あなたと歩むその道W







その日から一週間、刹那の家でフェルトは過ごした。
刹那は驚くほど家事にすぐれていて、フェルトと一緒に料理したり。

刹那は、付き合いはじめたからといって、急に体の関係を求めてくるような人間ではない。以前と変わらないように見えて、でもフェルトにとても優しく接してくれる。
笑顔を惜しみなく見せてくれる。

一緒のベッドで眠りにつく。
「ねぇ。刹那、私幸せ」
「そうか。俺も幸せだ」
「ありがとう、刹那。どうして私を選んだの?」
「ずっと好きだったから。俺は傲慢だったから、ティエリアを愛しながらフェルトも愛していた。でも、ティエリアにはもうニールがいる。こんな消去法ですまない」
「いいの。刹那と一緒にいられるだけで、幸せだもの」
刹那は優しくフェルトの髪を撫でる。
指には、お揃いのホワイトゴールドの指輪が光っている。

「約束する。フェルト、必ず幸せにしてみせる」
「刹那。私は、一緒にいられるだけでよかったのに。刹那とティエリアを見守っているだけでも幸せだった。まるで夢みたい」
「現実だ」

「愛している」
「私もよ」

恋人同士になった。
もう、愛を躊躇うことなく囁くことができる。

二人は穏かな時間を過ごす。
あなたと歩むその道。
それは、幸福の道。

トレミーに帰還した二人は、皆に祝われた。
ペアリングをしたままだったし、刹那がフェルトと付き合うことにしたと公に皆に公言したのだ。

「刹那。フェルトを不幸にしたら、許さないからな」
ティエリアが、きつい美貌で刹那を見つめる。
そして、次には柔らかくなって、フェルトを見つめた。
「フェルト、幸せかい?」
「ええ、ティエリア、幸せよ」
「ならば、僕は君たちを見守るとしよう」
後ろから、ニールの手が伸びて、ティエリアを抱きすくめる。
「ニール?」
驚くティエリア。ニールはティエリアに口付ける。
「もう、刹那に未練はないか、ティエリア」
ニールはニールなりに、ティエリアと刹那が愛し合っていたことを気にかけていたのだ。
「最初から、僕はあなたを一番愛していました。刹那のことも確かに愛していました。でも、恋人同士ではありませんでした。刹那は、僕の親友です」
「確かに、俺はティエリアを愛していた。親友以上恋人未満。それが俺たちの関係だった。これからは、普通の親友に戻るだけだ」

お互い、納得しているようだった。親友以上恋人未満。体の関係は確かにあったし、愛し合っていた。愛を囁くことも何度もあった。お互いを支えあってきた。フェルトとニールがいなかったからといっても、ティエリアと刹那が恋人同士になることはなかっただろう。なぜなら、ティエリアはずっとニールを愛していたから。

「愛しています、ニール」
「俺もだよ、ティエリア」
ニールとティエリアは、刹那とフェルトの前で深いキスをする。フェルトは自然と紅くなってしまった。ティエリアは自分より幼い17の外見で時間を止めたまま、大人の関係をニールと築いている。
「行こう」
刹那がフェルトの手を繋ぐ。二人は、キスもなかなかいかない関係だ。
でも、まだはじまったばかり。

「トレミー、恋人同士ばっかりになったね」
「そうね、アレルヤ」
「ライル、私もペアリングが欲しいわ」
「OKアニュー、今度一緒に買いにいこう」
ブリーフィングルームでは、恋人たちが笑いあっている。

「もう、なんなの。フェルトまでくっついちゃうなんて。私なんて、ビリーと離れ離れなのに」
ミス・スメラギは一人で重いため息をついた。