僕は強くなりたい。 誰よりも強くなりたい。 でも、僕はそんなに強くない。 こんなにも弱い。守られてばかりだ。 僕は強くなりたい。 誰よりも強くなりたい。 「僕は強くなりたい。誰よりも強くなりたい」 願うように、流星に向かって祈る。 堕ちて行く星の光は、宇宙の彼方に消えてしまった。広大な宇宙。大海原よりも大きな大きな、無限に広がる宇宙。 自分は、なんてちっぽけなんだろう。 そっと、窓ガラスに手をあてる。 窓ガラスに映る、何年も変わることのない容姿。 人ではない証のように。 「僕は、もう、失うものが無いんだから、気が楽で良いじゃないか―――――――っ・・・・・・」 言葉は、嗚咽に変わる。 瞬く星を祈るように見つめていた瞳に、涙が溢れ、頬を伝っていく。 「ロック・・・・オン・・・・・」 こんな時、隣にロックオンがいてくれたら、きっと胸をかしてくれただろう。ぎゅっと抱きしめて、涙を優しい手で拭ってくれて、それからそれから・・・・。 「愛していると・・・・あなたに、伝えたかった」 ラブファントム。僕は愛の道化師。 愛していると・・・誰よりも、愛しているとロックオンに伝えたかった。 どうして伝えなかったのだろうか。 こんなにもこんなにもこんなにも、狂ってしまうくらいにロックオンを今でも愛しているのに。 どうして、あの人が生きているときに、ちゃんと「愛している」って伝えなかったのだろうか。 「愛して・・・・います・・・・愛して・・・・・愛・・・・・っ、ふ、・・・・・・っ、っ・・・・」 言葉が涙のせいで途切れ途切れになる。 言葉だけでも、せめて伝わったらいいのにね。 言葉だけでも。想いは伝わらなくても。せめて、言葉だけでも伝わったら、どんなに幸せだろうか。 きっと、あの人は笑顔で喜んでくれる。 笑顔で。 「・・・・・・・・・」 ペタリ。 背後から、窓に手がつけられる。 振り返るまでもない。 こんな時、決まってティエリアの前に現れるのは、一人しかいない。 「一人で泣くな。一人で背負い込むな」 後ろから、抱きしめられる。 「刹那、君はどうして僕が泣くと、すぐに分かるんだ?」 「魂の双子だから」 「魂か・・・・魂が、目に見えたらいいのに」 「目に見えたら、こんなに哀しい思いはしないだろうな、ティエリアは。でも、ロックオンの魂は絶対にティエリアの中に在る」 「そうだな・・・・」 キラリと、また星が堕ちる。 流星。 「僕は、強くなりたい。誰よりも、強く・・・・」 「ティエリア。お前は、俺が守る。だから、今は泣け」 ぎゅっと、背後から抱きしめられる。強く、強く。 「・・・・・・・・・刹那」 そのまま、泣いた。 背後から刹那に抱きしめられたまま。 「好きだから。守るから。安心して、ロックオンを愛し続けろ。ロックオンを想って好きなだけ泣いていい。俺が、傍でずっとついててやる。一人には、しないから」 「君はどうして・・・・・僕がロックオンを愛しているのに・・・奪おうとしないんだ?」 「なぜ?」 「それはこちらの台詞だ」 「ロックオンからティエリアを奪うことなんて、できるはずがないだろう。ティエリアは、ロックオンを誰よりも愛している。それは俺がよく知っている。だから、奪わない。全てを包み込む」 「君は、大人だな」 「ティエリアを守るために、成長したんだ」 「でも、君にはマリナ姫が・・・・・」 「今は、言うな」 「君も、苦しいんだな」 僕を選んでしまったりしなければ、刹那も苦しい思いなんてせずに、マリナ姫を純粋に愛しただろうに。 僕は、いつでも、誰かを苦しめる。 「刹那。僕は、君と歩いていけるかな?」 「歩いていける。俺が無理やりにでも連れて行く」 「君は、包容力があるようで・・・時折、傲慢だ」 「そうでもしなければ、ティエリアはすぐに俺の元から逃げてしまう。籠の中のカナリアが羽ばたくように」 「ラブファントム」 「愛の道化師か?」 「そう。僕は、道化師のようにロックオンに愛を囁き続ける」 「それでいいだろう。間違っていると誰もが否定しても、俺だけはお前を認める。その想いを」 刹那は、ティエリアの肩に顔を埋めた。 「甘い花の香りがする・・・・」 鼻腔をくすぐる、甘いバニラのような薔薇のような花の匂い。 ティエリアからは、いつも甘い花の香りがする。 香水も何もつけていないのに。シャンプーでもボディーソープの匂いでもない。自然と、そんな香りがするように作られているのだ、この無性の天使は。 「ティエリア。一人で泣くな。一人で泣けば、ロックオンもきっと哀しんでいる」 「そうだね」 「一緒にいるから。泣くな、とは言わない。好きなだけ泣けと俺は言う。だけど、一人ではなくな。俺の傍で泣け」 「刹那・・・・・・」 魂より深く繋がっている二人。 愛という言葉で表すには、なんて複雑なんだろうか。 螺旋を描く。 その感情は、螺旋を描き続けている。 「僕は、望む。君の隣にあれることを」 刹那の髪を撫でる。 「ロックオンを愛したままでいい。無理に忘れることも変わることもしなくていい。まっすぐだったから、お前たちは。俺は、それがまぶしかった。羨ましかった。だけど、ティエリアが一人になったからといって、俺だけを見つめろと強制はしない」 「君は・・・・大人すぎるよ、刹那。僕は、君が羨ましい。君のように強くなりたい」 星が堕ちる。 今の二人を、天国のロックオンが見たらどう思うだろうか。 多分、ロックオンなら、ティエリアの幸せだけを考えて、寂しく笑うだろう。 残していってすまない、と。 そして、刹那にティエリアを頼むな、と囁くだろう。 もう、この世界のどこを探しても、ロックオンはいないのだ。 いないのだ。 いない。 もう、どこにも。 ------------------------- アンケート2位の不動を誇る刹ティエ! 刹那×ティエリアってすごいマイナーそうじゃないですか。でも、何気に刹那×ティエリアのCPからのアクセスもそれなりにある・・・・。マイナーそうで、何気にライティエ並みに人気なのか。 ちなみに、うちの刹ティエは刹マリと肩を並べるくらいに争っています(アンケート結果より) うちの刹ティエは・・・・なんていうか・・・他のサイトの刹ティエと少し違うのかもしれません。ロックオンを愛したままのティエリアを愛する、という形が。 刹那は本当に大人ですね、うちのサイトのシリアスだと。 1期はおもいっきり子供に書いてますが。 「ラブファントム」と「ユダ」の間くらいに入るお話。 1月28日の、タチバナ様のサイトの、宇宙を窓から見るティエリアのイラストより。 |