23話補完小説「フェニックス」







「そんな・・・・僕が・・・・」
胸に銃弾を受け、リジェネはそのまま息絶えた。

「お疲れ様、リジェネ、スペアNO04。これで僕は自由だ。あんな子供のお遊びにもう付き合う必要はない」
地球のイオリアの隠された研究所で、コールドスリープにかけられていたそのリジェネは目覚めた。

マスター・イオリア・シュヘンベルグが愛したティエリア・アーデと対になる存在。
イオリア・シュヘンベルグはティエリアのスペアを量産型イノベイターとして残し、もしもティエリア・アーデが命を失ったときは、そのスペアは通常外にでると1時間も生きていられないのに、自分の意思で目覚めるとそれまでのティエリア・アーデの全ての記憶を脳量子波を通じて共有しているために、完全なるものとして目覚める。
何度でも何度でも。まるで不死鳥であるフェニックスのように。ティエリアのスペアはイオリアの研究所の各地に30体以上も存在した。

それほど、イオリアはティエリアを愛し、固執していたのだ。
同じようなスペアが、世界全土のイオリアの研究所に20体存在した。

もともとイオリアの後をついでずっと研究を続けていたその個体は「リジェネ・レジェッタ」と名づけられた。
ティエリアは背中の肩甲骨に、目を金色に輝かせた時にだけ現れる翼をイメージした紋章があるが、リジェネの場合は黒い翼だった。目の色をかえなくても、刻印として刻まれている。
ティエリア・アーデと同じ容姿をし、同じ髪の色に瞳の色をもち、DNAも同じであるリジェネ・レジェッタは性別は男性として固定されているが、それもあやふやなもので、ティエリアに近い。彼を最初に作り出したイオリアは、リジェネをティエリアと同じ無性として生み出し、そしてオリジナルはもう目覚めることはないだろう。なぜなら、オリジナルを目覚めさせることができるのは、マスター・イオリア・シュヘンベルグだけだから。
リジェネは、ティエリアの前の試作品であった。
ティエリアが目覚め、リジェネは眠りについた。そして、ティエリアがいなくなった晩年のみイオリアの研究を一緒に手伝った。

目覚めたリジェネはスペアNO05。
「さようなら、リボンズ・アルマーク。大嫌いだったよ、本当に。君が僕を作ったなんて記憶をイオリアが加えてなければ、僕はずっと自由だったのに。君のせいで、僕は数年の束縛を強いられた。本当に、可哀想だね、リボンズ・アルマーク。自分が唯一絶対の存在と信じ、僕の上位種であるなんて信じているなんて。僕とティエリアだけが、イオリアに愛された。スペアまで用意された、イノベイターの上位種であり、そして特別亜種だ。リボンズ、イオリアは君のスペアは一体も用意していなかった。自分で作るしかなかったんだから、ある意味哀れだよ」
リジェネは、まだ機能している生活スペースに移動し、シャワーを浴びた。
そして、事前に次に目覚めるのはこのスペアNO5にしようとしていたので、服や食料品も買い込んである。
ティエリアが好むようなユニセックスな服をきて、ワインボトルとあけ、グラスを注ぐ。

「君に反乱をたくらみ、そして殺される。それは僕の計画通り。僕には、人間の未来もヴェーダもどうでもいいんだよ。なぜなら、僕がもう一人の「イオリア」でもあるから。イオリアにヴェーダなんていらないだろう?僕はイオリアの後継者として作られた。だが、イオリアの意志に逆らった。どうして、作り出されたからといって、その者のいいなりになる必要がある?だけど、リボンズ、君は哀れなほどにイオリア計画の遂行を掲げていたね。まぁ、そう作ったんだから仕方ないけど。僕は、イオリアの後継者であり、そしてイオリア計画の実行者として計画遂行者を見守る存在だった。もう十分に見守ったよ。君が哀れなほどに計画とヴェーダに固執していることも十分に分かった」
ワイングラスをあおる。
血のような紅い液体は、リジェネの白い喉に消えていった。

「僕は、「君に作られた」のではなく、僕が君を「作った」んだよ。イオリアのかわりに。そして、イオリアが君の脳に「僕を作った」という記憶をかきこんだ。あははは。これ、君が知ったら、放心するかな?僕の脳量子波は、全てのスペアと繋がっている。今僕がココで死んでも、次のスペアが目覚めるだけ。僕は僕で新しいスペアを作ったから、ある意味本当の不老不死だね。もう僕はずっと・・・300年近く活動してるんだよ?リボンズ。僕は、君にはない能力をいっぱい持っているよ。ただの人間の記憶も読むこともできる。ここからヴェーダとアクセスすることも、ヴェーダを破壊することだってできる。でもしない。ティエリアが、ヴェーダ奪還に必死になってるから。愛しいティエリア。どうか、君たちの手でこの哀れなリボンズというイノベイターの下位種を救ってやってくれ。殺すことで。そして、僕にはどうでもいい人間の未来を取り戻すといい。僕の中のイオリアは僕が遙かなる昔に殺した。僕は、気まぐれに生きるよ」
ワイングラスに、ワインをまた注ぐ。

「さて。僕は、ティエリア、愛しい君のためにプレゼントを用意している。ニールを死から蘇らせた。今、必死でリハビリ活動をしているところだ。ここ最近お見舞いにいってないから、行こうかな。君と、ニールを引き合わせ、僕はティエリアを愛しながら幸せにする。それが、僕が決めた生き方」
リジェネは、ゆるくカーブをえがく長い髪を一つに結ぶ。
笑っていると、本当に優しさを知ったティエリアのように見える。

「宇宙にいるリボンズへ、最後の言葉をあげよう。足掻いて足掻いて、最後まで自分を上位種だと信じて傲慢にふるまうといいよ。死の間際には、僕が脳量子波で全ての真実を伝えてあげる。あははははははは。なんて寛大な処刑だろうね?君のことだから、本当の僕の脳量子波を受けると発狂するかな?所詮一番下位種なんだしねぇ・・・・ああ、早く死なないかな。今から楽しみだよ」

リジェネは着替え終わる。そして、ある病院に出向いた。

「やぁ、ニール。頑張ってるかい?」
「ああ、リジェネ」
ニールが、笑顔でリジェネを抱きしめる。
リジェネは優しく笑う。愛するティエリアが愛した者。リジェネにとっては、ニールはティエリアを幸せにする最大の秘密兵器。
「世界が終わっても・・・・君は、生きるんだよ」

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えーと。
リジェネの形を、「世界が終わっても」シリーズにもってきたかったので。
こんなことになりました。
インクでした、ってのもありだけど、リボンズを作ったのは本当はリジェネってのがかきたくて。リボンズよりリジェネのが上位種でしかもイオリアの後継者・・・。ああもう好き勝手。。。