禁忌でもいいから「新しい愛を始めよう」







「私は・・・・私こそ、ニールの影ばかりおって、どうしようもない人間だ。それでも、愛してくれますか?」
「勿論だ」
ライルは、両手を広げてから、ゆっくりティエリアを包み込む。
「私は、あなたと暮らし始めて・・・数ヶ月したときにきづいたのです。あなたを、愛してしまったのだと」
「ごめんな。ずっと、気づかないふりしてた」
「いいえ。私も、また誰かを愛するのが怖かった。失う気がして」

二人は、ベッドに座りながら語り合う。
「もう、失わないから。新しく、始めよう?」
「失わない。新しく、始めますか?」

二人は、一緒にベッドに転がる。
猫がじゃれあうみたいに。

そうしたい気分だった。

愛し合うといっても、今まで「愛している」という言葉を避けてきただけで、あまり生活に変わりはないかもしれない。あるとすれば、ライルがふらふらして朝帰りしたり、酒や煙草を頻繁に呑んだりしたりしなくなって、働き出し、二人でよく散歩に出かけていたのがもっと遠出になったり。一緒に旅だって、今まで何度もした。

友達以上、恋人未満。

そこから、変わっていく。

人は、変わっていくから。
愛は、どんなときに訪れるのか分からない。

「僕は、ニールのことがどうしても忘れられません。それでもよいのですか?」
「それは、俺だって同じだ。アニューのことがどうしても忘れられない。でも、それでも、さ。新しく、愛を始めてももう誰にも責められないと思う。お互い、孤独を何年も味わってきたんだ。幸せになる道をそろそろ探したって、
いいと思う」
「幸せになる、道ですか」

「とりあえず、さ。ずっと一緒に暮らしてきたし、付き合って大丈夫なようなら・・・年末に、籍いれないか?」
「あなたと、家族になれるのですか?」
「ああ。式は挙げたいか?」
「いいえ。ただ、あなたの傍にいられれば、それでよいです。ライル」
「俺も。ただ、お前の傍にいられればそれでいいよ。ティエリア」

二人を、じっと窓の外から、太い木の幹に座った少女の天使が見つめ、そして微笑んでいた。
少女は、二人の愛を確かめ、自分が示した道を歩んでいく者たちに祝福を送る。
そして、音もなくこの世界から消えてしまった。
違う次元で、少女の天使は三日間だけニールを生き返らせるという奇跡をティエリアに与えた。その、最終の、ニールの魂を脳死した少年に宿らせるという大仕事が待っている。
それをすると、セラヴィという天使はもう存在を保てなくなる。でも、そうしてもいいと、そうするだけの価値があると二人の愛を見て思ったから。

人間の愛は、神の愛のように無限である。

愛し、愛され。

さぁ、歩んでいこう。
新しい愛を、初めから。

                禁忌でもいいから The End
                                          presented by Masaya Touha
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あべし。とりあえず、新しいアンケで、新しいシリアス長編に票が入っていたので書いてみた。
内容としては、長編で一番人気の「それが、たとえ禁忌でも」の番外編にあたるような長編。
長編っていってもなんか短いですけど。最後はどうしようかなぁと思ったんですけどね。
ライアニュ長編を書こうと思って書き始めて。ティエリアとライルは一緒に住んでいると。
ライルはふらふらしていてどうしようもない・・・・。刹ティエで終わらそうかと思ったんですけどね。
なんと珍しい、ライティエで終わりました。いっぱい長編がニルティエなので、1作くらいそんな作品があってもいいかなと。
天使のセラヴィとか、「それが、たとえ禁忌でも」とリンクしてますけど。
まぁ、友達以上恋人未満からはじまる、愛。
そんなのもありで。