。遊びましょ」 「オカサレル、オカサレル」 ハロは逃げ回る。 「ハロさんハロさん、逃げないで。僕と遊びましょ」 ピョンピョンはねるハロを、ついにティエリアが捕まえた。 「ハロさん捕獲完了!ねぇ、ハロさん。ケルヴィムばっかりに乗らないで、たまには僕のセラヴィに乗りませんか?セラヴィはいい子ですよ?」 「ハロ、ハロ、ケルヴィムスキ、ケルヴィムスキ」 「そう言わないで、ハロさん」 最近のティエリアは、昔のように子供っぽい部分を隠すことなく表に出すようになっていた。 「きっと、セラヴィのほうがかっこいい」 ハロを誘惑するティエリアに、ライルが苦笑する。 「ティエリア、頼むから俺の相棒をとりあげないでくれ」 「ライル」 ハロを、ティエリアから受け取って、ハロは嬉しそうにはねる。 「ロックオン、ロックオン」 「ティエリア、ハロをセラヴィに乗せたいのか?」 「はい、そうです」 にっこり。 花が満開のような笑顔を浮かべる。 まるで、桜のように幻想的だ。 ティエリアには、きっと舞い散る桜が似合うだろう。 つられて、ライルまで笑顔を浮かべてしまった。 「ライルはいいですね。いつもハロさんと一緒にいれる。羨ましいです」 「そんなにハロのことが気に入ったのか?」 「昔だから大好きです」 「そっか。でも、俺の相棒だからあげるわけにはいかないな」 「残念です」 貰うことはできないとわかっているので、気を落とすことはしない。 「でも、ハロと遊んでやってくれ。ほら、ハロ、ティエリアと遊んでやれ」 「リョウカイ、リョウカイ」 「ハロさん!」 ティエリアが目を輝かせる。 「ティエリア、ティエリア、イッショ、イッショ」 ハロが、ぱたぱた飛びながら、ティエリアのまわりをまわる。 それを嬉しそうにティエリアが追いかける。 「かわいいなぁ」 「違います!かわいいのではなく、かっこいいのです!」 ハロを胸に抱いて、ティエリアはしきりに自分はかっこいいのだと繰り返す。 確かに、いつものティエリアはかっこいいが、こういう幼さがにじむ場面はとてもかわいいと思う。 「ティエリア」 「刹那。刹那もハロさんと遊ぶ?」 「いや、俺はいい」 「ハロさん、僕と鬼ごっこしましょ」 「オニゴッコ、オニゴッコ」 「僕が鬼です。ハロさんは逃げてください」 「ハロ、ニゲル、ハロ、ニゲル」 ぴょんぴょんはねるハロを、ティエリアが追いかけていく。 「ティエリアかわいいな・・・・」 刹那は、ぽつりと漏らした。 「なぁ、刹那もそう思うよな?」 「ロックオン」 「最近のティエリアのかわいさ、尋常じゃないぜ。やべぇよ。こう、胸にきゅんときちまう」 「ティエリアは、昔もああだった。落ち着いてきた証拠だな」 「へぇ。昔からあんな子供っぽい部分あったんだ」 「ああ。ニールと一緒にいるときなんか、よくあんなかんじだった」 「兄さんには、まだかなわないなぁ」 小さくなっていくティエリアの後姿を二人で見つめる。 「守りたいな」 「守るさ。俺が、ティエリアを守る」 「刹那だけずるいぞ。俺もティエリアを守る」 「一緒に守ろう」 一緒に、ティエリアを。 生きて、生き残って、守って、見守って、傍についていてあげよう。 ハロを追いかけていたかと思うと、クルリとティエリアがこっちに戻ってきた。 「刹那も、ライルも大好きです。僕の家族です」 それぞれ、頬にキスをして、ティエリアはまたハロを追い掛け回す。 「家族だってさ」 「悪くはない」 「だな」 「ハロさん、ハロさん。捕まえますよ」 ピョンピョン飛び跳ねるハロを、ひたすら追い掛け回すティエリアであった。 |