そんなドライバー







「用意はいいか?」
「はい。忘れ物もありません」
アイルランドで、ロックオンの車に乗り込んだティエリア。
運転するのは、もちろんロックオン。

隣に座って、ちゃんとシートベルトもした。
後部座席には、愛しのジャボテンダーさんを座らせ、ちゃんと怪我をしないようにシートベルトをしてあげた。抱きまくらにシートベルトって・・・・ロックオンは思ったが、つっこまない。

車が発進する。
そのまま、のんびろとした放牧地の中に続く道路を走る。

窓をあけ、そこからはいってくる新鮮な空気にティエリアは髪を遊ばせる。

「長閑だろ」
「そうですね」

ティエリアは、草を食むひつじの群れに無邪気に手をふる。すると、牧場主であろう夫婦がこちらに気づいて、笑顔で手を振ってくれた。
それが、嬉しくて、窓から身を乗り出す。

「こら、危ないからやめろ」
「すいません。つい」

ブルルルルー。
長閑な風景には似合わない四トントラックが、追い越していく。
それに、ロックオンがピキンときた。

「おっしゃあ、燃えるぜぇ!」
「はい?」

突然スピードをあげるロックオン。
ティエリアは、窓を閉めた。

「・・・・・・・・・実はさ、俺、車運転するの4年ぶりなんだ」
スピードをあげたのはいいものの、追い越そうかどうしようか迷っているのか、そんなことをいうロックオンに、ティエリアは青ざめた。
「ペ、ペーパードライバー・・・・」
「まかせろって、まけねぇ」
「どいてください!」
「あべし!?」

ティエリアにアタックされ、ロックオンは窓にはりついた。
ティエリアは、なんとか苦しい体勢のなか、シートベルトをはずし、ロックオンのシートベルトもはずして、座席を交代する。
そして、車を猛スピードで運転しだした。

「ティエリア・アーデ。ガンダム・・・・じゃない、ただのロックオンの車、出る!!」
運転を一歩間違えれば、即死しかねないスピードで、車を運転する。

そのまま四トントラックを追い越して、それから別れ道を左に曲がって、スピードを緩めた。

「ロックオン?」
ロックオンは、とにかく絶叫ものに弱い。スピードの出過ぎた車は、かなりきいたらしい。
「エイミーが、手招きしてる・・・うふふあはは・・・・」
頭のまわりに星をまわしてぴよってる。

「ロックオン!」
ティエリアは、車をとめて頭突きをした。
「びでぶ!?・・・あいてて」
「大丈夫ですか?」

ティエリアに頭突きされた部分を撫でながら、ロックオンはティエリアを抱きしめた。
「無茶すんなよ、まったく」
「ペーパードライバーに運転を任せるほど、愚かではありません」

そのまま、ゆっくりと車が走り出す。
運転するのは、ティエリア。
今度は、ロックオンが窓から顔をだして、羊の群れに手を振る番だった。

「お前、なんでもできるのな」
「一応は、運転免許証も持っています。車だけでなく、ヘリコプター、船、バイク、宇宙船に、飛行機、その他・・・・」
「すげぇなぁ」
「流石に、なぜフォークリフトの運転免許証までもっているのかは分かりませんが。あと、ガンダム・・・これにはマイスターであることが、免許証の証ですね」

「あと・・・・ロックオンを運転するのに、免許証はいりませんね」
ボン!
隣で、ロックオンが顔から火を噴いた。
夜の艶やかなティエリアを思い出してしまったのだ。

「ロックオン・・・・言って、僕も後悔しました。猛烈に恥ずかしい・・・」
ティエリアも顔を紅くしている。
そして、緩やかに車は泊まる。

そのまま、顔をよせてロックオンとティエリアはキスをする。

車の座席をかえて、ロックオンがペーパードライバーを卒業するために、再び運転することとなった。

ラブラブバカップルの二人を、後部座席からジャボテンダーが鋭い眼光で見つめていた。