エメラルドの彼方「エメラルドの彼方」







「刹那、お帰り。成長したな」
「お前は変わらないな」
見違えるほどに成長した刹那に、ティエリアは手を差し出す。
刹那は、力強く握り返してくれた。

「刹那。歩こう、一緒に。皆と一緒に」
「ああ」

その日の夜、刹那がティエリアの部屋を訪れた。何かと驚くティエリアに、刹那は手を開いた。
「全部、聞いた。ロックオンが、お前を支えていたんだな」
刹那の手の中から、一匹のエメラルド色の蝶がヒラヒラと舞って、光となって消えた。
「約束する。ロックオンの分まで、お前を守ると」
「刹那」
ティエリアは、泣きそうになった。
「俺がいるから。好きなだけ泣け」
「刹那。刹那・・・・・ロックオンが・・・」
ティエリアは、刹那の胸でロックオンのことを話しながら泣いた。


エメラルドの彼方。
光の河岸で、隻眼のエメラルドの瞳をした青年は微笑した。
そして、刹那に託す。
愛しい、愛しい、守りきれなかった存在を。
どうか、守ってやってくれと。
その人は、エメラルドの彼方で、全て蝶となり、天に昇っていった。