パニックパッニクV







「ということで、王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ」
アレルヤは、自分のベッドに入った美少女姿のティエリアに物語を語って聞かせた。
かわいいものであふれたアレルヤの部屋は、ティエリアの心をわしづかみにした。
ジャボテンダー抱き枕を抱きしめながら、眠そうにアレルヤのお話を聞くティエリア。
ああもう、ほんとに、いつものティエリアもおもしろおかしくかわいいのに、10歳の女の子な姿になってしまった美少女ティエリアは壊滅的なかわいさだ。

そのまま、物語を読み終えて、アレルヤがベッドの中に入ると擦り寄ってくる。
「今日は・・・・ラッセに追いかけられた・・・きっと、隠れロリコンだ・・・ミス・スメラギに着せ替え人形のようにされた・・・ロックオンてば、いっぱい服を買ってきたみたいで・・・どれもゴスロリの服ばっか・・・」
「それは大変だったね」
ゴシックロリータの入ったパジャマに着替えたティエリアは、もうちゃんと歯も磨いた。
「なぜか、皆がいうのだ。髪を切ってはいけないと・・・こんなにも伸びてしまって、とてもジャマだ」
うっとうしそうに、足の位置まで伸びた髪をつまみ上げるティエリア。
サラサラした長い髪は、ここまでくると天然記念物だ。
それを切るだなんて、アレルヤも無論反対した。

「アレルヤ・ハプティジュム」
噛んだ。また噛んだ。今度は名前を。
「クスクス・・・」
「何が可笑しい?」
「いやぁ、本当にかわいいなと思って」
「確かに、この容姿はかわいくできている・・・・人形のようだ」
「人形のようなのに、ちゃんと生きて動くから余計かわいいんだよ」
「そういうものだろうか?」
「夜更かしはいけないよ。そろそろ寝ようか」

「ふぁ・・・・もう10時か・・・アレルヤは健康的だな。僕が寝る時間はいつも1時だ。起きるのは8時か12時」
ロックオンがミッションなどでいないときは、ティエリアは低血圧で本当に12時まで惰眠を貪る。寝起きの悪いティエリアを、他のアレルヤも刹那も起こさない。
慣れたロックオンにだけできる技であった。
下手に起こせば、急所に鋭い蹴りが飛んでくる。そのせいで破壊された目覚ましの数は10を余裕でこえて20をこえているかもしれない。

アレルヤの逞しい腕に守られるように、ティエリアは早めに眠りについた。
そして、1時頃に目覚めた。
「あー・・・・だめだ、ロックオンが気になって目が覚めてしまった」
アレルヤはスースーと深い眠りについている。
起こさないように細心の注意を払って、大きなジャボテンダー抱き枕をズルズル引きずりながら、部屋を出るティエリア。そんなティエリアを目を開けたアレルヤが見ていた。
「やっぱり、僕じゃだめかぁ。恋人は、ロックオンだもんね」
少し寂しそうに笑うアレルヤ。そのまま、また眠りについた。

うんせ、うんせ。
ジャボテンダー抱き枕を運びながら、10歳の美少女ティエリアは頑張る。
ロックオンの部屋の前まできたが、ロックがされてあった。
暗号は覚えている。だが、普段ならなんなく押せるキーの位置が高い。
「ごめんなさい、ジャボテンダーさん(><)」
ジャボテンダー抱き枕を台代わりによじ登り、背伸びをして暗号を入力すると、扉はシュンという無機質な音と一緒に開いた。

「あれ、ティエリア?」
ロックオンは起きていた。
「どうしたんだ?」
コーヒーを飲みながら、データを纏めていたロックオンが、ジャボテンダー抱き枕を引きずるティエリアを抱き上げ、膝に乗せる。
「これは・・・・僕がするはずだった、データ解析ではありませんか」
パソコンの画面を見て、驚くティエリア。

「ああ。俺も、一応は能力は持ってるから。刹那も、アレルヤでも・・・時間はかかるが、できるように訓練されているからな。いつもはIQ180のティエリアのデータ解析のできがいいから、ミス・スメラギはティエリアに頼むんだ。でも、流石に10歳の子供に仕事はさせることはできないってさ。代わりに俺がしてるんだ」
「すみません、僕がこんな姿なばかりに」
ロックオンは、ティエリアの頬にキスをする。
「ティエリアの子供姿が見られて幸せだ」
そのまま、ベッドに押し倒されて、長い紫紺の髪がベッドの上で泳ぐ。
額にキスをされる。

かぁぁぁ。
耳まで真っ赤になった。

「僕は、そんなつもりでこんな美少女姿になったのでは・・・・ロックオンのバカ」
上目遣いで涙をためながら、桜色の唇でジャボテンダー抱き枕を抱きしめながらバカと言われて、ロックオンは鼻血は出そうになった。
頼むから、その姿でそういう真似はやめてくれ。
いつものティエリアでさえかわいいのに、今は破壊的なかわいさだ。

「小さくなったお姫様。王子様が、ちゃんと守るから」

唇にキスされた。そのときである。
ボフンと音をたてて、ティエリアの姿が元に戻ったのだ。
衣服もご丁寧に、大きくなっている。

「あれ?・・・・もうちょっと美少女姿楽しみたかったのにな。残念。王子様のキスで元通りになるなんて、まるで童話みたいだな」
ロックオンはそう言うが、ティエリアは挑発的だった。
起き上がる。
「いいのですか?あの姿では・・・・僕を食べることは永遠にできませんよ?」
ティエリアは、髪が美少女姿の頃のままの長さが残っており、腰の位置まであった。ロックオンからコーヒーもパソコンも奪って、テーブルの上におく。そのまま、押し倒した。
長いサラサラの髪が、ロックオンの頬にかかる。
「ティエリア」
「ロリコンでも構いません・・・愛して、います」
二人はその晩、体を重ねた。ティエリアは女の子から無性に戻っていた。

「んでーなに?やりすぎちゃった・・・と。子供姿でお預けくらってたからか、もしくは髪が長いってのに萌えたのか、はたまた王子様のキスで元に戻ったのに喜んだのか・・・とりかく、やりすぎちゃったと」
ドクター・モレノが、やりすぎて出血がいつもより酷かったティエリアをカプセルに入れた。カプセルの中に入ったティエリアは1日安静にしただけですぐに出ることができたが、その間ティエリアとロックオンは、お互いを見つめ、カプセルごしに何度もキスをした。
「お前ら二人、医者をなめとんの?」
ドクター・モレノの額には青筋が浮かんでいた。
「やりすぎて治療カプセルいきなんて、聞いたことないわ」
「では、僕は名誉ある一号ということか」
カプセルから出たティエリアは、なぜか喜んでいた。ドクター・モレノのお説教は、全てロックオンにいった。ティエリアにお説教しても無駄だ。ロックオンを愛するがあまり、どんな行為でも許してしまうだろう。
「作りかけの解毒剤・・・・徒労に終わったなぁ」
「まぁ、元に戻れたのだからいい」
ティエリアの髪は、腰の位置の長いままだ。ロックオンに綺麗に結われて、切る機会を逃してしまった。

まぁ、いろいろと楽しい経験になれたので、最後は童話のようにめでたしめでたしで終わったという。
ちなみに、今回の一件でロックオンはロリコンだというのは隠しようのない事実となった。
それもまた、ティエリアを愛すればこそ。