19話補完小説「これは、罪でしょうか」







「何度言えば分かる!私はマリーではない、ソーマ・ピーリスだ!」
「マリー!誓ってくれ、もう二度とあんな危険な真似はしないと!」
アレルヤは引き下がらない。

いつもなら、ソーマがまくし立てると、一人にしてくれるのに。
今回だけは、腕を掴んだまま離されない。逞しい体に抱きこまれ、そのまま宙を漂う。

「ソーマ・ピーリスだ!!」
「マリー」
「アンドレイ少尉を・・・・大佐の敵を・・・・」
「沙慈・クロスロードって人がいってたじゃいか。復讐のために殺しても、大佐は生き返らない」
「それでも、私は!!」

「マリー!!」
唇が、重なった。
「何をする!」
ソーマはアレルヤを平手打ちする。

真っ赤になったソーマに、アレルヤは穏やかな笑顔を向ける。
「いつもの、マリー・・・ソーマだね」
「え・・・・」
ツンケンした態度の、ソーマがそこにいた。
復讐に燃えるソーマではなく、超兵ではあるが、一人の女性としてのソーマが。

「お前の考えていることは、分からない」
「いいんだよ。それで。人は複雑だから」

また抱き寄せられる。

金色の瞳は、しっかりと閉じられ、アレルヤの背中に手が回された。

愛されているって気づいているのに。
ねぇ。
復讐では何も生み出せないって分かっているのに。
ねぇ。
復讐では憎悪しか生み出さない。分かっているのに。
でも。

止まらないんです、大佐。
あなたを失った痛みが大きすぎて、仇討ちをしたいと心から思うのです。
これは、罪でしょうか。
大佐。

もう答えてくれる声も、伸ばされる手もない。