「ん・・・・リジェネ?」 もそもそと、ベッドの中で動く気配がある。 しばらくの間、ニールとではなくリジェネと一緒のベッドで眠ることになったティエリアは、眠い目を擦って目を開ける。 「ああ、ごめんね。起こした?」 「眠い・・・」 ティエリアは大きな欠伸をする。 「もう12時だけど・・・・・」 「え。もう?でも・・・・だめだ、眠い」 「おとついも昨日も、寝たの朝をまわった8時頃でしょう?今日は仕事もないし、いいから夕方まで眠ってしまいなよ」 「うん。そうする・・・ああ、でもニールが・・・・」 ティエリアは、ジャボテンダー抱き枕を抱きしめて、リジェネに髪をすかれながら、眠い目をこすっているうちに、だんだん声が自然と小さくなってきた。 「ニールは、僕が構っといてやるから。毎日毎日いちゃこらしてるんだから。たまには放置でも大丈夫」 「ニールと・・・・ああだめだ、眠い。おやすみ・・・・」 「おやすみ、ティエリア」 リジェネは、眠ってしまった天使の額にキスを落とす。 「リジェネ。ティエリアは?」 ボス! 起こしにきたニールの顔に、リジェネは自分のジャボテンダー抱き枕を投げつけた。 エプロン姿で、昼食を作り終わって二人を呼びにきたニールの片手にはお玉。 見事にジャボテンダーを顔で受け止める。 「挨拶の仕方まで、同じか」 「ティエリアが眠ってるんだよ!大きな声出さないで!」 「またか。起こさないと」 毛布をはぎにかかるニールを、リジェネはジャボテンダーで殴りまくった。 「リジェネ?」 「僕の天使の眠りを邪魔しないで!」 「そんなこといっても、もう昼だ。いい加減起こさないと」 「だめったらだめ!」 ニールを引っ張る。 ニールもリジェネを引っ張る。 お互いによろけて、隣のベッドにニールがリジェネを押し倒す形になった。 「うわあああ!このけだものがあああ!!!」 リジェネが爪でニールを引っ掻いた。 リジェネとティエリアが組んでいるバンドは、ネット活動をメインとしているが、雑誌の撮影の依頼もOKしている。ティエリアなんて、よくゴシックロリータの服装をさせられている。みんな、女装なんて平気でする。ティエリアとリジェネと、他四人の中性的な顔立ちの少年六人組みのユニットだ。ビジュアル系を最初から意識していて、リジェネは髪を伸ばし始めた。爪も。ティエリアのように長く尖った、マニキュアが塗られた綺麗な白色の爪は、ティエリアのように整っている。 「不可抗力だって!」 ニールが、声をあげる。 「あれ。マニキュア、黒から白にかえたんだ?」 ニールに手首を握られる。 リジェネは永久少年だ。イノベイターとして、ティエリアの半身であるが、持っている力はニールには負ける。 「堕天貴公子は、いつでもお洒落なんだ。いつまでも同じ色でいるはずがない」 綺麗なネイルアートの施された爪は、ティエリアと一緒。 ティエリアには月と星のネイルアートがされているが、リジェネには翼のネイルアートが施されていた。 「ビジュアル系っての、いまいちよくわからない」 ニールが、リジェネの手首を離す。 「一度、君もされてみるか?化粧に、女物の衣装に・・・・」 「いい!絶対にいらない!」 「案外、似合うかもよ?」 「似合ってたまるか。それより、ティエリアを」 「ティエリアは、今日の朝8時に寝たの。このまま、何もないから夕方まで寝かせてやって」 リジェネが、ニールから離れてティエリアに愛しそうに毛布を重ねてやった。 「ティエリア、愛してるよ」 ニールがティエリアの頬にキスを落とすと、リジェネがその足を蹴り上げた。 「ティエリアに触るんじゃないよ、この」 間近に、エメラルドの瞳があった。 ニールは人間にしては綺麗で整った顔立ちをしている。中性的なものではなく、男性として魅力あふれたものであった。 リジェネは、思わず顔を紅くした。 「どうした?」 「なんでもないよ!」 ティエリアに時折脳量子波で触れているので、いかにティエリアがニールを愛しているのか知っている。 まるで、リジェネまでニールを愛しているような錯覚を引き起こす。 「この、バーカ!」 リジェネは、ジャボテンダーを投げつけた。 「いい天気だなぁ」 ニールはそれでポカポカ殴られながら、窓の外を見る。 「ティエリアと、一緒に散歩する約束だったんだけど。たまには・・・・リジェネ、一緒に散歩でもするか?」 「君って奴は、ティエリアだけじゃ足らずに僕まで口説く気か!」 「はははは。家族だろ。ほら、出かけるぞ」 「まちなよ!ついていくなんていってないだろ!」 「だったら、何で上着羽織ってるの?」 「こ、これは。ち、違うぞ、僕は」 「あははは。リジェネもかわいいな。ティエリアには負けるけど」 ニールは、眠ったティエリアを撫でる。 「ティエリア、いってきます」 「・・・・・・・・・・・・・・いってきます」 ニールとリジェネは並んで散歩に出かける。 たまには、こんなコンビもいいかもしれないと、互いに思いながら。 |