「ふにゃー」 ベッドでごそごそしはじめたティエリアに、ロックオンが目をあける。 「どうした?」 「ジャボテンダーさんが・・・・ふにゃあ」 眠っている。 石榴色の、緋色の美しい瞳は閉じられたままだ。 むにゃむにゃと寝言をいうティエリアに、ロックオンは蹴られて遠くに飛ばされた毛布のかわりに、自分の毛布をかけてやった。 最初は、同じベッドで眠る、という行為にとても抵抗感を見せていたっけ。 「そんな子供のような真似・・・!」 紅くなって、うつむいて、怒って・・・。 でも、最後にはロックオンの手に落ちてしまう。 心地よい体温と、ヴェーダを失って一時期は睡眠障害に陥ったティエリアが、眠りにつくまでいつも傍にいてくればロックオンに、癒されるようにとてもなついた。 なついた、とまるで動物のような言葉だが、ティエリアはきっと猫系統の猛獣だと思う。 しなやかで美しい・・・雪豹か、黒豹か。 少なくとも、かいならされた家猫ではない。家猫であれば、もっとなんというのか、素直なはずだ。 ティエリアはとても・・・なんというのか、恋人同士になるまで、本当に機械のような人間で、必要最低限の受け答えしかしなかった。 ここまで、ティエリアが変わるなんて、ロックオンも思ってもいなかった。 「・・・・・ジャボテンダーさんの味は・・・・メロン。美味しそう・・・・むにゃ」 ぶっ。 ロックオンは、隣でジャボテンダー抱き枕を抱きしめたまま、深い眠りについたティエリアの寝言にふきだした。 ティエリアは、甘い味のものがすきだ。特に果物がすきで、メロンは大好物だ。 ジャボテンダーは、メロン味。きっと、とても幸せな夢を見ているのだろう。 ロックオンは手を伸ばして、ティエリアの額にかかっていた髪を払い落とす。 雪の結晶のような、美貌。人ではあらざると、物語っているような。 でも、ティエリアは人間。 ロックオンは、毛布ごとティエリアを抱きしめていた。 「どうか・・・この幸せが、いつまでも続くように・・・・」 いつまでも、歩いていこう。二人、一緒に。 どうか。 願うように、ロックオンも眠りの海へと旅立っていく。 |