「忘れな草・・・・」 ロックオンに買ってもらった、忘れな草の髪飾りを人工の光にすかす。 髪飾りは二つある。ブルーサファイアの高級なほうより、ブルートパーズの安いほうが、ティエリアは好きだった。同じ細工でも、はめこまれている石のせいで、蒼、という色でも違いがある。 ブルートパーズは、本物の忘れな草のように、水色をしていてとても気に入っている。 本当の忘れな草は小さくてとても可憐だ。そんな花に、何故「忘れな草」と名づけたのか、なんとなく分かった気がした。小さくて可憐でかわいい水色の花なのに、小さすぎてすぐに忘れてしまいそう・・・だから、人は「 忘れな草」と名づけて、花言葉も「私を忘れないで」ととても意味深いものにしたのだろうか。 とにかく、忘れな草は、花言葉も花自体もティエリアは気に入っていた。 「ティエリア」 「ロックオン?今までどこにいっていたのですか・・・」 自分を放置して、地上に降りてしまったロックオン。とても心配していた。連絡をとろうとしても、地上と宇宙では連絡のしようがない。 「ほら、これ。かわいいだろ?」 「え?」 ロックオンの手には、忘れな草が咲き誇る小さな鉢植えがあった。 「これは・・・わざわざこれを、買いに?」 「咲いてる本物、見たことないだろ?」 ティエリアは、感動のあまり涙を零した。 「おいおい、何も泣くことないだろう」 「僕にとっては、泣くようなことです・・・」 どうか、私を忘れないで。 ロックオンが買ってくれた鉢植えの忘れな草は、環境もせいもあり、光が日光に近いブリーフィングルームに置かれた。 毎日、その花を見て、時折水をやるのがティエリアの役目だった。 「髪飾りより押し花より・・・本物のほうがとても美しい」 純粋にそう思う。 「ティエリア・・・・」 鉢植えに、霧吹きで水をやるティエリアに、ロックオンが苦笑する。 ここまで夢中になるとは思わなかった。 買ってきてやって、正解だったろう。 いつか、ティエリアに見せてあげよう。 鉢植えなんかではない、地面一面に咲く忘れな草の花畑を。 いつか、いつか。 |