眠れ







「はぁ〜」
フェルトは、トレミーの廊下を歩きながらぼけっとしていた。
最近、ろくに眠れない。体もだるい。
ドクターは精神的な疲れだろうといって、睡眠薬を処方してくれたけれど、勇気がないので飲むことができない。飲んでくせになり、睡眠薬がないと寝れなくなるとか、そんなの嫌だった。
原因はなんとなく分かる。刹那とか刹那とか刹那とか。
気になって仕方ない。
最近忙しいのか、なかなか口を聞いてくれないのだ。怒っているのだろうか?
でも、心当たりはない。

「刹那・・・・」
「どうした?」
「きゃあ」
フェルトは驚いた。刹那が、目の前にたっていたのだ。
「な、なんでもないの!」
「ドクターから聞いた。睡眠不足だそうだな」
「えっと」

刹那は、無言でフェルトを抱き上げた。
「せ、刹那?」
そのまま、刹那は自分の部屋にフェルトを入れると、優しく寝台に下ろす。
「眠るといい。眠るまで、ついている」
刹那は、ティエリア用の軽い睡眠導入剤を噛み砕き、ティエリアを相手にしているような調子でフェルトに口付け、ペットボトルの水と一緒に飲ませた。
フェルトは真っ赤になっていた。

「せ、刹那・・・・」
「いいから、安心して眠れ」
優しく、大きな手がフェルトの頭を撫でる。
フェルトは、その手を握り締めて、涙を零す。
言ってはいけないのに、こんなに優しくされると言ってしまう。
「刹那。好き」
「俺もフェルトが好きだ。眠れ」

刹那に抱きしめられたまま、フェルトはいつの間にか眠った。
1時間後、刹那の姿が見えないので探しにきたティエリアが見たものは、フェルトを抱きしめて一緒に眠るフェルトと刹那の姿だった。
「ずるい。フェルトを独り占めするなんてずるい」
ティエリアは、フェルトの額にキスを落とすと、ポレロを毛布の上から被せてやった。
それから、流石にベッドはぎゅうぎゅうなので、ソファーベッドに転がって眠るティエリアであった。