私はソーマ







「マリー」
優しく揺り起こされて、マリーことソーマ・ピーリスは目を開けた。

「私、は・・・・・」
「マリー、大丈夫?」
心配そうに見てくる金と銀のオッドアイを、険しい目つきで睨みつける。

マリーという人格が消えたわけではない。
ただ、大佐というとてもとても大切な人を目の前で失ったショックに、マリーが傷つきすぎて、その反動でソーマという眠っていた人格が呼び覚まされ、今は代わりにマリーが眠っている。
記憶を失ったわけではない。
どれほど、もう一人の自分であるマリーがこの穏やかな目の前の青年を愛しているのかも知っている。

だが、今のソーマはマリーではない。
青年に愛を囁く恋人のマリーではなく、ソーマ・ピーリスという名の一人の超兵なのだ。

「何度言えば分かる。私のことはマリーと呼ぶな。ソーマ・ピーリスだ」
きっぱりとした断言に、青年がみるみる落ち込むのが分かった。
「マリー・・・・・君は・・・・・」
「消えたわけでない。だが、大佐を失ったショックで今は眠っている」
「どうすれば、マリーに会えるのかな?」
「今はその時ではない。戦いが・・・・アロウズがいつ襲ってくるかも分からない」
「それはそうだけど」
「お前も超兵なら、もっと背筋を伸ばしてしゃきんとしろ!マリーは、いずれ目覚める」

「ソーマ・・・・」
「そうだ。私はソーマだ」
マリーは、起き上がるとアレルヤを突き飛ばした。
「マリーとお前は恋人同士であったのかもしれないが、私からしてみれば赤の他人だ。着替える。部屋を出て行け」
「分かったよ」
大人しく従うアレルヤ。

「待て」
その手を、離れていく途中で引き寄せる。
そのまま、噛み付くようにアレルヤにキスをした。

「忘れるな。人格は違うが、お前を愛しているという記憶が消えたわけではない。・・・・・この想いは、真実だ。そう、私の中のマリーが言っている」
「マリー、ソーマ」
抱き寄せられた。
そのまま、ソーマはアレルヤの胸に顔を埋めた。

「・・・・・・・・・・・・・・・大佐。うわあああああああああああ」
ソーマは泣いた。
そんなソーマを、アレルヤが優しく包み込み、いつまでも抱きしめていた。