「刹那」 「ティエリアか。ダブルオーライザーで、グランジェ5に出る。後のことは頼む」 「こっちにこい、刹那」 「?」 手招きされて、刹那はティエリアの細い肢体を抱きこむ。 「やはり・・・か。君は、変わっていくな。人類の進化だ」 「ああ。気づいている」 薄暗い廊下のトレミーで、刹那の真紅の瞳は金色に輝いていた。 「忌まわしいとは思う。だが、その存在はリボンズ・アルマークのようなイノベイターではないのだと信じている」 「すでにあるイノベイターとは、存在が違うだろうな。君は純粋種だ。人から進化していこうとしている。そう、はるか昔、哺乳類だった人類が猿に進化し、人に進化したように。それが、急激に、あわゆる起因が発端となって起こっているだけだ」 「気味が悪くないのか、ティエリアは」 「どうして?僕はもともとイノベイターだ。むしろ、君がイノベイターになってくれるなら、同じ時間を一緒に生きれる・・・・途方もない、生、という時間を」 ティエリアは、刹那に触れるだけのキスをした。 「分からない。俺の今の存在は、寿命までは・・・・」 「それでもいいさ。君と一緒にいられるなら」 「ライルが・・・俺を背後から銃で狙っていたとき、ライルの背後で銃を向けていたな」 「参ったな。君はなんでもお見通しか」 「伊達に戦場を生きてくぐりぬいてきてはいない」 「ライルは、撃つ覚悟があるようで、ない。多分、刹那を撃てないだろうな、一生・・・。そして、もしもライルが君を殺せば、僕がライルを殺す」 「止めてくれ、そんな」 「なぜ。僕は君を愛している。愛している人を殺されれば、残った者は悲しみにくれるか復讐をとるかの二択だ」 ティエリアは、瞳を金色に輝かせた。 同じ金色の瞳が、2対ある。 「金色の瞳。ティエリアの瞳のほうが綺麗だ」 「いいや、刹那のほうが綺麗だ。精悍な顔立ちが美しい」 「ティエリアの女神のような天使のような美しさに、金色の瞳はよく似合っている。神秘的だ」 「褒めても、何も出ないぞ」 「そうだな」 「検討を祈る」 「分かっている。後のことは任せた。リーダーとして指揮をとれるのは、ティエリアしかいない」 「グランジェ5か。遠いな」 「ミス・スメラギの指示だ。仕方ない」 「僕もできることならいきたいが、ダブルオーライザーを欠いてはもしものときに戦力に支障がでる。ライルはまだ不安定だし・・・三機だけでも、なんとか持たせてみせるさ」 「ああ、信じている」 刹那が、ティエリアの瞼に口付ける。 ティエリアが、刹那の瞼に口付ける。 「「金色の瞳も悪くない」」 二人はしばし互いの瞳を見つめあったあと、お互いの任務をこなすために別れた。 |