二人別々にシャワーを浴びる。 浴槽に湯をはり、ティエリアは肩まで浸かって足を伸ばす。 ジャボテンダーさんも、今日も一緒にお風呂だ。 風呂からあがり、パジャマを着て、ジャボテンダーがすった水分をぎゅうっとしぼり、デイジーさん開発の「一発で乾くんです」を起動させて、ジャボテンダーは一発で乾いた。 ティエリアは、乾いたジャボテンダーをぶんと、勢いよく刹那に投げつける。 お約束のように、それは刹那の顔に当たった。 「少し、ライルの様子を見に行ってくる」 「止めておけ」 「だめだ、彼も大切な仲間だから」 ティエリアは、ジャボテンダー柄のパジャマにジャボテンダーのスリッパと、ジャボテンダーづくしで、アニューの部屋にはいる。そこにライルの姿はなかった。 そのまま、ライルの部屋に向かって、勝手に暗号を入力してロックを解除する。 ライルは、ベッドの中で、天井を見ていた。 「ライル」 「心配しなさんな。あれから展望台に、この部屋で・・・何度もあんたに慰めてもらった。もう、泣いたりしないから」 「そう」 ライルは一生分の涙を流したかのように、はれぼったい目をしていた。 泣きつくした。いっぱい泣いた。泣くことが、ライルには必要だったのだ。 「もう、刹那に当たったりしねぇよ」 「私のお願いを、聞いてくれるかな?」 「は?」 ティエリアは、哀しそうな顔をしていた。 「見たでしょう。私の心の奥を。ブラックボックスを」 「それは・・・・」 「私の心の基盤は壊れている。だから、これ以上壊れない。どんなに辛いことがあっても」 「ティエリア・・・・」 「もしも、私が、イノベイターとして覚醒し、自分の自我が保てなくなったそのときは、君が引き金を引いてくれ。 刹那には、多分できない」 「おいおい、なに物騒なこといってんだ」 「言い切れないんだ。私は、自分が人間であると思っている。でも、イノベイターにあることに変わりはない。リボンズ・アルマークに支配され、皆に害を及ぼすようであれば、あなたの手で、殺してください」 「ティエリア」 「お願いです。刹那はきっと躊躇うから。あなたの手で、殺してください」 「分かった」 「残酷なことを頼んでごめんなさい。でも、自分の意思でどうしようもなくなってしまうかもしれない。今回のアニューのように」 「・・・・・・・・アニューは、戻ろうとしてた」 「知っています。でも、リボンズがねじ伏せた」 「リボンズ。絶対に、この手で殺してやる」 ティエリアは、すぐに刹那の部屋に戻った。 「ライルは大丈夫だったか?」 「うん。大分落ち着いたみたい」 ティエリアは、刹那の手を握る。 「どうした?」 「やはり、張れてしまったな」 刹那の、ライルに殴られた頬をそっとなでるティエリア。 「仕方ない」 刹那の言葉に、ティエリアは天使のように微笑んだ。 刹那。 君に覚悟があれば、僕を撃てるかい? 刹那。 君に自覚があれば、僕を敵とみなせるかい? 刹那。 どうか、願わくば。 そんなときが訪れた時は、審判をつげる鐘の音のように。 ライル、その手で僕の・・・・私の命を、絶ってください。 私は、誰も傷つけたくはないのです。 身勝手なお願いですみません。 もしも、私がリボンズに支配され、イノベイターとして覚醒してしまったら。 そこで、私は終わり。 あなたの手で殺されることを、切に願う。 ニールの血をひく、あなたに。それが、せめてもの・・・私の、償い。 あなたから、皆からニールを奪った私の償い。 あなたの手で、殺してください |