世界が終わってもV「ざまぁみろ、リジェネ」







リジェネのきつい美人が、ティエリアと同じような柔らかな美人になる。ティエリアは無性で、リジェネは男性であるが、リジェネが男性であろうが女性であろうが、あまり関係ないだろう。女神のような美貌は、そう、本当に人間という生き物を美しくしすぎて、人形めいて、性別というものさえ超越してしまう。
仕事上、ティエリアもリジェネもとても女性にもそれから美しさと歌声の綺麗な澄みきった泉のようなせいで、男性からももてたし、何度もいろんな人間から告白され、付き合ってくれとは言われ、そして時には体の関係まで求められる。そのたびに、二人は無視をするか、触れてきた相手を男性であれば投げ飛ばし、女性であればしつこければビンタした。
リジェネは雑誌インタビューでも、公然と好きな相手はティエリアと言っているし、ティエリアはティエリアで恋人がいるといっている。それが誰なのかは、二人のプライバシーはCB機関によって保護されているために分からない。

リジェネは、時折それでも有名なモデルと肉体関係をもってしまったりして、CB機関でも守れないようなスキャンダラスなことになるが、一番愛するティエリアがニールを愛している限り、リジェネは手を出さない。その部分ではとても紳士だった。だからといって、初心なそこらのお嬢様を手にかけたりもできない。だから、てっとりばやく人間の男であるが故に持ってしまった怠惰な情欲をスキャンダラスにまみれたモデルやアイドルで済ます。
相手はリジェネの美貌に喜んで言いなりになる。だが、体の関係だけで、誰もリジェネと真剣に付き合おうという人間はいなかった。何故なら、リジェネが美しすぎるから。
女だって、自分より美しい男と並んで比べられたくはない。いや、リジェネなら性別さえもこえて人をひきつけるので、女の存在など歯牙にもかけられないかもしれない。

「へぇ、ティエリアも料理できたんだ」
リジェネは、目の前に出された青紫の目玉焼きを珍しそうに眺める。
「なぁ。ちょっと聞いていいか」
「なにか?」
「なんで、青紫色なのかな?」
「マリナ・ブルーローズを入れたからです」
「そうか」
「へぇ。あの薔薇、食べれるんだ」
いや、食べれないから。
確か、刹那がこの前家に遊びにきたとき、絶対にマリナ・ブルーローズの花は食べないようにと三人に言っていた。品種の取扱書にも、花の部分は毒物を含んでいるので、体に害のある恐れがあると注意書きがしてあった。
でも、ニュースで事件にならないところから見ても、大量に摂取しても死んだり、何か酷い症状になることはないようだ。刹那だって、念のため、といっていたし、そんなに心配することもないかなぁとか、ニールは他人事なのでどうでもよくなってきた。

いや、いつもリジェネに悪戯や意地悪ばかりされているので、仕返しもできないニールには、いい機会だこんにゃろうとかそんな感情まで浮かんでいた。
今日だって、朝おきるとニールは床でジャボテンダーをティエリアの代わりに抱いて眠っていて、ベッドでは眠ったティエリアを抱いたリジェネがニールの代わりに寝ていた。
この家はわりとバスルームが広い。ニールはよくティエリアと一緒に風呂に入る。普通に、入るだけ。ティエリアはリジェネとも入る。昨日は一緒に入る約束をしていた。
が、むこう一週間ずっとリジェネと入ることになってしまい、昨日なんてリジェネと一緒に入るはめになり、浴槽に沈められた。リジェネはティエリアよりも肌の露出に敏感で、胸にまでバスタオルを巻いてとろうとしなかった。本当はお前も無性じゃないのか、もしくは声もティエリアより高いので、女じゃないのかと疑ってしまうくらいの潔癖ぶりだ。

ティエリアはある意味露出魔。平気で風呂あがりに裸で家の中を歩く。性的な部分においてとても無垢で、守ってやらないと誰かに襲われたら・・・というかんじなるが、とても強いので、むしろ襲ったほうが重症になる。
収入面やアイドルグループのユニットの二人目のメインボーカリストという点において、ガードマンなどを雇うことを進められたのだが、ガードマンなんて目じゃないくらい、ティエリアもリジェネも身体能力に優れており、素手で勝つ。
リジェネと一緒にティエリアは一度身代金目的で誘拐されかけたが、リジェネが守ろうと一人の男に蹴りを入れて持っていた銃を奪った時には、ティエリアは持っていた銃で、他の8人もの男の足と銃をもった腕を全て撃ち抜いて、冷酷な声で「死にたいか」と、死神のように囁いて、リジェネも流石に呆然としていたっけ。

なんだか考えていたらわけが分からなくなってきた。
とにかく、ははは、ざまぁみろリジェネ。少しはティエリアの愛の痛さ(愛するが故に盲目にならざるえないために、取り込むしかないもの。そう、ティエリアの手料理とかね)を思い知れ。

ニールは、フッフッフと黒い笑いを声もなくあげて、壁に寄り添っていた。
ギンギンと、いつもは綺麗なエメラルド色の瞳は濁り、そして仮面のようなはりついた笑みを刻んで、ニールは椅子をひく。
「ほら、リジェネ、どうぞ」
「ありがと。君が僕に優しいなんて、なんか気味悪いね」
「いや、ティエリアが機嫌いいから、おれも機嫌がいいんだよ」
それだけで、リジェネは納得してしまった。

リジェネ、さようなら。
うへへへ。
今日は俺の勝ちだな。
ニールはそれでもティエリアと並んでも、ひけをとらないくらい、男性として魅力的にカッコイイので、見た目はいつもの優しいニールだった。
それに、リジェネは騙された。
「ニールも食べる?」
「いや、リジェネが全部食べるってさ」
「誰がニールになんてやるか」
ほら、リジェネもこう言ってるし?

さようなら、リジェネ。
また明日〜。

ティエリアとシンメトリーを描く永久少年は、永久少女であるティエリアからナイフとフォークを受け取って、ただの玉子焼きなら手で掴んで食べればいいだろうに、ティエリアと同じように綺麗なテーブルマナーで食べていく。

(ざまぁみろ、リジェネ。フフフフ・・・・)
ニールは、リジェネの後ろで、リジェネに向かって手を振っていた。

青空が眩しかった。





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