OORPG「契約」








「ゴッドヒール(神の癒し」
完全に呪文を詠唱破棄した。
カイザードラゴンは、傷が完全になおった。精神を蝕む瘴気さえ消えていく。
クリアになった世界。
不思議な瞳で、ドラゴンは人間の上位種であるティエリアを見つめる。
「グルルル・・・・そう、か。私は狂っていたのか」
ドラゴンが、人の言葉をしゃべりだした。
それはそうだろう、ドラゴンは人間などよりもはるかに知能の高い高次元生命体であるのだから。
「子供たちの、笑いあう声がきこえる。そうか。無事なのか・・・・でも、私には自力でドラゴン界に帰るだけの力がない。このまま、この世界で朽ちるしかないのか・・・・」
哀しそうに、空を見上げる。

「絶望・・・・・したけど、哀しい絶望」
ライルが、ドラゴンを見上げていた。
ニールもアレルヤも刹那も。哀しい顔になる。

「僕と、契約をしよう」
「契約を?」
「そう。召還獣になる契約を。契約されたものは、元いた世界に戻れる。心配することはない、君を呼び出して戦わせるような真似はしない」
「そうか・・・・ドラゴンと契約できるほどの人間がこの世にいるとは・・・・人の魔法は、すでに我らの魔法を凌駕しているのだな」
「ティエリア・アーデの名において命ずる。汝、カイザードラゴン、今この瞬間をもって、我が召還魔法の召還獣となれ」
「我が名は、カイザードラゴン、ロゼ。契約をここに執行する。
ティエリア・アーデ・・・・我らの長老、エンシェント・ドラゴンが夢中の恋相手・・・・契約者ではないか。なるほど。それならば、頷ける。この魔力・・・凄まじい。魔王にも匹敵する魔力・・・我も、必要があれば呼ぶがいい。汝の召還に答えようぞ。汝の召還獣・・・・NO375・・・他に374種もの契約が・・・・凄まじい。人の子とは思えぬ。ありがとう。生まれた世界に、我は戻る」

カイザードラゴンは光となり、きえた。
ドラゴンたちが住む、ドラゴン界に帰ったのだ。ドラゴン界は人間界と続いており、人間は禁止されているのに、未だにドラゴンの密猟を続けている。
密猟がおわらない限り、今回のような事件はまたおきるだろう。

「礼を、置いていく。我が鱗と、我が涙と、我が一族に伝わる魔法」
空から、声がした。
「よかった」
アレルヤは涙ぐんでいる。
「魔法書!」
ティエリアは、ニールを押しのけて、駆け出す。
「ドラゴンの鱗!」
刹那も、駆け出す。

「魔剣ソウルオブファイアよ、ドラゴンの鱗を食らい進化せよ!」
カッ。
蒼い光が満ちる。
魔剣や聖剣は進化する。成長するのだ。剣によっては、意志や魂が宿っている。
ソウルオブファイアは、魂が宿っている。
ドラゴンの鱗を食い、ソウルオブファイアは、ソウルオブドラゴンになった。

「なになに・・・うわ、全部古代語か。3つの呪文・・・・全部禁術に相当する破壊力。氷の魔法と、精神の魔法、それに・・・・・」
アレルヤが、古代語はいやというほど昔に習ったので、呪文書を読んで、絶句した。
「ちょっと、ティエリア。本気なの。最後の魔法、やばいよ。闇属性の魔法なんて、世界に存在しない魔法じゃないか」
「だから、いいんだろ?新しい。習得したら、魔法ギルドにおさめる。闇の魔法のはじまりだ。ここから、闇という属性の魔法の歴史がはじまる。ああ、ニール、こっちきて」
「んー?」
ニールは、することもなく、進化した刹那の剣を見せてもらっていたが、ティエリアに呼ばれて隣にくる。
ドラゴンの涙を、ティエリアはニールの銃にふりかけた。
すると、銃が進化した。
「精霊銃。風属性だけだったけど、ドラゴンの涙は全ての属性を持ってるから。属性魔法も使える」
「おー。すごい。かっこいい」
ニールが、とてもかっこいいデザインになった自分の銃を惚れ惚れとかざす。

「どうせ俺には何も・・・・絶望した
「ライル」
「絶望した」
ライルは絶望しながら絶望先生を読んでいた。
その絶望先生に、ティエリアは残りのドラゴンの涙をふりかける。
「おおお?」
絶望先生は進化した。
「魔法執行書。その中にある魔法を、言葉を読めば魔法になる」
「すげぇ」
「木の枝、まだ持ってるよね?」
「ああ」
「その木の枝で、なぞるんだよ。連鎖アイテムだね。700万ゴールドはするよ」
その値段に、ライルは目玉が飛び出しそうになった。そんな高価な装備品を装備したことがないからだ。

「何はともあれ、冒険ギルドに、詳細の報告をしよう」
刹那が立ち上がる。
皆、頷く。

LVもあがったし、刹那とアレルヤとライルは職業もマスターした。
報告した後の結果。

刹那(LV91)・・・・・ダークナイトとソードマスター
アレルヤ(LV70)・・・・・ハイプリースト
ニール(LV64)・・・・ドラゴンスナイパー
ライル(LV62)・・・・絶望先生U

「なんで俺だけ、まともな職業ないの?」
ライルの疑問は、青空に消えていった。