空っぽなあなた







ティエリアは、サークルの同人HPに中傷内容の書き込みがあったのを見て、長いそれをはじめから終わりまでよんで、丁寧にレスをした。
「可哀想な人だ」
本当に、哀れみさえかんじる。この人のことを想うと、その人の世界は「空っぽ」なんだろう。
じっと考えていると、相手に対して涙まで流れてきそうだ。
ネット世界でまともにマナーを守れない人間は、きっと現実世界でもどこか孤独で、友達がいても、そんなの見た目だけの関係で、本当に一人なんだろうな、と思った。
「あなたを愛しています」
そんなレスを打った。
相手は気味悪がるだろう。
だって、あまりにも「可哀想」だから。

空っぽなあなたへ。面白がってこんなことをしても、なんにもなりませんよ?それで相手が傷つくことで、あなたは喜びを感じてしまうようであれば、すでにあなたは人間として終わっています。
本当に、かわいそうだ。怒りなんて微塵も浮かばない。あなたというちっぽけな存在は、こんなことでしか、自分の存在をアピールできないのでしょうね。
もう少し、大人になりましょう。ネット世界でも、現実世界でも。もう少し、成長しましょう。精神的に成長できる可能性は、あなたにはたくさんあるから。だって、人に言葉をかけれる。だったら、そこからいろんな可能性が生れてくる。   ティエリエ・アーデより

「ティエリア?」
「ああ、ロックオン」
サークルHPをのぞいて、ロックオンが顔を歪めた。
「こんなやろう、ふざけるなって怒ればいいじゃないか」
ティエリアは首を横にふる。
「かわいそうな人なんですよ」
「ティエリアは、でも少しは傷ついただろう?」
「はい。相手の方のことを思うと、その人の「空っぽ」な世界を思って傷つきました」
「そこ、傷つくとこじゃないだろう」
「いいえ。私の言葉は、きっと間違ってはいません」
「そうだな」
ロックオンと手を握り合い、ティエリアは笑顔を浮かべてパソコンの電源を切ると、一緒に部屋の外に出てトレミーの廊下を歩き出す。

どうか、願わくば「あなた」にも愛しい人が見つかりますように。もしくは、すでにいるのであれば本当に愛されますように。

ティエリアはそう思った。
それ以降、その人物からの書き込みは嵐のように、酷い言葉であったけれど、同じ言葉を返した。
そして、いつかパッタリと途切れた。

ティエリアは、ため息をつく。
やっと、その人は「空っぽ」でなくなったのだと、安堵のため息を。