「ライル」 「・・・・・・もう一度、呼んでくれないか」 「ライル」 「もう一度」 「ライル・・・どうしたの?」 アニューが、ライルの目をのぞきこむ。 「不安なんだ。アニューが、俺の前から消えてしまいそうで」 しっかりと、アニューの体を抱きしめるライル。 アニューは笑う。 「心配性ね」 「どうしてだろうな・・・これが、愛する人を失う怖さ、か」 「私の方こそこわいわ。あなたが、戦死してしまう気がして」 「それはないさ。おれはスナイパーだぜ?一度狙った獲物を逃して、死ぬような真似はしない」 アニューの唇にキスをする。 アニューの髪には、ティエリアからまわってきた忘れな草の髪飾り、それもブルーサファイアの数百万もする高級品が輝いていた。 ティエリアは、ブルートパーズの数千円の、水色のほうがすきだった。 アニューとて、宝石に興味がないわけではない。 最高級のサファイアをプレゼントされて、喜ばないはずがない。 「私は、いつでもあなたの傍にいるわ」 「信じているよ、アニュー」 重なる、二つの意志。 トレミーの廊下でラブラブしていたのだが、ティエリアがやってきた。 「アニュー、ちょっとこっちへ」 「あら、ティエリア、どうしたの?」 「最近、ぼうっとすることはないか?」 「そういえば・・・気づくと、違う場所にいたりするの」 「やはりか・・・・」 運命とは、どうして過酷なものなのだろう。 今度は、ライルとアニューが試されるばんがきたのだ。 ティエリアは、アニューの髪にキスを落とす。 「ティエリア?」 ごく間近に絶世の美貌がきて、アニューは顔を赤らめた。 「守りぬけ、ライル」 その言葉は、アニューには届いていない。 同じイノベイター同士であることが響くのか、アニューは瞳の光彩を金色の輝かせたまま、人形のように止まっている。 「私と同じ道を歩まないでくれ・・・・」 もしも、ここに神がいるのだとしたら、ティエリアは土下座してまで願うだろう。 二人の純粋な愛を、どうか壊さないでくれと。 神など、この世界にいるのかどうかも分からないのだ。 それが、ティエリアたちが守ろうとしている、世界。 |