いつも通り、ミス・スメラギの指示に従って動いていたフェルトを、刹那が呼び止めた。 「フェルト」 「どうしたの、刹那?」 刹那は、いきなりフェルトを横抱きした。 「きゃあ!」 「フェルトもティエリアと同じタイプだな。働きすぎだ。休め」 「そういえば、ティエリアは?」 「問答無用で拉致した。微熱を出していた」 「大変・・・・私のことより、ティエリアを」 「もう、解熱剤を飲ませて俺の部屋のベッドで寝かせてある」 「そう・・・」 フェルトは安心したようだった。 ドクターの変わりもすることのあるフェルトは、イノベイターであるティエリアの体調の変化に敏感だ。ただの熱でも何が起こるかわからないからだ。実際に、ただの風邪が生命維持ラインギリギリの高熱にまであがり、生死の境をさまよったことが過去に一度あった。 それから、敏感になった。 「ティエリアはよく眠っている。熱も下がっている。次はフェルトの番だ」 「私は大丈夫」 「ダメだ」 そのまま、フェルトは自室に戻され、ベッドに寝かされた。 「朝から何も食べていないだろう。俺が作った。食べれるか?」 フェルトの部屋の机の上には、まだ暖かな粥が乗せられていた。 「刹那・・・・」 「やっぱり。フェルトも、少し熱があるな」 額と額をコツンとあわせる刹那。 「こんなの、熱のうちに入らないわ」 「今年の風邪は微熱だからと甘くみると、あとでえらいめにあう。高熱が出て、何日も伏せることになる」 「そ、それは大変!」 フェルトも、やっと自覚したようだった。 トレミーを操縦するのは、フェルト以外にいない。 フェルトの存在はとても重要なのだ。 「フェルト。頼むから、もっと俺を頼ってくれ。ティエリアのように」 「だって・・・・刹那は、ティエリアのことを」 「愛している。だが、俺は傲慢だからフェルトのことも好きなんだ」 「刹那」 フェルトは大人しく、刹那が作ってくれた粥を食べてから解熱剤を飲んでベッドに横になった。 ずっと、刹那は傍にいてくれた。 「ティエリアの傍にはいなくていいの?」 「今は、フェルトの傍にいたい」 「・・・・・・愛しているわ、刹那」 「フェルト・・・・」 フェルトは、毛布を頭まで被ると、そのまま眠ってしまった。 「俺は、愛を囁けない。ティエリアに、すでに愛していると言ってしまったから。でも、フェルト、愛している。愛していると言えなくてすまない・・・」 刹那は、哀しそうな瞳でずっとフェルトの傍にいた。 「僕のことは、気にしなくてもいいのに」 「ティエリア!まだ寝ていろ!」 フェルトの部屋に入ってきたティエリアは、しっかりと刹那の言葉を聞いていた。 「僕は一人で平気だ。フェルトを愛すればいい」 「それは、できない」 「なぜ」 「俺がいなくなれば、ティエリアは一人になるから」 「だから、一人は平気だといっている」 「そしてまた、一人で泣くのか?」 「・・・・・・・・・」 「ティエリアのことは、はっきりと愛しているといえる。守りたい。フェルトも守る」 「君は、欲張りだな」 「欲しいものは手に入れる。守るものは守り抜く」 ティエリアは、フェルトの部屋のソファベッドに横になった。 「君が・・・・目覚めたら、傍にいなくて・・・・怖かった。いつもは傍にいるのにいなかったから・・・」 「すまない。今度からは、ちゃんと傍にいる。フェルトの傍にいくときは、ちゃんと告げていく」 「僕はフェルトも好きだ。君と同じくらいに。君がフェルトを選ぶなら、それでも構わない」 「俺は・・・・」 刹那は、しばらく沈黙していた。 「二人とも選ぶ。傲慢だから」 すでに、ティエリアは眠ってしまい、答えは返ってこなかった。 ----------------------------------------- うちのねぇ。刹フェルは純粋な刹フェルじゃないんですよねぇ。2期は基本が刹ティエなので。刹ティエ刹フェル。刹那は二人とも選ぶ。傲慢でも、いいじゃないか。 |