ロリコン、リモコン、アイコン







じー。
じーー。

最近、ティエリアの視線が痛い。
なんというのか、隠れてじっと見つめてくる。
ぐさぐさ突き刺さる視線。
「俺睨まれてる?なんだ…?あれのことか…?いや、この間の…」

ロックオンは、心にいろいろ思い浮かぶことがありすぎて、どきまぎしている。
しまいには、顔を蒼白にさせながら、トレミーの廊下を歩く。

ある程度の距離を保って、ティエリアが尾行する。
パっと後ろを振り返ると、ティエリアは口笛をふいて床の「の」の字を書いている。怪しいことこの上ない。というか、もっと尾行するなら上手くすればいいのに。

スタスタと、速度をはやめると、ちょこちょことティエリアは歩幅が違うので小走りになる。
そのまま、角を曲がるロックオン。
見失わないように、急いで角を曲がったティエリアを、ロックオンが捕まえた。
「あ」

しまったという表情を浮かべる。
「なんだ、俺、お前さんに何か悪いことしたか?」
ティエリアは、瞳を伏せる。

「どうした?」
「原稿が待っているので、僕はこれで」
逃げようとするティエリア。
「待てよ」
手を掴んで、引き寄せる。

「だって、あなたが」
「俺がどうした?」
「最近フェルトと仲良くしているから・・・・・僕、捨てられてしまうのかと」

かー。
なんてかわいいんだ、ティエリアは。
いわゆる、嫉妬だ。
ティエリアは、フェルトに嫉妬しているのだ。
でも、心が優しいのでフェルトを責めることなんて決してしない。
ロックオンを責めることもしない。
ただ、心配で様子を見ていただけなのだ。

「安心しろよ。フェルトのことは確かに好きだけど、俺が愛しているのはティエリアだけだから」
「本当に?」
「ああ。ティエリアのほうが好きだよ」
「では、証拠をください」

目を瞑って、背伸びするティエリア。
仕方ないなぁと、ロックオンはティエリアの顎に手をかけて、触れるだけのキスをする。

「・・・・・・・・・・・・・・・・ロリコン」
その場面を目撃していたフェルトが、そう一言呟いて、去っていった。
フェルトに、ティエリアがかわいすぎてどうればいいのか、相談していたのだ。

「は、ははははは・・・・・」
乾いた笑い声を、ロックオンは出す。
フェルトに、「あなたはロリコンってみんなに思われてるのよ?」といわれ、ショックを受けたのは先日のことだ。ティエリアがあまりにも幼く子供っぽく見えるところが多い上に、17歳という外見からすれば、24歳であるロックオンは間違いなくロリコンと指摘されても仕方ないだろう。

おまけに、ティエリアは無性でその体は幼い少女のようなラインを描いている。
「ロックオン、ロリコンなんですね」
どこから取り出したメモに、ロックオンはロリコンと書き込むティエリア。
「ティエリア、誤解だあああ!」
「ロリコンでもリモコンでもアイコンでも、あなたを愛しています」
最後につけたされた言葉ははてしなく謎だったが、おもしろおかしいティエリアは愛しい。
思わず、ふきだす。
「リコモン、アイコンって、お前なぁ」
頭を撫でる。

「僕は、何か変なことを言いましたか?」
「いいや。ティエリアはいつも通りだと思って」
いつものようにおもしろおかしくかわいい。

また、キスをする。
その場面を、今度はミス・スメラギに見られた。

「ロリコンね、本当に。どうしようもないわ・・・」
呆れたように呟いて去っていく。
「はははは・・・・」
ロックオンは、ティエリアを抱きしめながら、天井を見上げた。

ええい、ロリコンで何が悪い!
もう、こうなったら開き直ってやろう。
確かに、ティエリアにゴシックロリーターな服を着させたりしているロックオンである。

「僕は、どんなあなたでも愛しています」
「俺もだよ、ティエリア」

「廊下でいちゃつくな。通行の邪魔だ」
刹那が、そんな二人に水をかけるような冷たい言葉をだす。
気づけば、いろんなギャラリーが二人を囲んでいた。

「熱いね、ヒューヒュー」
「ロリコン」
「ロリコーン」
「ティエリアを不幸にするなよ」

ロックオン、24歳、白人、ガンダムマイスター、本名ニール・ディランディ。
こうして、ロックオンの評判は変な方に曲がっていく。

でも、ティエリアを愛してしまったのだから、しかない。
仕方ないから、ロックオンも、笑うしかなかったのであった。