スキーでひゃっほい9







「確か、このあたりに・・・方角でいえば、こちらに」
ロックオンだけでなく、アレルヤ、刹那も腕まくりをして探してくれた。

快晴だったのに、ちらちら雪がふりはじめた。
もう探し始めて3時間以上になる。
一向に見つかる気配はなかった。

日が暮れる。
闇夜の中、ロックオンが切り上げの声を出した。
明日はもう、このスキー場をたつ日だ。

「・・・・・お気に入りだった、のに」
枕を抱きしめて、涙を零す。本物の鉢植えを買ってもらったし、花畑まで見せてもらった。対となるブルーサファイアの忘れな草の髪飾りよりも、ブルートパーズのその水色が気に入っていた。

「ロックオン・・・遅いな・・・」
そのまま、ティエリアは眠りについてしまった。

泣きはらした紅い目が痛々しい。
「準備終わったか?」
「終わったよ」
「終わった」
ティエリアは無言だった。よほど、あの髪飾りを気に入っていたのだろう。

やがて王留美の手配したヘリコプターがやってきて、それに乗り込む。
「さようなら、空色の忘れな草の髪飾り。短い間だったけど、幸せをありがとう」
雪原に向け手を振る。
片方のない髪飾り。ブルーサファイアの髪飾りだけをしていた。

ヘリコプターの中で、ロックオンがティエリアの頭を撫でた。
「取り返しのつかないことをしてしまいました」
「ほら、泣くなよ」
「でも、せっかくあなたが買ってくれたのに。お気に入りだったのに」
ティエリアの、髪飾りがついていない反対に、ロックオンが髪飾りをつける。
「これは・・・・見つけてくれたのですか!?」
それは、ティエリアがすきな水色の忘れな草の髪飾りだった。

「正直、諦めかけてた。でも、諦めたらそこで負けだ」
「ありがとう!大好きです!」
ヘリコプターの中で、ロックオンに抱きつくティエリア。

「おほん」
アレルヤが咳払いをしても、二人は抱きしめあったままだった。

そして、見つめあって深くキスをする。
ロックオンの手が、ティエリアの髪飾りを撫でる。その上から、ティエリアは白い手を重ねる。
「離さないで」
「離さない」
「髪飾り、なくなってしまうところでした。本当にありがとうございました」
「ティエリアのためなら、なんだってするさ」
「手が・・・こんなにもつめない」
ロックオンの両手を挟み、息を吹きかける。

スキーでひゃっほい。
アホだったけど、そこは確かに愛もあった。