13話補完「狂気の微笑み」









「ガデッサで撃ち落してやる!」
ケリング・ケアは照準をあわせ、ガンダムに向けてガデッサを放った。
絶え間ない閃光の雨。
降るミサイル、銃弾、追撃されていく仲間の機体。
ダブルオーの機体が、ガデッサの光に消えた。
「やったか!?」
煌く蒼い機体。
まるで、母なる地球のような蒼と、そして白のコントラスト。
GN粒子が、天使の羽にように宇宙に舞い落ちる。
虚空を切る、ダブルオーライザーの唸りが、咲き乱れる。

「7機、8機、9機・・・・10機!」
一人遊軍を任された刹那は、アロウズの紅い機体を切り裂いていく。
爆破していく機体にも目もくれず、操縦桿を握り締めて、ヒリング・ケアの乗る新型に向かって、機体を転回させる。
GN粒子の光が満ちる。

「ガデッサを避けた!なんてスピードだ!くそ、負けるものかああああああ!」
ヒリング・ケアは、叫んだ。
自分は、愚かしい人間などではない。新人類なのだ。イノベーターなのだ。
イノベーターであるはずの自分が負けるはずがない。
たかが人間ごときに!

ヒリング・ケアは、高い声で叫ぶ。
「死ねえええ!」
ガデッサを片手に、刃を取り出してダブルオーの機体に迫る。
ギィィン!
刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。
「イノベーター。お前を、駆逐する」
ダブルオーの機体の刃が、ヒリングケアの機体の刃を切り裂いた。
ヒリング・ケアは、すぐに機体を転回させ、ダブルオーの刃の届かぬ範囲へと距離を保つ。
ガデッサのチャージ完了が終わり、ヒリング・ケアは宇宙を翔けた。
追撃しようとするダブルオーの機体を、アロウズの紅い機体が挟み撃ちする。
「邪魔だ!!」
刹那は叫んだ。
オーライザーの光が満ちる。
唸りをあげて、アロウズの紅い機体はGN粒子にまみれ、爆破する。
刹那の機体が、紅い機体を真っ二つに裂いた。

「ガデッサ、標準完了、発射!」
ガデッサの光を、ダブルオーの機体が裂いた。
「ば、ばかな!」
迫り来るダブルオーに向かって、ヒリング・ケアは装填した新たな刃で切りかかった。
ダブルオーが視界から消える。

ジジジジ・・・・・。 機体が悲鳴をあげた。
いきなり天からきた紅い破壊の光によって、虚をつかれたヒリング・ケアの機体は右腕を、ダブルオーの機体によって斬られ、ガデッサも破壊された。

「メメント・モリが!!」

爆破音。
衛星兵器、メメント・モリが破壊された。

ヒリング・ケアの機体に通信が入り、全軍撤退の命令が下された。
切り裂かれた右腕を庇う形で、機体が撤退命令空域へと離脱する。

「ガンダムめ!人間が!イノベーターであるこの私が負けるなんて!」

ヒリング・ケアは、操縦桿を両手で叩いた。

憎い。
あの、蒼と白のガンダムが憎い。
イノベーターである自分の能力を上回るというのか。
破壊したい。破壊、破壊、破壊。
憎い、憎い、憎い。

通信が入る。
「無事ですか」
「無事だ!うるさい!」
仲間の安否を気遣う通信を一方的に切った。

メメント・モリが破壊されることなどありえないはずだった。
CBの戦術予報士は、アロウズの戦術予報士と比べて、なんと危険で大胆な作戦をとるのだろうか。

ヒリング・ケアは顔をあげた。
笑う。
狂気の、微笑み。
「絶対に、あのガンダムを撃ち落してやる」