「愛してるから、ティエリア」 「うん、知ってる」 アイルランドの家で、ティエリアはリジェネと住んでいた。 はじめは一人暮らしだったのだが、ティエリアを心配してCB施設で暮らしていたリジェネがやってきたのだ。 いつもちょくちょくやってきていたのだが、面倒なので一緒に住むことになった。ティエリアは一人暮らしが寂しかったので、止めなかった。 「荷物少ないね」 「ティエリアの服きればいいのさ」 「でも・・・僕のは、ユニセックスのが多くて。リジェネは嫌かもしれないよ?」 「構わないよ。ティエリアの服なら女装だってする」 リジェネは本気だった。 「その水色の髪飾り、綺麗だね」 ティエリアは微笑む。 「リジェネにあげるよ」 脳量子波を使うことはしない。ティエリアが嫌がるからだ。 ティエリアは、水色の気に入っていた忘れな草の髪飾りを、リジェネの髪につけてあげた。 ロックオンの意志を継ぎ終わり、ティエリアはもう何もすることがない状態だった。ぽっかりと、未来に穴が開いてしまった。CB機関で研究やAIの開発に携わりながらも、生きているという実感が湧かない。 トレミーにいた頃は、ロックオンの意志を継ぐのだと必死で。 終わってしまえば、次にすることが思い浮かばない。 まるで他人のように自分を見ていた。 「僕も・・・・人間かなぁ」 「リジェネも人間だよ」 二人はシンメトリーを描く。DNAまで同じで、双子よりも似ている。その存在は半身。 食事をつくるのが苦手で、いつも宅配か外食をしていたティエリアのために、リジェネは夕食を作ってくれた。 エプロンを着て、まるでお母さん。 とても美味しい料理を、その日から毎日作ってくれた。 リジェネもティエリアと同じでIQ180をこえており、一緒にAIの開発をしはじめた。プログラミングもお手の物だ。まるで、もう一人の自分と生活をしているような奇妙な感覚に襲われながらも、ティエリアは随分長い間零すことのなかった笑顔を取り戻していた。 「一緒に寝ようか」 ベッドは二つある。 ティエリアは、リジェネが寝ているベッドの中に入った。 「ティエリア。君、分かってるの?僕、君のことが好きなんだよ?恋愛感情での好きなんだよ?」 「知ってる。でも、君は僕を傷つけるようなことはしないから」 「参ったね・・・」 リジェネは、ティエリアが抱いたジャボテンダー抱き枕を抱きしめる。 「ジャボテンダーさん・・・・」 二人は、お互いを抱きしめあって眠った。 朝になり、ティエリアは不思議と低血圧なのに、リジェネが傍にいてくれると早めに起きれた。 リジェネが、眠たそうに目をこする。 「おはよう、リジェネ」 朝の柔らかい日差しが窓から入ってくる。 「おはよう・・・・」 二人は、自分の存在を確かめるようにお互いを抱きしめあう。 「おはよう」 目を開けると、ニールがエメラルドの瞳で優しく自分を見つめていてくれた。 「おはよう、ニール」 ティエリアは、ロックオンのことをニールと呼ぶようになっていた。 そのまま、おはようのキスをお互い額にする。 「今日は休日だし、も少し寝とけ。俺も寝る」 「はい」 ギギギギギ・・・・。 メラメラメラゴオオオ。 燃える音と凄まじい目線に気づいて、ティエリアはそちらの方を向く。 リジェネが、離れたほうにあるベッドで、じっと二人を嫉妬の瞳で見つめていた。 リジェネは、ベッドからおりると、その細い体にどこにそんな力があるのだろうかという勢いで、ベッドをティエリアとニールが寝ているベッドに、ドン!とぶつけた。 「僕たちイノベイターの力をなめないでもらおうか。いつまでティエリアに抱きついている、この獣がああああ」 リジェネは、リジェネ専用のジャボテンダーを振り上げると、べしばしとニールを殴った。 「いや・・・・ベッドくっつけただけだから!それってイノベイターの力と関係なくない!?」 「うるさい!」 「リジェネも一緒に寝よう」 ティエリアがそういうと、リジェネはティエリアを自分のベッドのほうに抱き寄せて、朝のおはようのキスを額にする。ティエリアもリジェネのおはようのキスを額にする。 「ティエリアは、渡さないんだから!」 フフフ・・・と黒い笑いを吐くリジェネ。 ニールは、ゆっくりと手を伸ばし、リジェネもティエリアも一緒に抱きしめた。 ジャボテンダーさんが、ベッドの上から転がり落ちる。 リジェネは、ティエリアを抱きしめて、眠ってしまった。そんな二人を抱きしめて、ニールもまた眠るのであった。ティエリアのジャボテンダーさんだけが、ベッドの傍らで黒いボタンの瞳でそんな三人を見つめ、朝の柔らかい日差しにポカポカと温まっていった。 -------------------------------------------- 世界が終わってもUを書く予定で番外編。。。 いやUっていっても・・・もうほのぼのしかないんですけど・・・・。 |