ティエリアは、トレミーを降りて地上にきていた。ロックオンとは一緒だ。今は、互いに別行動をしている。そのロックオンに、とあるデパートにあるアクセリーショップに、頼んだ品があるから代わりにとりにいってくれと頼まれたのだ。それがミッションだといわれた。
そのまま、素直にアクセサリーショップに寄り、名前を告げると、店員がにこりと愛想笑いをして、店の中に案内してくれた。
奥の部屋に通され、そのまま紅茶を出される。
ティエリアは戸惑った。
ロックオンは、一体このアクセサリーショップで何をしたというのだろうか。
「こちら、ニール・ディランディ様からです」
奥の部屋から戻ってきた店員が、小さいけれど丁寧に包装された箱を大事そうに取り出し、それをティエリアが座ったテーブルの前においた。
とりあえず、せっかく入れてもらったものなので、紅茶を一口飲む。
「中身をごらんになりますか?」
「はい」
店員は、包装された箱を空ける。
中には、かわいいシルバーの細いブレスレットが入っていた。
「は?どういうことだ?」
ティエリアが紅茶を飲みながら、ブレスレットを見る。
「はい、こちら、ティエリア・アーデ様にお渡しするように、と言伝を承っております。…熱心に選んでらっしゃいましたよ。かわいい恋人に贈るのだと」
それだけでは、こんなに特別扱いは受けないだろう。
「あと、こちらの品物も」
最高級のスタールビーがいくつもあしらわれた、可憐なデザインのネックレスがもう一つの箱から出てきた。
なんとも高そうな品物だ。
店員の話では、このネックレスは店でも自慢の品だそうだ。
そんなものを買ってくれた相手は、今までにもいくつもの髪飾りや指輪、ネックレス、ブレスレット、ピアス、チョーカーなどを買ってくれたお得意様だ。ようは、ここはロックオンが、いつもティエリアにプレゼントする貴金属を買っているお気に入りのブランドのアクセサリーショップなのだ。
その品物を渡す相手も、大切なお客様だ。
粗相があって、上客を逃がすわけにはいかない。
だから、奥の部屋に通されて特別な待遇を受けていた。
ティエリアは、顔がまるで茹蛸のように真っ赤になるのを感じていた。
恋人同士であるが、こうやって見ず知らずの他人から恋人といわれると、なぜかとても新鮮で恥ずかしい。
「いまのごたごたが片付いたら、ふたりで落ち着こうと思っていると、あなた様のことをうれしそうにお話されて…毎回、いつもこの店を御贔屓にされているのです・・・ああ、今髪にされているそのプラチナと花のデザインの翡翠の髪飾りも私どもの店で買っていただいたものです。身につけてくださってありがとうございます。とてもお似合いですよ」
にこにこと、店員は微笑む。
ティエリアは、ロックオンがくれたプラチナに、極上の翡翠を花のデザインではめた髪飾りをしていた。それを、そっと手で撫でる。
「そ…そうですか…」
「ご結婚の日取りはもうお決まりなんですか?」
にこやかに、店員は聞いてくる。
「けっ…け…結婚!?」
ロックオンは、一体なにをこの店員に告げたのだろうか?
結婚だなんて。
「うふふ…、そんなにはずかしそうになさって、ほんとうにニール様のおっしゃっていたとおり、かわいらしい方なんですね。背も高いし、まるでモデルのようにスラリとされていて、とても美人ですし・・・・」
ティエリアが着ている服は、ロックオンが買い与えてくれたものだ。
肩と腕の部分には花柄のカットが入っていて、そこから白い肌が露出している。
鎖骨も見えるし、色気というものさえ感じさせる。ただのユニセックスでありながら、ティエリアが着るとまるで天使の荘厳な衣装のように可憐なものに見えてしまうから不思議だ。
「すみません、僕はこのへんで・・・」
「はい、どうぞ、おしあわせに」
にこりと店員は微笑んだ。
綺麗に梱包されて、紙袋にいれられた二つの品物を受け取る。
そのまま、急ぎ足で外に出ると、ロックオンの携帯に連絡を入れた。
恥ずかしさで、顔から今にも火を噴きそうだ。
「ロックオン・ストラトス!なんですかこれは!?“お前にしか頼めないミッション”って、こんなことをさせるためにわざわざ地上に!?」
声を荒げてしまう。
「って言いながら、結構うれしそうだったけど?」
すぐ近くから声がした。携帯からではない。
「!?」
周りをきょろきょろすると、、後ろでひらひら手を振りながら、携帯電話を片手に立っているロックオンに気づいて、ティエリアは頬を薔薇色に染めた。
「ずっと付いて来てたんですか?…悪趣味だ!」
思わず、詰る。
「まぁまぁ、そう怒りなさんな」
道端で抱きしめられ、キスされる。
ドサリと、ティエリアの手から紙袋が落ちる。
見ると、昼休憩なのか、さっきの店員が道路を歩いてこちらを見ていた。
にこりと、とても人当たりのよさそうな笑顔を浮かべて、店員は丁寧にお辞儀した。
「とてもお似合いですよ、お二人とも。幸せになってくださいね」
聞こえてきた声に、ティエリアは恥ずかしさのあまり顔を手で覆ってしまった。
「お、いつもありがとさん。また、今度新作ができあがったら、カタログ送ってくれ。そうだな、今度はブローチが欲しいな」
「かしこまりました。当店と系列の店のブローチのカタログを、まとめてお送りしますね。住所はいつも通りの場所でよろしいでしょうか?」
「ああ。頼むな」
「かしこまりました。毎度、当店を御贔屓くださり、まことにありがとうございます。これからも、当店と系列のお店をよろしくお願いいたします」
「ああ。あんたのとこの店はすごいセンスがいいから。また買うよ」
「ありがとうございます」
店員は、ただの店員ではなかった。
店の支配人だったのだ。
数日後には、ティエリアの首にはスタールビーのネックレスが、そして手首には銀のブレスレットが光っていた。
頭には、18金でオパールがあしらわれた、前に、多分同じ店で買ったであろう髪飾り。数週間前に、ロックオンが贈ってくれたものだ。
「つけてくれてんだな」
にまにまと、ロックオンがにやける。
「べ、別に、物に罪は無いですから」
ツーン。
あさっての方向を向くが、今着ている服はゴシックロリーターがはいった服で、これもロックオンが買い与えてくれたものだ。首には、ネックレスのほかに、お気に入りのガーネットのついた黒のチョーカーが光っていた。
知らないうちに、どんどんティエリアの部屋のアクセサリーを入れる引き出しには、値段にして数十万するものから数千円のものまで、いろんな種類の貴金属からガラスでできたりしたアクセサリーがあふれ、ついにはその引き出しだけではなおせなくなって、下のあいていた引きだしにもなおすようになってしまった。
王留美の口座があるからといって、少し買いすぎなのではないだろうか。
「はいはい。それにしてもかわいいな、すげー似合ってる。」
「僕に似合う似合わないじゃなくて、このアクセサリーさんのデザインがもともと良いだけです」
ツーン。
北極の氷のようなツンデレラぶり。
「そうか?でも、ま、お前さんに気に入ってもらえたならよかった。俺が選ぶデザインは、どれもティエリアに似合うものをイメージして一応買ってるからな」
「ありがとうございます・・・・いつもいつも・・・なんだか、悪い気がします」
「ど、どうした?」
かしこまってお礼をいうティエリアは、なんとも愛らしい。
「何がですか?」
きょとんと、首を傾げる。
そっと、銀のブレスレットをした細い手が、お気に入りのジャボテンダー抱き枕に伸びる。
ジャボテンダーの頭には、ティエリアのお気に入りである、プラチナに、極上の翡翠を花型にはめこんだ髪飾りが光っている。
「ジャボテンダーさん、なんて美しい・・・・ああ、氷の薔薇のように美しい。なんてつぶらな瞳・・・・まるで、世界中の宝石を散りばめたようだ・・・・なんて美しい、なんて可憐で愛しい・・・ジャボテンダーさん」
うっとり。
「今度は、結婚指輪を一緒に買いに行こうか」
途端に、耳まで真っ赤になるティエリア。
「け、結婚指輪だなんて・・・・」
「ペアリングはもうしてるし。婚約指輪も買ったし・・・あとは、結婚指輪だろ、やっぱ」
「!!この前の指輪、婚約指輪なんですか!?」
「そうだぜ?」
「ジャ、ジャボテンダーさんが・・・・・ジャボテンダーさんが、見ています」
ベッドに押し倒された。
ギシリと、二人分の体重を受けてスプリングが軋む音をたてる。
ティエリアの左耳には、とても高価で有名なアレキサンドライトのピアスがされてあった。
ロックオンの左耳にも、同じアレキサンドライトのピアスが光っている。
耳に穴をあけるなんて最初は恐かったけれど、お揃いだといわれてそのままピアスの穴をあけてしまった。つけっぱなしではなく、その日によってつけるピアスも違う。
人形のように、飾り立てられていくティエリア。
でも、ロックオンはとても心がこもっている。
愛という感情が、こもっているからこそ、ロックオンの与えてくれたものを身につける。
「ジャボテンダーさんが・・・・・・つぶらな瞳で僕たちの秘め事を・・・・あっ」
耳を噛まれた。
ピアスがカチリと、歯にあたって硬質な音をたてる。
「あっ、だめっ」
半ズボンの上から、太ももをなで上げられ、足を膝で割られる。
「だめ・・・・・・」
上の服を脱がされて、タンクトップ姿になる。
黒のベストで胸をしめつけるような真似は、ロックオンが嫌がるのでもう止めた。
そのまま、首筋を吸われる。
「だめです・・・・ジャボテンダーさんが・・・・んっ」
深く唇を重ねられ、舌を絡めとられる。
「ふ・・・・あっ」
全身が溶けていきそうな感触。
ロックオンの手によって、素肌が露にされていく。
ティエリアは、上気した頬で、ロックオンを見つめる。
「愛してる、ティエリア」
「僕も、愛しています」
互いのペアリングに口付ける。
長い睫を伏せる。
「僕には・・・お返しできるものがありません。いろいろもらっても、僕には・・・・」
「そんなのいらねぇって。ティエリアが傍にいてくれるだけでいい」
「ロックオン・・・・・」
ティエリアは、ジャボテンダー抱き枕で、ロックオンの頭を殴った。
「あべし!?」
変な声をあげるロックオン。
「ティエリア〜?」
金色に変わってしまった瞳で、ジャボテンダー抱き枕を抱きしめながら、小さくポツリと呟く。
「・・・・・て、下さい」
「え?」
「・・・・しまって下さい」
「もちょっと大きな声で」
ブンと、ティエリアがジャボテンダーのジャボ子さんを振り上げて、何度もロックオンの頭をべしべし殴る。
「びでぶ!」
まるで北斗の拳の敵キャラのような謎な悲鳴をあげるロックオンがおかしい。
だが、ティエリアはいたって真面目だ。
すうっと、息を吸う。
「僕を食べてしまって下さい!!」
かぁぁぁぁぁ!!!
言った。
言ってしまった。
ティエリアは、いって逃げ出したい心境にかられた。
恥ずかしい。
穴があったら入りたいとは、こんな気持ちをさすのだろうか。
ロックオンが、エメラルドの瞳で、じっと金色に変わったティエリアの瞳を見つめる。
「・・・・・っくそ、そんなこといってると、手加減できねぇぞ?」
「あなたになら・・・・・全てを、捧げます」
ジャボテンダー抱き枕が見つめていた。
ロックオンに食べられて、天使の翼を溶かしていくティエリアを。
愛って、なんて素敵。
一つに溶け合った体。
愛しているから、こうして一つになりたくなる。
愛しているから。
ジャボテンダーが、二人の秘め事を黒いボタンの瞳で見つめていた。
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ぜはーぜはー。
15禁かこれ(汗)
1月30日のタチバナ様の妄想より・・・・うちのロクティエは、ティエにとにかく似合うものを買い与えまくるロックオンに、それを平気でつけるティエリアなので、恥じらいというものが今ひとつかけていて、ちょっと小説が妄想と変わってしまいました(><)
さ、最後の秘め事は、妄想をいただいたサービスで。鼻血は冬葉はたれてませんよ!
かわりに、脳みその中身がバターのように溶けています(おい)