雨はティアドロップ。 天使が哀しみで流した涙。 神様が人を愛した時に流した涙。 そう考えると、ただの雨も少しロマンチックになるだろう? それはロックオンが教えてくれた言葉。 確かに、そう考えるとただの雨も浪漫的だ。 地上に降りたまま、ティエリアとロックオンは平和な時間を過ごす。 暇な時間ができると、度々、ロックオンのアイルランドにある生家に立ち寄った。 買いたい雑誌がどうしてもあって、ロックオンを残して一人でアイルランドの町を彷徨い、小さな本屋でやっと目的の雑誌を見つけてロックオンの生家に帰る途中だった。 鉛色に曇っていた雲が、とうとう泣き出した。 雨はティアドロップ。 天使が哀しみで流した涙。 神様が人を愛した時に流した涙。 ロックオンのお陰で、雨は嫌いではなくなった。だが、傘がない。 「雨さんのバカ・・・・・」 最初はしとしとと降っていたので、家まではなんとかなると思っていた。 途中でザーザーとどしゃぶりになった。 歩き始めてしまった。 もう、服も髪もびしょぬれだ。ここまでくると、どこかの軒下で雨宿りしてもそんなに意味はない。変わらないだろう。ここまで濡れてしまえは、後はもうどうにでもなれという気分だ。 雑誌は本屋で郵送してくれるように頼んだので、濡れてぐちゃぐちゃになって読めなくなるということはないだろう。 眼鏡に雨がふって、視界が歪む。 面倒なので、眼鏡を外した。 裸眼は光に弱いため、少し目がなれるまで時間がかかった。 「雨は天使の涙・・・・雨は神様が人を愛した証の涙・・・エデンからアダムとイヴを追放したことを後悔して、神様が天使たちと一緒に泣いている」 どしゃぶりから少し雨がゆるくなる。 雨を全身で浴びながら、ティエリアは歩く。 どんなに泣いても、追放されたアダムとイヴがエデンに帰ってくることはない。 「雨は・・・・やっぱり、嫌いだ」 頬にはりついた髪をかきあげる。 普段は前髪はおろしているが、濡れているので一緒に後ろに流れた。 「うわ、びしょぬれじゃねぇか。風邪ひくといけねぇ、熱いシャワー浴びろ」 帰ってきたティエリアを出迎えたロックオンは、ティエリアの姿に驚く。 「雨は、やっぱり嫌いです」 「こんだけ降られるとなぁ」 バスタオルと受け取りながら、ティエリアが水分を吸って重くなった服のまま家にあがる。 ポタポタと雫が床に滴る。 「あの・・・・なんつーのか、はやくシャワー浴びてきてくんね?」 どうしてだろう。 雨に濡れているだけなのに。 白い薄めのシャツが体に張り付き、幼いティエリアの体のラインをくっきりと浮かび上がらせる。 鎖骨まで分かる。 髪を拭いていたティエリアは、少し意地悪そうに笑う。 「ロックオンのえっち」 耳元で囁く。 頬に濡れた髪がはりついている。 体のラインをくっきりと浮かび上がらせる白い肢体は、幼いラインを描きならがも色気さえ感じさせる。 「あーもう。ちゃんと拭けよ」 新しいバスタオルをとりだして、少し頬を染めたロックオンが、ティエリアの服を脱がしていく。 「えっち」 抵抗もなく、脱がされていく。 その幼い体をバスタオルで包み、ロックオンは抱き上げてバスルームまでくると、熱めの湯を浴びせる。 「頼むからさー。誘ってんの?」 「違います」 湯を浴びながら、ロックオンを追い出す。 「ティアドロップが、たくさん降ってきたせいです」 「雨のせいか」 「衣服が身にまとわりついて気持ち悪かったんです。でも自分だけじゃなかなか脱げなくて。脱がしてくれてありがとうございました」 シャワールームのドアごしに、ティエリアは真っ白な裸体をおしげもなく晒して、シャワーを浴びる。 「はぁ。ほんとに、無意識なんだから困るぜ」 ロックオンは一人、ため息を出していた。 |