世界が終わってもV「ドクター・モレノの(以下略)」







「できた!」
「なんだ、材料混ぜるだけか。つまんないね」
椅子に座って足をぶらぶらさせるリジェネ。今日も服はかわいいゴスロリ服で、頭だけティエリアと同じ髪飾りをしていた。

もう、ティエリアのせいで一週間も10歳の女の子のまんまだ。
ティエリアを独り占めできるからいいのだけど、流石にもとの体が恋しくなってきた。
何より、来週には雑誌の撮影が控えている。元に戻らないとまずい。最近何かとキャンセル続きで、いい加減メンバーたちが切れそうになっている。
もう、これ以上延ばすことはできない。

「あとは、これにドクター・モレノの・・・・・を入れるだけ」
「え、なに?」
「あ、ごめん、聞かないほうがいいから」
ティエリアは焦って、メモを背中に隠した。
「怪しいの」
ブスーっとした表情でふてくされるリジェネ。
「何々?」
ニールが、ティエリアの背中からメモを奪って上から材料を読み上げて、「うえ」だとか「おえ」だとか言っている。まぁ、そういう薬にはありがちなえぐい材料がほとんどで、リジェネも自分でいろんな実験を繰り返していたせいで、材料のえぐさには驚きもしない。
「なぁ、ティエリア。まじでいれるのか、これ」
「うん。だって、僕も嫌だったんだよ!でも、僕もリジェネみたいな体になったとき、飲まされたんだから!」
「だからって、なんでドクター・モレノの・・・・・・なんだ?」
「その・・・・・はなにさ?」
リジェネが、俊敏な動きで椅子から飛び降り、豹のような素早さで、ニールからメモを奪う。

「リジェネ、だめだよ見ては!」

「君がそんなに焦るなんて珍しいね。何々・・・・ドクター・モレノの腋毛、ドクター・モレノの脂汗、ドクター・モレノの髭、ドクター・モレノの唾液、ドクター・モレノの鼻毛、ドクター・モレノの耳垢、ドクター・モレノの鼻くそ・・・・」
まだ続いている。
「ドクター・モレノの・・・・・」
ガクガクブルブル。
どんどん顔色が蒼くなり泣き始めたリジェネだったが、そこで止まった。
「まじで?まじでこんなの入れるの!?」
ここまで、ドクター・モレノのこだわる必要があるのだろうか。いや、この解毒剤を開発したのはドクター・モレノなので、本人に聞くしかない。残念なことに、もう故人なので、聞きようがない。

「大丈夫、もう入れたから!」
「ちょっと、簡便してよ、ねぇ!」
リジェネは素早く逃げようとしたが、がしっと足をニールに掴まれた。
「離せ!このヘンタイ!離せ!」
「りじぇねぇぇ?やっぱり、元の体に戻りたいよなぁぁぁ?」
真っ黒な笑顔のニール。
「いやだ、そんなもの飲まない!僕はこのままでいい!!」
「そんなわけにもいかないだろう。なぁ、ティエリア」
「そうだね」
プ〜〜ン。
「おえっ」
ティエリアは、匂いだけで参ってしまっていた。
それを実際に飲んで戻れたというのだから、本当に人体は神秘だ。
いや、ドクター・モレノの体が神秘なのかもしれない。故人だけど。そもそも、材料が残っているのがすごい。髭とか、毛の類は分かるが、脂汗なんてどうやって保存するんだろうか。謎だ。

ぷ〜〜〜ん。
すごい匂いのするドス黒い液体が入った試験管。
「はい、あーん」
「○▽■▲×○!!!!」
声にならない悲鳴をあげるリジェネ。
「いい子だから、ほら、あ〜〜ん」
ニールは、ものっすごい黒い笑顔を浮かべて、無理やり試験管の中身をリジェネの口の中に押し込んだ。そう、流し込んだのではなく、押し込んだ。試験管ごと押し込んだのだ。

「ういぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!」

リジェネが、断末魔の悲鳴をあげる



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