エメラルドの彼方「消えないで」







「ロックオン!」
ティエリアが、ようやくベッドから解放されたのは、トレミーが大破してもう3ヶ月が経った頃のことだった。
フェルトも大分元気を取り戻し、生き残ったクルーたとち一緒になって頑張っている。
ティエリアの部屋は、ロックオンと同室だった。
そう、ロックオンからの希望だった。

ロックオンとティエリアは、以前のようになんの変わりもなく恋人同士として愛し合った。
ティエリアは笑顔を取り戻した。
誰よりも愛しい人が傍にいるのだ。

「ロックオン。もう、僕を置いていくような真似はしないでくださいね」
ティエリアは、同じ部屋のベッドで、ロックオンの胸に縋りついた。
「ああ。もう絶対にしない」
「約束です」
「約束だ」
二人は、軽く口付けをかわす。

「一緒に、どうか最後まで歩いていってください。あなたの隣にいたいです」
「ああ。一緒に歩いていこう」
ロックオンは嘘はつかない。ティエリアは約束することで、さらにロックオンが生きているのだと実感した。

それからあっという間に、半年の季節が流れた。
新しいガンダムはほぼ完成し、トレミーも完成した。
地球にいるCBのメンバーも、頻繁に宇宙ステーションにやってきては開発に携わった。
衛星の影に隠されたこの宇宙ステーションなら、そうそう敵に気づかれることはない。

「よお、お前さんたち。これがセラヴィとケルヴィムだ」
イアンに案内されて、新しく開発されたガンダムを紹介される。
実際の起動訓練などは、これから生活の中に入ってくるだろう。
ロックオンの手からハロが飛び出していく。
「ケルヴィム、ケルヴィム」
「GNフィールドははれるか、イアン?」
「勿論だ。隠し要素のトライアルシステムを作動させるガンダムも組み込んである」
ティエリアが、満足そうにセラヴィの機体を見上げる。
「みんなで、がんばってもう一度CBを立て直そう」
「ああ、そうだな」
ロックオンが、ティエリアの頭を撫でる。

そのまま、生活区域にさしかかったとき、ロックオンが切り出した。
「今度のシャトルで、一度地球に降りようと思う。ティエリア、一緒に来ないか」
「地上へ?」
「そうだ。アイルランドの実家に一度戻ろうと思うんだ。一緒にこい」
「いいの、ですか?」
「当たり前だろう。それに、前からの約束だった。お前に、故郷のアイルランドを見せるって」
「覚えていてくれたんですね。僕は、それだけで満足です・・・・」

次の週、ティエリアとロックオンは地球いきのシャトルに乗って、そのまま地球に降りた。
そのままアイルランドへと向かう。
「ここが、俺の生まれた家」
ティエリアは、泣きだした。
「どうした?」
「あなたを、愛しています」
一匹のエメラルド色の蝶が、ヒラヒラとロックオンの周りを舞っていた。
「俺も愛しているよ」
「愛している・・・・・だから・・・・・」
「大丈夫。傍にいるから。な?」
優しく抱きしめられて、涙を拭われる。
エメラルド色の蝶は、そのまま花に誘われてどこかに消えてしまった。
「約束してください。消えないで」
「消えたりしないから」
そのまま、アイルランドに2週間ほど滞在した。


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