「できた!」 「なんだ、材料混ぜるだけか。つまんないね」 椅子に座って足をぶらぶらさせるリジェネ。今日も服はかわいいゴスロリ服で、頭だけティエリアと同じ髪飾りをしていた。 もう、ティエリアのせいで一週間も10歳の女の子のまんまだ。 ティエリアを独り占めできるからいいのだけど、流石にもとの体が恋しくなってきた。 何より、来週には雑誌の撮影が控えている。元に戻らないとまずい。最近何かとキャンセル続きで、いい加減メンバーたちが切れそうになっている。 もう、これ以上延ばすことはできない。 「あとは、これにドクター・モレノの・・・・・を入れるだけ」 「え、なに?」 「あ、ごめん、聞かないほうがいいから」 ティエリアは焦って、メモを背中に隠した。 「怪しいの」 ブスーっとした表情でふてくされるリジェネ。 「何々?」 ニールが、ティエリアの背中からメモを奪って上から材料を読み上げて、「うえ」だとか「おえ」だとか言っている。まぁ、そういう薬にはありがちなえぐい材料がほとんどで、リジェネも自分でいろんな実験を繰り返していたせいで、材料のえぐさには驚きもしない。 「なぁ、ティエリア。まじでいれるのか、これ」 「うん。だって、僕も嫌だったんだよ!でも、僕もリジェネみたいな体になったとき、飲まされたんだから!」 「だからって、なんでドクター・モレノの・・・・・・なんだ?」 「その・・・・・はなにさ?」 リジェネが、俊敏な動きで椅子から飛び降り、豹のような素早さで、ニールからメモを奪う。 「リジェネ、だめだよ見ては!」 「君がそんなに焦るなんて珍しいね。何々・・・・ドクター・モレノの腋毛、ドクター・モレノの脂汗、ドクター・モレノの髭、ドクター・モレノの唾液、ドクター・モレノの鼻毛、ドクター・モレノの耳垢、ドクター・モレノの鼻くそ・・・・」 まだ続いている。 「ドクター・モレノの・・・・・」 ガクガクブルブル。 どんどん顔色が蒼くなり泣き始めたリジェネだったが、そこで止まった。 「まじで?まじでこんなの入れるの!?」 ここまで、ドクター・モレノのこだわる必要があるのだろうか。いや、この解毒剤を開発したのはドクター・モレノなので、本人に聞くしかない。残念なことに、もう故人なので、聞きようがない。 「大丈夫、もう入れたから!」 「ちょっと、簡便してよ、ねぇ!」 リジェネは素早く逃げようとしたが、がしっと足をニールに掴まれた。 「離せ!このヘンタイ!離せ!」 「りじぇねぇぇ?やっぱり、元の体に戻りたいよなぁぁぁ?」 真っ黒な笑顔のニール。 「いやだ、そんなもの飲まない!僕はこのままでいい!!」 「そんなわけにもいかないだろう。なぁ、ティエリア」 「そうだね」 プ〜〜ン。 「おえっ」 ティエリアは、匂いだけで参ってしまっていた。 それを実際に飲んで戻れたというのだから、本当に人体は神秘だ。 いや、ドクター・モレノの体が神秘なのかもしれない。故人だけど。そもそも、材料が残っているのがすごい。髭とか、毛の類は分かるが、脂汗なんてどうやって保存するんだろうか。謎だ。 ぷ〜〜〜ん。 すごい匂いのするドス黒い液体が入った試験管。 「はい、あーん」 「○▽■▲×○!!!!」 声にならない悲鳴をあげるリジェネ。 「いい子だから、ほら、あ〜〜ん」 ニールは、ものっすごい黒い笑顔を浮かべて、無理やり試験管の中身をリジェネの口の中に押し込んだ。そう、流し込んだのではなく、押し込んだ。試験管ごと押し込んだのだ。 「ういぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!!」 リジェネが、断末魔の悲鳴をあげる NEXT |