25話補完小説「人の未来を見守る者」







「僕は・・・・ヴェーダと一体となり、人の未来を見守ろう」
ティエリアの意識体の傍には、ロックオンの魂が寄り添っている。
「俺も、一緒に見守っていいか?」
「勿論です。でも、途方もない長い時間がかかります」
「構わないさ」

二人は、光の河岸でお互いを抱きしめあい、キスをした。
「あなたに触れることができる。これほどの幸せはない」
「ティエリア」

「僕は、眠りにつきます。長い長い眠りに。人が異種と対話する、その時までヴェーダと一緒に。・・・・意識体である僕を許してください。イノベイドとしての意識体は分化できる。もう一人の僕はスペアの肉体を得て、地球にいます」
「一緒にいられるだけで、俺は幸せだよ。お前を置いていった俺を許してくれ」
「それは、言わないで」
光の河岸で、ティエリアはロックオンの唇を唇で塞ぐ。

「一緒に、眠りにつきましょう。時折おきては、また眠りについて。まどろむ夢を見ましょう」
ティエリアの意識体が触れた魂は、同じく意識体として形となる。
それが、イノベイドの力。
「人は、異種とすでに遭遇している。そう、聖母マリアがいい例だ。イエス・キリストは異種と人とのハーフだ」
「異種って、天使なんだな」
「天使、と人が呼んでいるだけで。僕はエンジェロイドと名づけました。天使のイメージは拭えませんから」
「エンジェロイドか」
「異種は、人に似せ翼をもった姿で現れる高次元生命体。遙か古来より人と密接に関わってきました。これからの未来は、天使・・・・・いや、エンジェロイドたちとの接触により、人はまた変わっていくでしょう」

ティエリアは、ロックオンと一緒に長い眠りについた。
遙かエメラルドの彼方で。
二人が眠るベッドの周りを、エメラルド色の蝶が絶えず舞っている。

二人は、とても幸せそうだった。
そう、恋人としての存在を互いに取り戻したのだ。
そこに、肉体はいらない。
イノベイドの力。それは、小さな奇跡を生む。