「馬鹿な・・・神である僕が・・・・負けるというのか。僕は、なんのために作られたんだ・・・」 吐血しながら、リボンズははじめて涙を流した。 なぜ、人は僕を生み出したのだ。 僕は、なんのために。 「・・・・・ジェネ?」 「リボンズ、もういいんだよ。もう、いいから。おやすみ。僕が傍にいるよ」 「リ・・・ジェネ」 「愛してるよ」 「・・・・愛して・・・ると・・・・・この・・・・僕を?」 「愛しているから。おやすみ」 リボンズは、盛大に吐血すると、そのまま呼吸を止めた。心臓も停止する。 見開かれた金色の瞳に、リジェネの意識体が映っていた。 「リボンズ。僕は、確かに君を・・・・憎んでいたけれど、愛していたよ」 透ける手で、リジェネはリボンズを抱きしめ、涙を流す。 哀れなリボンズ。 イオリア計画に忠実に生きた、人形。 おやすみ、リボンズ。 「おやすみ、リボンズ」 リボンズの体は、ガンダムが爆破することなく止まったことで、宇宙の気温によって氷ついた。 リジェネは、ゆっくりと手を伸ばして、見開かれたままのリボンズの瞳を閉じる。 (ああ。やっと、分かった。僕は、純粋種を生むために創造されたのか) リボンズの魂が、そういった。 意識体であるリジェネには、魂の言葉が分かる。 (人の可能性を信じなかった、僕の負けか。ここまで見事に敗北すると、何もいえないな。ありがとう、リジェネ。最期に、僕に会いにきてくれて。僕は、誰かに愛されたかったんだな) リボンズの魂は、イノベイターとしての力を使いすぎたせいで、そのまま霞んでいく。 「リボンズ・・・・」 (リジェネ。愛してるよ・・・・ありがとう) リボンズは、微笑んだ。 そして、この世界から完全に消えてしまった。 「どうしたの、リジェネ?」 地球で、ティエリアと一緒にいたリジェネは急に動かなくなったかと思うと涙を流していた。 「おやすみ、リボンズ」 「ああ・・・・おやすみ、リボンズ」 ティエリアの意識体の一部は、さっきロックオンの魂と一緒に眠りについたところだ。 刹那が迎えにくるまで、あと数週間はある。 リジェネは思う。 人間として生きようと。 リボンズの分まで、生きよう。 それが、僕にできるせめてもの。 祈りに似た、何か。 |