「私たち・・・分かり合えてたよね?」 「ああ、勿論だ」 アニューの魂を抱きしめる。 アニューは、見たこともないほどの綺麗な笑顔をつくって。 そして、崩れていく。 アニューの体が、崩壊していく。 魂に罅が入り、粉々に崩れていく。 ライルは、アニューの魂の欠片を拾い集める。 アニューは、笑顔で、真紅の瞳から一粒の涙を流した。 その涙は、結晶となってライルの手の中にあった。忘れな草の髪飾りの結晶。 ライルは、泣きながら、エメラルドの瞳から涙を零しながら、アニューの名を繰り返しながら、アニューの魂の欠片を拾い集める。 「アニュー、愛しているから」 拾い集めても、拾い集めても、アニューの形にならない。 夕暮れを背に、はじめてキスしたときの思い出が、零れ落ちる。 ライルの中から、涙となってアニューとの愛の結晶が、零れ落ちてくる。 アニューの笑顔。 きっと、一生忘れることはない。 「アニュー、綺麗だよ・・・・」 展望台で、ライルは星を見ていた。 「ライル・・・俺を、憎め」 刹那が、ティエリアに治療され、ライルに殴られた痕も生生しく、そう言ってきた。 ライルに、今の刹那の言葉は届いていない。 「アニュー・・・・こんなにも、魂は粉々になって・・・でも、愛してる。魂の欠片まで、拾い集めるから」 「ライ、ル」 刹那は言葉をなくす。 ライルが抱きしめているのは、涙を流したティエリアだった。 「刹那・・・・少しだけ、時間をあげてくれ。彼に・・・思い出に浸る時間を・・・・」 ティエリアは、涙を流しながら、ライルを抱きしめ、その背中をずっとさすっていた。 「アニューの心が・・・・分かるんだ。同じイノベイターのせいかな・・・そして、ライルの気持ちも痛いほどに分かる。ライルは・・・今、迷子になってるんだ。一人で歩きがちだから・・・魂が、アニューを求めて迷子になっている。ライルの魂が、私を呼んでいるんだ・・・・迷子の魂が。せめて、今は・・・・今だけは、このままで・・・」 まるで、聖母マリア。 ティエリアは、ライルが隠していた弱い部分をそのまま包み込む。 「愛しているわ、ライル」 ティエリアは、世界最高の声帯で、アニューの声をだすと、ライルに愛を告げる。 ライルが震えた。ティエリアを抱きしめて、涙を零す。 「アニュー、愛している。一緒に連れてってくれ」 「それは、できない。ライル・・・・私にできるのは、ここまでだから・・・・・」 ティエリアは、ライルの腕の中で唄を歌いだす。 アニューの声で。 「アニュー・・・・」 ライルはずっと泣いていた。 ライルだって人間だ。泣きたいときくらい、一日中泣けばいいんだとティエリアは思う。 「兄さんを失ったとき・・・そう、こんな気持ちだったんだな、あんたは・・・・」 愛している 愛している 魂の欠片を拾い集めても 何度何度拾い集めても 君の魂の形にならないよ でも想いは拾い集めれるから 記憶は粉々にならないから 愛している 愛している 何度でも 拾い集めるよ 君の魂を 何度でも 「何度でも・・・・・拾い集めるよ・・・・」 星を見上げる。 「もういいから・・・・俺みたいな人間にかまうこたねぇよ・・・刹那のところに、いってこい」 「いやです。私は、あなたの傍にいる。あなたが落ち着くまで・・・私には、それしかできないから」 ティエリアは、ライルの涙をぬぐう。 「ごめんな、アニュー」 「アニューは、本当にあなたを愛していました」 「なぁ。もっかい、アニューの声で歌ってくれないか」 「何度でも・・・あなたの魂が、安らぐのであれば・・・・・」 ティエリアは歌いだす。 刹那は、黙って二人に背を向けるのであった。 ------------- ライアニュ。本当に好きでした。 ライルも、きっと泣きまくりたいんじゃないかなぁ。 |