アレルヤの危機







「えっと、紹介するわ。今日からトレミーのクルーの一人になってくれるデイジーさんよ」
「デイジー・ハーヴェイと申します。これからよろしくお願いします」
金髪の若い女性は、そういってお辞儀をした。

なんでも、アイルランドのスキー場近くで有名な絵本作家として暮らしておきながら、一般市民でありながらCBに入りたいと申し込んできたそうである。
彼女についてはアレルヤが責任を負うという形となった。

「アレルヤさん。よろしくお願いしますね。電源をかりたくなったら、いつでもきてください」

スキーを休暇でしにいったマイスターズの中で、アレルヤはスキー場から2キロも離れたデイジーさんの家から無断で電源を拝借して、ロックオンに怒られたのはまだ記憶に新しい。

「デイジーさん!これからは、新作の絵本、生でみれるんだね!」
「あら、アレルヤ?デイジーさんと知り合いなの?」

アレルヤはそれはもう笑顔で。

「デイジーさんは絵本作家でさ。僕はファンレターをいつも出していたんだ。ヨーロッパで何回かあったこともあったよ。CBのガンダムマイスターだっていったら、驚いてたけどね」

さようなら、アレルヤ。
その場にいた誰もが、そう思った。

パァン!
「うわぁ、ティエリア!?何するのさ!」
拳銃をいきなり発砲したティエリアは、とても怒っていた。
「君は、一般市民であった頃の彼女に、ガンダムマイスターである秘密を漏らしたのだな」
「・・・・・・・・・・・・あ、あれ?」
「万死に値する!」
拳銃を片手に、今にもアレルヤを撃とうとするのを、ロックオンが止める。

「どうして止めるのですか!」
「彼女は、CBのメンバーだろ?もういいじゃないか」
「ですが、規則が!」
「それいいだしたら、刹那はどうなる。中東の姫に、姿を晒したあげくにガンダムだけで現れたり・・・名前も無論教えているし・・・・」
「それは・・・・」

ティエリアが、言葉に詰まる。

「俺はガンダムだ!」
刹那が、決まった口台詞を繰り返す。
ああ、もうこのガンダムバカは・・・。

「まぁ、仕方ない。今回だけは、多目に見ておこう」
ほっとするアレルヤ。
「ありがとう、ティエリア。じゃあ、この件でのお咎めはなしだね?」

「あ〜ら〜。誰がそういったかしら?」
ヒュオオオ。
まるで雪女のように背景に雪山を背負いながら、ミス・スメラギは笑顔だった。

「アレルヤ、独房2週間いり、決定ね」
「おめでとう、アレルヤ」
「おめでとう」
ティエリアが褒めると、刹那も褒めた。

「いや、そこ、褒めるところじゃないから・・・・」
アレルヤはしくしくと涙を零した。

ロックオンは、触らぬミス・スメラギに祟りなしと、刹那とティエリアの首根っこをひっつかんで退散した。


後日。
独房で、アレルヤは快適に過ごしていた。
「おい、このパソコンどうした?電源はどこだ?」
ロックオンが、アレルヤの様子をみにきて、驚いた。
電化製品にまみれたアレルヤの部屋。電気ストーブまである。

「んとね、全部デイジーさんからもらった。電源もデイジーさんとこからかりてる」

長く伸びた電気コードは、下手するとトレミーの廊下を一周しそうだ。

恐るべし、デイジーさん。