「ティエリア!」 「刹那!」 刹那が、マリナ・ブルーローズの花束を手に、お見舞いにきてくれた。 「傷は、大丈夫なのか?」 「うん。アキレス腱を傷めたりで・・・・普通の人間の治癒スピードにしてるから。退院まで、もう少しかかる」 「ティエリアさん・・・・本当に良かった」 「マリナ姫」 マリナに抱きしめられて、ティエリアは笑顔を零した。 「ティエリア。俺は、お前のことをまだ愛しているから。ニールとリジェネがいても、マリナと同じくらいに愛している。無事で、本当に良かった」 褐色がかった手に何度も頭を撫でられて、ティエリアは眩しい笑顔を零す。 「刹那。ティエリアはあげないよ。僕のものだ」 「リジェネも元気そうで」 刹那は、ティエリアのベッドの横に置かれた椅子に座って、リンゴの皮を芸術的に芯まで向いていくリジェネの頭を撫でる。 「何するのさ!」 「辛かったな、お前も。泣いたんだろう、いっぱい」 「泣いてなんかいないよ!」 「いや、すげー泣いてたから」 反対側の椅子に座ったニールが、リジェネの泣き顔をいっぱい見たと証言する。 「ニール、うるさいよ。カプセルに閉じ込めるよ」 「簡便」 「はい、ティエリア。たくさん食べて、早くよくなってね」 「リジェネ。これは、芯を食べればいいのか?それとも皮を」 「無論皮をだよ」 「そうか」 真剣な表情でビローンと長くのびた皮付きのりんごを食べていくティエリア。 すでに、報道規制がなされているとはいえ、ティエリアとリジェネのユニットグループは人気があるため、また本名で芸能活動をしているので、生存報告は世界中に流れ、ファンは涙して喜んだ。 アレルヤとマリー、ライルとアニュー、それにミス・スメラギに、イアン親子、フェルトもお見舞いにきてくれた。 みんな、ティエリアの無事を奇跡だと喜んでいた。 やがて、皆の愛に包まれながら、退院の日を迎える。 飛行機事故で散ってしまった命は、戻ってこないけれど。 ティエリアは生きている。 ニールもリジェネも、それだけで十分だった。 「愛しているよ、ティエリア」 「僕も、愛しています」 家に帰ると、庭のマリナ・ブルーローズの花は隣の家のアニューがいつも水をやってくれていたせいもあり、綺麗に花を咲かせていた。 「永遠を、再び誓います」 「俺も、誓う」 庭のマリナ・ブルーローズの花を一輪摘み取ると、ニールはティエリアの髪に飾る。 長く伸びたティエリアの髪は、ニールの希望もあって伸ばしている。 「あのさ。家に入りたいんだけど」 「「あ、ごめん」」 二人の声は、綺麗にハモっていた。 NEXT |