天使は無性だ。 性別というものを、その肉体に持っていない。 「刹那ー。一緒に風呂に入るか?」 その日の訓練を全て終えて、かいてしまった汗を流すためにロックオンは片手に洗面道具を持ちながら、風呂場の前で順番を待っているらしき刹那の頭を撫でた。 その手をさせるままにしておきながら、刹那は首を振る。 「あんたと一緒に風呂に入るのはもうこりごりだ。100を数えるまで湯船につからされる。のぼせてしまう。どこぞの爺じゃあるまいし、そんなのは一人でやっていろ」 「爺か。ははは。でも、健康のためには100まで湯船につかるのはいいことなんだぜ?」 「湯の温度がもっとぬるま湯なら可能だが。あの温度では、せいぜい50を数えるまでがやっとだ」 プトレマイオスに、風呂場は共通の1つしかない。正確には、男女用で2つになる。 個人の室内にはシャワーは備わっておらず、汗を流すためには嫌でも風呂場を使うしかない。 その日も、いつも通り4人で訓練をした。 武力介入が始まった今、訓練する時間があるのならばそれにこしたことはない。 戦場は本番だ。失敗はどんなことがあっても許されない。 プトレマイオスでは、まだ、平和ともとれる時間を仲間でもてあましている。 スメラギ氏の戦術プランをシュミレートする。 次の武力介入までは1週間をきっている。 次に攻める場所。そこに配置されているであろう敵の数。地形や敵の戦力など。 ヴェーダによって集められた情報を元に、4人のガンダムマイスターは、けれどもはや本当は平穏とは程遠い毎日を送っていた。 プトレマイオスに建築されは湯船は、日本の銭湯を真似たもので、西洋式の浅い湯船になれた者だと最初は戸惑うだろう。 個別のシャワールームの他にある大きな湯船につかるのことで、ガンダムマイスターは一日の疲れを癒す。 温泉のもとである入浴剤を入れれば、毎日違った湯を楽しめる。 ロックオンは、プトレマイオスの風呂にはまってしまっていた。 刹那やアレルヤと一緒に入ったりして、雑談をしながら湯を楽しむ。 仲間の背中を洗うのも好きだった。 一人に走りがちな刹那も、風呂場ではとても素直なよい子だ。アヒルのおもちゃをもちこんでやった時の喜びようといったら、精神的にまだまだ 未熟な子供なんだなと再認識させられる。 アレルヤは元からとても素直で、とても協調性のある子だった。24だから自分がリーダーシップをとらねばと、2年前からそう思っていたロックオンを 兄のように慕ってくれて、いろいろとサポートもしてくれる。 今では二十歳になり、風呂から上がって寝る前に、一緒に酒を飲むことだってできた。 ビール派のロックオンとは違い、アレルヤはカクテルなどの甘い果実酒やワインを好んだ。そういう点でスメラギ氏と共通しているのか、二人はたまに 酒を一緒に飲んでいるという。 ロックオンからすれば、スメラギ氏という魅力的な女性と一緒に酒が飲めるなんて、幸福そのものだろうというかんじだが、アレルヤの現実は愚痴につきあう仲なので、 あまり幸福とはいえないだろう。 とにかく、風呂はガンダムマイスター達の疲れを癒し、また協調性を高めてくれる重要な場所でもある。 唯一人、ティエリアを除いては。 彼は、気づけばいつの間にかシャワーを浴びている。 湯に浸かっているのかと聞けば、そんな必要はないと首を振る。 せっかくいろんな温泉がただで楽しめるのだ、ロックオンは一度でいいからティエリアに湯にちゃんと浸かって疲れを癒して欲しかった。 アレルヤは、間に合えば一緒に風呂に入ると言って、遅めの夕飯をとっている途中だ。 刹那は隣にいる。 風呂場からは、シャワーの音が聞こえる。 ティエリアは、自室にはいなかった。ヴェーダとリンクができるコンピューター制御室にいるものだと思っていたのだが、もしかして今入ってるいんじゃないだろうか? ロックオンに他意はなかった。 絶世の美貌であれ、所詮は同性である。その身体が例え折れそうに細くとも、例え性別があやふやに見えようとも、なんの心も抱かない。 協調性というものから一番欠けた少年と、もっと仲良くはなりたかったが。 風呂の温泉だって楽しんで欲しい。 「なぁ刹那、今入ってるのってティエリアかな?」 「さぁ?ティエリア・アーデがいつどこにいるのかなんて、俺は知らない」 いつも風呂を入る時間にしてはとても早めだった。 湯の用意ができて、ほぼすぐともいえる。 そんな時間に、真っ先に誰が入っているのだろうか。風呂場の湯が抜かれる時間は深夜2時。 誰もが就寝につく時間に入る人間などまず、事情がない限りいない。 同様に、風呂が開く時間は夕飯の時間と重なっている。夕飯をより先に風呂に入るのもありだが。 「まぁいいか。どうせ、いたとしても個室のシャワールームだろうし。刹那、俺先入ってくるな。お前さんもどうだ?」 「遠慮する」 「最新式のアヒルグッズがあるぜ。風呂あがりにはイチゴ牛乳おごってやるよ」 「一緒に入るか」 刹那の変貌ぶりが、見ていて楽しい。お子様をてなづけるのは、妹や弟がいたせいか、手馴れている。 カラカラと、戸を開ける。 脱衣所には、もしかしてと思った人物の服が、綺麗に折りたたまれていた。 少女ちっくなピンク色のカーディガンなんてものを着る人物は、プトレマイオスには唯一人だ。 「アヒル〜。あひるー。ぐわぐわ」 刹那は、ロックオンからもらったあひるグッズと睨めっこしている。いつもは無表情の顔が、心なしか緩んでいる。 ティエリアが入っているにも関わらず、どうせ個室のシャワールームだろうと決めつけたロックオンは、すでに腰にタオルを巻いただけの格好で、風呂の中に入っていった。 刹那のやつ、かわいいな。 そんなことを考えながら、まずは身体を洗うために個室のシャワールームに近づいた。 その時だった。 キイと、音をたててシャワールームが開いた。 シャワールームは3つしか備わっておわず、2番目のシャワールームを使うのがロックオンの日課だった。 いつも通り、2番目のシャワールームを使おうとする。 開いたシャワールームの湯煙で鈍った視界の中から、髪をふいている華奢な身体が現れた。 「…!!」 言葉を忘れ、ティエリアは目の前のロックオンにただ驚愕する。 そして、一人だからと安心して晒したままだった裸体に、すぐさま何かを巻きつけようとバスタオルに手を伸ばして、けれど叶わず、バスタオルは虚しくロックオンの目の前に 落ちる。 「きゃああああ!!!」 悲鳴をあげたのはロックオンのほうだった。 顔を真っ赤にしていた。いきなりの不意打ちだった。 「ロックオン・ストラトス。何を女のような悲鳴をあげている」 風呂場の外から刹那の声が聞こえる。 「お、お前、やっぱり女!?」 華奢で細いその裸体を、目にしてしまったのだ。 日ごろから、男性だとは分かっていても、本当は女性ではないのかと薄く疑っていたロックオンである。 目の前の肉体に、スメラギ氏のような豊かな谷間も、乳房もない。むしろツルペタだ。その美貌のせいで、胸があるように見えたが、全くの平らにも見える。 だが何より、男性がもっているはずの象徴がその肉体にはなかった。何もない。思っていたよりもずっとすべらかな曲線を描く体は、一見して男性ととれるものではなく女性ととれるものに近かった。 僅かであるが、細い腰はくびれていたし、何より男性がもつべき性器をもたぬその身体は、ロックオンから見れば女性にしか見えなかった。 「万死!!!」 目の前のティエリアが、顔から湯気を立ち上らせながら、落ちていたバスタオルを身体に巻きつける。 胸の上の位置までまきつけるその行動も、女性そのものだ。 「ティエリア!」 「万死に値する!この変態!!」 ビターン!! 鼻血を垂らしたロックオンにビンタをくれて、ティエリアは目頭に涙をためてロックオンとすれ違った。 泣きながら、風呂場を後にする。 「ティエリア・アーデ。ロックオン・ストラトスに何かされたのか」 あひるのおもちゃで遊んでいた刹那が、風呂場から脱衣所にきたティエリアに驚いた。 泣いている。 まるで、ゲームに負けた子供のように、とても悔しそうに。 その涙は、悲しみからくるものではないだろう。 「ヴェーダ、僕の秘密が!ああ、ヴェーダ、助けて」 一刻もはやく、この場を立ち去ってヴェーダとリンクしなければ。あの暗いコンピューター制御室にこもらなければ。 ティエリアの頭は、秘密を知られたショックと、ヴェーダにそのことを報告しなければならない責任感でいっぱいだった。 「ティエリア・アーデ!!」 乱暴に衣服をまとって出て行くその後姿を追いかけようにも、腰にタオルを巻いただけの刹那は脱衣所から出られない。 刹那は、アヒルをぐわぐわ鳴らしながら、風呂場で鼻血をたらし、右頬にビンタの後のあるロックオンを見下ろした。 「見損なったぞ、ロックオン・ストラトス。いくら彼が女性のように見えるからといって、変態行為をするとは。彼は、泣いて出て行ったぞ」 「違うって刹那!!あいつ女だったんだ!」 「何をばかなことを言っている。早速のぼせたか?寝言は寝てからいえ。彼は、れっきとした男性だ。データにも、そう記載されている」 「んなこといってもちんこついてなかったんだぞ!」 「ち○ことかいうな、この変態!」 アヒルのおもちゃも、石鹸も、ボディーソープから、シャンプー、リンスに至るまでロックオンに思い切り投げる。 その目は軽い侮蔑を含んでいた。 ロックオンは必死だった。 だが、どう説明しても刹那には信じてもらえなかった。結局、ただの変態とされて、刹那すら去っていった。 「なぁ、ライル。こんなとき、どうすればいいんだろうな?男の子が女の子だって知ったのに、変態扱いされて。うーん、やっぱ真実を本人の口から聞くべきだよなぁ。 女なら、女湯に入ればいいんだから。男湯に入ってたなんて、わざわざ襲ってくださいっていってるようなもんだ、危ない。ちゃんと注意して、今度から女湯に入るように促して、 それから裸みちゃったことに謝って、泣かしちゃったことも謝って………」 ねぇ、知ってる? 天使は無性だ。 性別というものを、その肉体に持っていない。 天使は、無性なんだよ。 とりあえず風呂から上がって、ごちゃごちゃになり気味な頭を整理して、どうやってティエリアに声をかけようかと思案していたロックオンの元を、当の本人が訪れた。 「ロックオン・ストラトス。話があります、一緒に僕の部屋に来てください」 有無を言わせない強さで、いつもの不機嫌そうな表情で。 けれどその美貌を目の当たりにするロックオン側は、困惑していた。ティエリアは彼ではなく、彼女であると確信してしまった今、どうやって接しようかと悩んでいた。 今まで通りに接するのも手の一つだが、ロックオンの中で、すでに女性を戦いから守るべきだという、自己勝手な想いは沸き始めていた。 ティエリアを、なるべく戦場に出さずにすむ方法なんてあるのだろうか? 「聞こえませんでしたか」 悶々と思案するロックオンは顔をあげて、ばつが悪そうにティエリアのきつい美貌に、無理やり笑いかけた。 「あ、ああ、行くよ。ちゃんと、説明してくれよ。女湯じゃなくって男湯にいたこととか」 ビンタの後はまだ消えていない。 刹那がアレルヤに、ロックオンは変態だったと報告しそうになっていたのを、ロックオンは寸でのところで止めた。止めなければ、彼はスメラギ氏にまで報告しそうな勢いだった。 ティエリアの後姿をついて歩くロックオンは複雑だった。 彼女は、なぜ性別を偽っているのだろうか。普通に、女性のガンダムマイスターでも問題はないじゃないか。確かに、男性と並べば劣ってしまう部分は出てくるだろう。守護の対象にされてしまうだろう。 けれど、それは自然のことであって、なにも男として偽ってまで生活する必要はないのではないだろうか。 プトレマイオスには女性陣だっているのだ。一緒に戦っているのだ。 シュン。 無機質な音をたてて、ティエリアの部屋の扉が開いた。 ティエリアはロックオンが部屋に入ったことを確認したうえで、ロックをかけた。 殺風景な部屋のベッドの上に、難しそうな本が数冊散乱していた。 きっと、その本を読みながら、ロックオンとどう対応すればいいのかと、ティエリアなりに考えたのだろう。 協調性に欠けた彼は、けれどわりと優しく、ロックオンに紅茶を渡してベッドに腰掛けるように促した。 ロックオンは、ギクシャクしながらも、紅茶をすする。 甘い香りと口に広がる味。 ティエリアは、割と甘党なのかもしれない。そういえば、よく飲んでいるゼリーもブドウやらバナナやメロンやら、果実の味のものばかりを好んで口にしている。 「ティエリア。その、ごめんな」 「何がですか」 「いや、裸みちゃったこととか、秘密しちゃったこととか…」 ロックオンの頬が赤くなった。忘れようとしても、ばっちり見てしまったのだ。 エロ本のように強烈な劣情を誘うものは皆無だったが、それでもやはり絶世の美貌があまりにも大きく響いていた。 11、12歳前後の、まだ女性としての特徴を持たぬ体。女性というには余りにも未熟すぎて、まだ成長途中であるのだと、ロックオンは思った。 2年前から、ティエリアの身長は変わらない。もう成長が止まってしまっているようで、同じように肉体の成長も途中で止まっているのかもしれない。 世の中の女性が全て、胸があるわけではないし、ホルモン治療などのせいで胸が全くない場合だって考えられる。普通に、胸がない場合だってありそうだ。 紅くなったロックオンにつられて、ティエリアまで赤面した。 「今回のことは、僕にも非がありました。最初から、隠さずにいるべきだという結論に至りました。LV10以上の僕に関する機密事項ですが、ヴェーダからは情報を隠さずに、 必要最低限の者に教えるべきだという回答がありました。それを参照に、あなたを含めたガンダムマイスターにのみ、今回の秘密を吐露することにしました」 「そんな大げさな。まぁ、いきなり男だったけど、実は女でしたーってなると、確かに余計な混乱を招くよな。でも、全員に知ってもらったほうが、生活に無理をすることもないし、男湯になんて無理に入る必要も ないし、やっぱ会議か何かの招集をかけて発表すべきじゃないのか?」 「そんな必要性は全くありません。ヴェーダも僕も、必要以上の情報の漏洩は危ないと思っています。それに、ロックオン・ストラトス。あなたは大きな間違いをしている」 ティエリアは、ヴェーダ以外に自分の秘密を教えるのが辛いのか、自分の肩を抱いていた。ふるふると、震えている。 そんな姿に、ロックオンは抱きしめたいと思った。 ティエリアだって辛いんだ。 秘密を抱えるくらいに、大きな謎をもっている。 「僕は、女ではありません」 「嘘!俺、確かに見たぜ!?ちんこついてなかったじゃんか!」 「な、なんてはしたないことを!!」 ティエリアが、ロックオンが紅茶のカップを落とすのも構わずに、手近にあった本の角で頭を思い切り殴った。 「いてーーーー!!」 「ちゃんと、最後まで静かに聞いて下さい!……僕は、女ではありません。けれど、男でもありません。僕の身体に、性別というものを特徴づけるものは皆無だ」 「へ?」 ロックオンが殴られた頭に手をやりながら、止まった。 「無性。それが、僕に与えられたもの。僕という生命体は、その血を後世に残さないためにも、性別というものがない。両性具有でもなく、 無性の中性体。それが、ティエリア・アーデの秘密」 落とされたカップを拾いながら、ティエリアは続けた。 「アレルヤと刹那にも、このことは話そうと思っていましたが、止めました。あなただけでも、すでに他言しそうだ。秘密を多く知られれば、僕の不利になる」 そういって、どこからともなく拳銃を取り出し、自分のこめかみに当てる。 「あまりの情報の漏洩は、僕の処分にも繋がります」 引き金をひくふりをする。 セーフティロックはかかったままだったし、銃弾も入っていなかったが、引き金が引き終わる前に、ロックオンの手によって遮られた。 「嘘じゃ、なさそうだよな。まじっぽい。秘密、知っちゃってごめんな。誰にも他言しない。誓うよ」 ティエリアの手から拳銃をさらって、今度はロックオンが自分のこめかみに拳銃を当てた。 そして、引き金をひいた。 「処分だなんて、そんな哀しいこと言いなさんな。俺たちは、この世界から戦争をなくすんだろ?」 まるで、それは共犯者。 同じ秘密を共有することで、目に見えない結び目ができた気がする。 「風呂入るのだって一苦労だよな。入ってる間、誰も入ってこないように俺が見はっててやるよ。だから、一度でいいから湯船に浸かってみな?きっと、入って良かったって思うぜ?」 「なんなんですか、それは」 「なーに、年長者の労わりってもんさ」 ティエリアの細い腰を引き寄せる。 殴られると思ったが、反抗はなかった。 抱きしめてやると、ティエリアからは甘い花の匂いがした。 涙を浮かべ、唇をかみ締めるティエリアの髪を指で何度もすいた。 「あなたはずるい。僕は、あなたのような強い男に生まれたかった。僕にあるのは、秘密とヴェーダだけだ」 「そんなことないさ。お前さんは今のままでも十分に強いさ。それに、ヴェーダだけじゃない。俺や刹那やアレルヤだって仲間だろ?」 「ヴェーダ以上の存在なんてありあえない」 「仲間は、きっとそれ以上の存在だぜ?」 「嘘だ」 「本当さ」 ロックオンは、いつの間にか涙を零し始めたティエリアに言い聞かせた。 「もしも、おれがお前の秘密を他にもらしたりしたら、この拳銃で、おれの心臓撃ってくれていいぜ?」 緑の瞳が優しく笑った。 「俺は裏切らない。仲間を捨てたりしない」 「-------」 ティエリアの言葉は、形になっていない。 「なぁティエリア。ヴェーダに頼るのは分かるけど、もっと前を向いて歩いて行こう。世界が、きっと変わる」 「ロックオン・ストラトス」 石榴の目は子供みたいに大きくみ開かれたままだ。 ヴェーダとリンクするときのように金色の輝きが混じりはじめ、髪をすくロックオンの手を握る。 「世界が、変わる?」 「そう、世界が、変わる。もっと、いろんなものを見て、体験すればいい。その時は、みんな一緒だ」 金色の瞳が、不思議なものを見るようにじっとロックオンから視線を外さない。 「その瞳。綺麗だな。紅い眼も綺麗だけど、金色の眼も神秘的だ」 「気味が悪くないんですか」 普通、目の色がかわる人間なんて存在しない。カラーコンラクトでもしていない限り、与えられた色彩は1つだけだ。 「いいや。ティエリアの色だろ?」 「-------」 言葉を返せない。 この年長者は、どこまで大人なんだ。 「俺も刹那もアレルヤも、お前のこと大好きなんだぜ?」 ねぇ、知ってる? 天使は無性だ。 性別というものを、その肉体に持っていない。 天使は、無性なんだよ。 ヴェーダ。 僕は、求めてもいいんだろうか。 絆を、信じてもいんだろうか。 ヴェーダ。どうか、答えてください。 唯一にして最大である僕の神。 僕は、ぬくもりを求めても? |