「僕は・・・・ヴェーダと一体となり、人の未来を見守ろう」 ティエリアの意識体の傍には、ロックオンの魂が寄り添っている。 「俺も、一緒に見守っていいか?」 「勿論です。でも、途方もない長い時間がかかります」 「構わないさ」 二人は、光の河岸でお互いを抱きしめあい、キスをした。 「あなたに触れることができる。これほどの幸せはない」 「ティエリア」 「僕は、眠りにつきます。長い長い眠りに。人が異種と対話する、その時までヴェーダと一緒に。・・・・意識体である僕を許してください。イノベイドとしての意識体は分化できる。もう一人の僕はスペアの肉体を得て、地球にいます」 「一緒にいられるだけで、俺は幸せだよ。お前を置いていった俺を許してくれ」 「それは、言わないで」 光の河岸で、ティエリアはロックオンの唇を唇で塞ぐ。 「一緒に、眠りにつきましょう。時折おきては、また眠りについて。まどろむ夢を見ましょう」 ティエリアの意識体が触れた魂は、同じく意識体として形となる。 それが、イノベイドの力。 「人は、異種とすでに遭遇している。そう、聖母マリアがいい例だ。イエス・キリストは異種と人とのハーフだ」 「異種って、天使なんだな」 「天使、と人が呼んでいるだけで。僕はエンジェロイドと名づけました。天使のイメージは拭えませんから」 「エンジェロイドか」 「異種は、人に似せ翼をもった姿で現れる高次元生命体。遙か古来より人と密接に関わってきました。これからの未来は、天使・・・・・いや、エンジェロイドたちとの接触により、人はまた変わっていくでしょう」 ティエリアは、ロックオンと一緒に長い眠りについた。 遙かエメラルドの彼方で。 二人が眠るベッドの周りを、エメラルド色の蝶が絶えず舞っている。 二人は、とても幸せそうだった。 そう、恋人としての存在を互いに取り戻したのだ。 そこに、肉体はいらない。 イノベイドの力。それは、小さな奇跡を生む。 |