22話補完小説「創造主など、いらない」







「いよいよ始まるね」
リジェネが、螺旋階段をゆっくり降りてくる。
「人間を導くための戦いが」
「リジェネ。人間を導くのは君らの上位種であるこの私だ。君はしょせん僕に作られたに過ぎない。君の欲望にまみれた考えなど、脳量子波でつつぬけだ」

リジェネは、瞳を金色に変える。
リボンズの瞳も金色だ。支配の大きな見えない手が伸びてくる。
そう、アニュー・リターナを操った時のような、意志を支配する力。
リジェネは、数回瞬いた。
そして、喉の奥で笑った。

パン!
リボンズの頭を撃ち抜いた。
「僕は、僕だ」
瞳の色が、石榴色に戻る。

「君になどに、支配されるか。導くのは、このリジェネ・レジェッタだ」
高価な絨毯に広がる、血の染み。
即死であろうに、リボンズはまだ生きていた。
「何故だ。何故、僕の人形にならない・・・僕は君の創造主だ」
リジェネは、リボンズを蹴り上げる。
「創造主?何それ」
「リジェネ・・・・」
「リボンズ、愛していたよ。そう、いつも君に囁いていたね、僕は。リボンズ、僕は君が反吐が出るほど嫌いだった。愛してなんかいない。逆に憎んでいる。さようなら、リボンズ。大嫌いだったよ」
「リジェ・・・・」

リボンズは動かなくなった。
リジェネは、眼鏡を外し、石榴の瞳で動かなくなったリボンズをもう一度蹴り上げた。

「あはははははははは!!!」
ティエリアと同じ姿をしているが、堕天使だ。
小悪魔のようにリジェネは笑う。盛大に笑っているのに、それさえも美しく見える。
人智をこえた美貌は、性別も凌駕し、そしてただ美しい。

「僕が。誰でもない僕が、人間を導くんだ。創造主なんて、いらない」

リジェネは、銃を手から離した。
そして、何度も笑う。
リボンズの体をけりながら。

リジェネは、笑いながら、涙を零していた。

愛してなどいなかったのに。リボンズを。むしろ憎んでいたのに。
「さようなら、リボンズ。何故だろうね。涙が出るよ」

歪んでいても、愛されていた。きっと、リジェネはリボンズを愛していたのだろう。
憎悪と愛は似ている。

リジェネは、ゆっくりと螺旋階段を登っていった。