「ロックオン!!」 ティエリアは、寝起きのロックオンの頭をジャボテンダーで30回殴った。 ロックオンは殴られながら回数を数えていた。 「はいはい、こんな朝からどうした?」 「ジャボテンダーさんの目がない!」 「は?」 ティエリアはジャボテンダーをロックオンに差し出す。すると、確かに黒いボタンの瞳が一つしかなかった。 「うわあああ、探せ、探せ!」 ロックオンはとたんに焦りだした。 まだ、ティエリアは半分寝ぼけている。もしも完全に目覚めて、片目がないと知ったら、どうなることか。 「ドクター・モレノに再生治療を施してくれるように頼んだのだが、断られた」 「あああああ」 すでに、ティエリアはやらかしていた。 首とかに思いっきり、昨日のキスマークが残っている。しかも、着ているのはロックオンのワイシャツと下着だけというこれまたベタな格好で、すでにティエリアはトレミーの廊下を歩いたのだ。 「ああああああ」 ロックオンは頭を抱えた。 やばい、俺、やばい、俺。 またミス・スメラギに呼び出される。 「ティエリア、医務室にいくときそのかっこのままでいったのか?」 「はい。それが何か?」 「ああああああ」 「ミス・スメラギとすれ違いました」 「あああああああ」 「刹那ともすれ違った。あの変態がっていってた」 「あああああああああああ」 「あ、ジャボテンダーさんの瞳発見」 ベッド周辺を捜索していたティエリアは、ジャボテンダーさんのつぶらな黒いボタンの瞳を発見した。 「ぬって、くれますよね?」 「ああ」 ロックオンは、苦笑してジャボテンダーを受け取ると、針と糸を取り出して器用に縫ってくれた。 「ありがとう、ロックオン」 「あんまし、乱暴に扱うなよ?」 「はい」 とかいいつつ、ぶんとジャボテンダーをふりあげ、べしべしとロックオンを殴るティエリア。 ちなみに、その日会議の後、ミス・スメラギとドクター・モレノに呼び出された。 怒られると思っていたが、怒られなかった。 ただ、二人とも恋人同士であるなら仕方ないと黙認するようであった。ティエリアが、そう頼んだそうなのだ。一方的に怒られるロックオンを見て、心が痛んだのだろう。 「あの子にね、泣かれると凄いつらいの。もう、好きにしてちょうだい。でも、限度は守ってね」 「ティエリアが無性だということを忘れてはいかんぞ。あくまで女性ではない。夜のことに関してはまぁティエリアが許しているのだから、お互いの気持ちの上だろうが、あの子の器官は女性のようなそれに似ていて、そうではない。最近の診察で、少しづつ器官が変わっているのが分かった。多分、行為を受け入れるために無性でありながら女性になろうとしているのだろう。だが、ティエリアは女性にはなれない。そのことを忘れないように」 「はい」 ロックオンは真剣だった。 ティエリアが女性でないことは知っている。それでも愛してしまったのだ。 もう、戻れない。 ブリーフィングルームから出たロックオンに、ジャボテンダーが当たった。 「遅いです。一緒に朝食とる約束してたのに」 「いや、こっちもしぼられてな」 「後悔していますか。僕とこんな関係になったこと」 「いいや」 ロックオンは、ティエリアを抱きかかえると、ティエリアの部屋に向かう。 「ロックオン?」 「どうせ昼迄何もないんだ。寝よう」 「寝るのは好きです」 ジャボテンダーを振り回しながら、ティエリアは石榴の瞳で笑うのだった。 |