ハピバースディ、アレルヤ







あれ、みんなは?」
気づくと、ガンダムマイスターたちの姿がない。

アレルヤはいつでもハブラレルヤだ。気づくと、皆からはぐれているか、無視されている。
またハブられてるのかなぁ、と少し哀しい気分になりつつも、騒がしい食堂の前にやってきた。

「ティエリア、無理だから、それ無理があるから。こら、刹那つまみ食いはよしなさい!」
ロックオンの声が聞こえる。
「ロックオン」
「げ、アレルヤ!」
「そんな・・・そこまで嫌がらなくても」
流石にショックだった。

「いや、違うんだ。あーもういいか。あとは苺飾るだけだし。ハピバースディ、アレルヤ!」
刹那とティエリアが、さもめんどくさそうにクラッカーを鳴らす。
パン、パン!

「ロックオン、刹那、ティエリア・・・・」
ジーンときたアレルヤは、クラッカーを鳴らした刹那とティエリアに抱きつこうとして、拒否された。
それでも嬉しいものは嬉しい。

クイクイ。
刹那が、じっと真紅の瞳で服を引っ張ってくる。
身長差が20センチ以上もあるので、見上げてくる刹那は無表情でも、あどけなく見えてかわいらしい。
「これをやろう」
それは、キュリオスのガンプラだった。
はっきりいって、嬉しくない。
でもあの刹那が、プレゼントだなんて。
感動して、アレルヤは涙まで流した。
「ありがとう刹那、大切にするね」
「それ、壊れたやつだから。処分に困っていたんだ。ちょうど良かった」
そんなことだろうと思ったけれど、嬉しいのだから仕方ない。
ガンプラと一緒に、刹那が無言で百合の折り紙を渡してくれた。
今度こそ抱きつこうとして、猫のように素早く刹那は逃げる。

「僕はこれをやろう」
ティエリアが渡してきたのは、本だった。
タイトル・・・・「KYにならない100の方法」(KY・・・空気が読めない)
みじめで涙が出てきた。でも、ティエリアからプレゼントなんて嬉しい。
本をめくると、鶴の折り紙が挟んであった。
「これ、は?」
手にとると、ティエリアはかああと紅くなった。かわいくて抱きつこうとしたら、刹那と同じように猫のように素早く逃げられ、刹那と一緒にガタガタ震えている。
アレルヤは、嬉しすぎて抱きつくと、力の加減がない。その屈強な筋肉で締め上げられるようなもので、刹那もティエリアも、自分を守ろうと必死だ。

ああ。なんてかわいいのだろうか、年少組は。

「ハピバースディ、アレルヤ。俺からは、手作りのケーキな」
「ロックオン!」
アレルヤはロックオンに抱きついた。
ミシミシと、骨のなる音がする。
「ギブギブ、アレルヤ、ギブ!!!」
バンバンと、ロックオンはもがいている。アレルヤが離すと、ロックオンは薄べったくなった紙のようにひらひらと飛んでいった。

ちゃんと、板チョコでハピバースディアレルヤとかかれ、かわいい似顔絵まである。苺がふんだんに使われている。
「みんなで食べよっか」

くいくい。
ティエリアが、アレルヤの服を引っ張ってくる。
ティエリアは身長が高めだが、それでも絶対的な美貌のせいでとても可憐に見える。上目遣いで、こういってきた。
「これも食え」
それは、生魚にホイップクリームをのせ、苺をのせたものだった。
アレルヤは、危機に陥った。
ティエリアが、一生懸命自分で作ったのだろう。だからって、なんで生魚にホイップクリームと苺!?
期待に彩られた石榴の瞳。
「刹那と一緒に作った」
刹那も、真紅の瞳で上目遣いに見上げてくる。

ブバッ。
アレルヤは鼻血をふいた。
「うわああああ」
「ぎゃあああああ」
刹那とティエリアは、復活したロックオンにしがみつき、ガタガタ振るえていた。

「大丈夫、怖くないからおいで〜」
アレルヤは、ティッシュを鼻につめながら、笑顔でティエリアと刹那を手招きする。
二人とも、カクカクしていた。
ぶんぶんと精一杯、首を横に振る。

「ロックオン、助けて」
涙目で、ティエリアがクイクイと、ロックオンの服をひっぱる。
「ロックオン・ストラトス、助けろ」
同じく涙目で、刹那がクイクイと、ロックオンの服をひっぱる。
ブバッ!
ロックオンも鼻血を出した。
「大丈夫ですか、ロックオン!?」
「大丈夫か?」
二人とも、心配してテッシュを無理やり鼻につめて、ロックオンを窒息死させようとしている。

この反応の違いは何?
アレルヤは、涙をキラリと浮かべた。

まぁ、ロックオンはマイスターの中でもリーダーとして年少組にも慕われているから。アレルヤも、人懐こい性格から慕われているのだが、たまに怖い。今みたいなときとか。

「えーと。それ、生魚じゃないから。そうみえる、ゼリーだよ、アレルヤ。食べてごらん」
アレルヤがロックオンに言われ、ティエリアと刹那が作ったという、生魚にしか見えないものをおそるおそる食べると、メロン味のゼリーだった。
「美味しい・・・・」
アレルヤは、驚いた。
生魚にしかみえなかったのに、美味しいメロン味のゼリーだ。ホイップクリームの甘さとまざりあって、とても美味しい。

ロックオンが器用に四人分バースディケーキを切り分ける。アレルヤの分は多めにして。
それぞれ、皿の上に乗せられ、食堂の椅子に座る。
ティエリアはホワイトメロンソーダをコップに注ぐ。他のメンバーは紅茶だった。
じっと、ティエリアがロックオンのケーキを見つめる。
ティエリアは食事に興味というものがない。食べる、という行為すら放っておくと三食ともにゼリー食品と、足りない栄養素はビタミン剤などで補ってしまう。
ロックオンが、わらって自分のケーキとティエリアのケーキととりかえる。
ロックオンのケーキには、特大の苺がのっかっていたのだ。
ティエリアは、フルーツの類は好き嫌いがなかった。

笑顔になって、苺にフォークを突き刺して食べるティエリア。
刹那も、自分のケーキの上にのっかっていた苺をティエリアにあげた。アレルヤも。
ティエリアは上品にちまちまケーキを食べていく。
もらった苺は残しておく。最後に食べるのだ。

「頬に、クリームついてるぞ」
ロックオンが、ティエリアの頬についたホイップクリームを舐めとった。
ティエリアはきょとんとしていた。
刹那とアレルヤは紅くなっている。

ロックオンがつくってくれたケーキは美味しかった。
その日の夜、アレルヤは二十歳を迎えたこともあり、ミス・スメラギと飲んで、飲みすぎて二日酔いになった。