「刹那、これを」 フェルトに渡された、白い花の入ったカプセルを見る。 フェルトの目は、泣きそうだった。 大きな瞳は、そう、怯えているのだ。心のどこかで。 昔、フェルトは好きだった人を失った。 ロックオンという、かけがえのない存在を。 「どうか、刹那、無事で・・・・・」 フェルトは祈る。 刹那が、生き残って、未来を掴み取ってくれることを。 そして、またいつものように、無表情でトレミーに戻ってきてくれることを。 刹那はマリナとそんな関係じゃないと言っていたが、フェルトは知っている。刹那がマリナに、超小型パソコンを与えてたまに言葉のやりとりをしていることも。 刹那のことは好きだ。 恋愛感情の好きなのか、と聞かれると分からない、としか言いようがない。 ロックオンのように、優しく言葉を何度もかわして接したわけではない。 でも、今の刹那は昔のロックオンに何処か似ている。 だから、だろうか。なんとなく、惹かれるのだ。 彼の隣には、いつもティエリアの姿があったけれど。そう、愛しかったロックオンの隣にも、いつもティエリアの姿があった。 ティエリアに嫉妬したことはない。 フェルトは、刹那と同じくらいティエリアが好きだ。いや、ティエリアの方のことがもっと好きかもしれない。 長い孤独を一緒に味わい、たまに一緒に涙を流していた仲だ。 「ティエリアも、無事で。ロックオン。お願い、みんなを守って」 祈るしか、フェルトにはできない。 フェルトにガンダムはないから、戦うことはできない。 トレミーを守ることが、フェルトの仕事だ。 「信じているから。刹那、ティエリア」 フェルトは、トレミーを守るために、ミス・スメラギの元へと足を向けた。 |