マリナ・ブルーローズ







「だめだ、眠っていろ」
マリナは、起き上がろうとして刹那にベッドの中に戻された。
マリナが風邪をひいた。
東京で、マリナは刹那とティエリアと一緒に家族として暮らしている。
ティエリアは久しぶりにCB機関に出かけた。
マリナを一人にはしておけないので、刹那が数日の休みをもらった。本来なら、ガンダムマイスターズであった者達は年金をもらっており、働く必要なんてないのだが、自堕落は性格が許さない。

「マリナ、ほら、これを見てみろ」
「?」
マリナは、配達便を受け取った刹那の手にあるものを見て驚いた。
「綺麗・・・」

それは、青紫の薔薇の苗だった。
「なんて綺麗なの。こんな青に近い薔薇、はじめて見るわ」
「俺が、作った」
「刹那が?」
「そう。マリナの蒼い瞳のような薔薇を作りたいと、品種改良を繰り返してできたのがこれだ。青紫だけど、世界で一番蒼に近い薔薇だ。俺はいつか、マリナの瞳のような蒼い薔薇を作り出してみせる」
「素敵ね」
風邪の辛い症状も忘れて、マリナはその薔薇に魅入っていた。

「この薔薇に、名前をつけたんだ」
「まぁ、どんな名前?」
「マリナ・ブルーローズ」
「刹那・・・・」

「本当の蒼い薔薇ではないけれど。そうつけたかった。いつか、マリナの名前を、花につけたかった。無駄にCB機関で花の品種改良なんて仕事をしているわけじゃない。花がすきなのもあるけれど」
「いつか、刹那にならできるわ。蒼い薔薇を咲かすことが」
ちなみに、今まで刹那がつけた新しい花の名前には全てガンダムの名前が入っており、マリナ・ブルーローズが一番綺麗な響きでまともなものだった。

「いつか、蒼い薔薇を世界中に咲かせたい」
「素敵ね。人が求めてやまない蒼い薔薇が、世界中に咲いたら」

「この花は、薔薇の亜種として認められた。花言葉もあるんだ」
「まぁ、なにかしら」
「永遠の平和」
「永遠の・・・・平和」
マリナは、思わず涙を零していた。
「刹那・・・あなたは」
「俺の罪は計り知れない。殺した人間の数なんて、数え切れない。でも」
マリナは、ベッドから起き上がり、刹那を抱きしめる。
「きっと、叶うわ。世界は、この花言葉のように。マリナ・ブルーローズのように」
「そうあってほしい・・・・」

どうかそうあってほしい。
永遠の平和を。
この世界に、どうか。