夜には、皆酔いが冷めていた。 スポットライトに浮かび上がる夜桜。 太陽の下で見るのとはまた違う趣がある。 露天が本格的に並び、ロックオンとティエリアは手をつないで、ティエリアは片手にジャボテンダーを持って屋台めぐりをする。 アレルヤは刹那と行動している。 金魚すくいやらくじやら、いろいろと遊んでいるようだ。 ティエリアは、飴細工の屋台の前で止まった。 「いらっしゃい」 店のおじさんが、にっこりと笑う。 「ジャボテンダーさんの飴はつくれますか?」 「は?」 「これです」 右手にもったままのジャボテンダーを見せる。 すると、店のおやじは笑った。 「かわいいの持ってるな、お嬢ちゃん。少し待ってろよ」 屋台のおじさんは、器用に飴細工でジャボテンダーをつくってくれた。 「すみません」 ロックオンが料金をはらう。 ティエリアは、ジャボテンダーの飴細工を食べることなく大切にしまった。 それから、いろいろ屋台を巡って、またティエリアの足が止まった。 「どうした?」 「桜の髪飾り」 それは、かんざしからバレッタまで、髪飾りなどを売っている店だった。 「何か欲しいものでもあったのか?」 「あれ」 ティエリアの手が、桜の簪を指差す。 「簪か。普通じゃつけれないぞ?それでもいいのか?」 「髪を結えばいいんでしょう?」 「そうだな」 ロックオンは優しくティエリアの頭をなでて、その簪を購入する。 そして、夜桜の下で器用にティエリアの髪を結って、桜の簪を髪にさした。 桜の簪は先端に小さな鈴がいくつもついており、動くたびにチリンと小さな音をたてる。 「本物の、桜は散ってしまうから」 だから、簪が欲しかったのだとティエリアは桜の木の下でロックオンとキスをした。 アレルヤと刹那と、集合場所で落ち合う。 それから、最後の夜桜を楽しんで、四人はトレミーに帰還した。 ティエリアは、しばらくの間髪を結って桜の簪をつけていた。それからは、またいろんな髪飾りにかえるようになったが、桜の簪は大切に大切にしまわれた。ジャボテンダーの飴細工はティエリアが食べてしまったけれど。 桜は毎年花を咲かす。 「また、来年も花見にいきましょう」 「そうだな」 ロックオンとティエリアは、約束した。 また来年も、花見にくることだろう。そう、アレルヤと刹那も一緒に。 |