あなたがいる







目をあける。
意識体ではない、ちゃんとした自分の肉体があるのを確かめるように、ティエリアは手を天井に伸ばす。その気になれば、この肉体からも意識体だけ抜け出すことはできるだろう。
ティエリアは、本当はきたるべき時に向けて、ヴェーダと一体化したまま眠りにつくはずだった。リジェネが、その運命を変えた。
生きている本物のニールと引き合わせてくれたのだ。
リジェネは、リボンズと共にイノベイターとしていきながら、謀反を起こした。影でニールの肉体を回収し、蘇生に成功し、そしてアニューのツインとなるスペアに、アニューは脳量子波でたえずスペアと繋がっており、アニューと呼べる存在とライルを引き合わせた。

大いなるイノベイター、人間の上位種の力。リジェネはマスター・イオリアシュヘンベルグの後継者だ。イノベイターを新しくつくることも、人の命を創造することも、仮死状態であったニールを蘇生させることも彼にとっては簡単なことだった。
今では、ガンダムマイスターの一人としてCBのトレミーに乗っている。

「どうした?」
柔らかい声が、ティエリアの耳に届く。
リジェネはニールの肉体をいじりまくったせいで、ニールはイノベイターと同じ存在になっていた。細胞が変異しているのだ。遺伝子操作まで受けている。24歳の時のまま、時間をとめたニール。
「いいえ。あなたが、隣にいると思ってほっとしただけです」
同じベッドでいつものように眠っていた。
もう朝だ。
そろそろ起きなければ。

「おはよう」
「おはよう」
ティエリアは、ニールを見つめる。
心臓の鼓動が聞こえるように、その胸に顔を埋める。
「あなたが生きている」
「ちゃんと生きてるよ」
「もう少し、このままで」
ニールは苦笑して、毛布でティエリアを包み込む。

優しいエメラルドの瞳は、隻眼だったものを再生治療を受けて今では元に戻っている。
「ガンダムマイスターとして、一緒に生きよう」
優しく髪を撫でられる。
ティエリアは目を瞑る。

夢のような現実。全て、リジェネがもたらしてくれたもの。

「ティエリア〜。朝ごはんいこー」
扉の向こう側で、リジェネの声が聞こえた。
ティエリアは、起き上がって返事をする。
「今行く」
ニールも起き上がって着替えだす。

生きよう。この世界を。
ニールと一緒に。
リジェネに刹那にフェルトにライルにアニューにアレルヤにマリーにミス・スメラギにイアンにラッセにミレイナに・・・・そう、みんなと一緒に生きていこう。
イノベイドとしての役割もこなさなければならないが、人として生きることだって許されるはずだ。
だって、ここからでもヴェーダを制御することはできる。

ティエリアとニールは制服に着替え、ティエリアは片手にジャボテンダーを持って、ニールと手をつないで廊下に出る。
「おはよ、ニール、ティエリア」
リジェネが、片手にミニジャボテンダーを持って、ティエリアとお揃いの制服で待っていた。

「行こうか」
リジェネが先頭で歩きだす。
ニールとティエリアは、昔のように手を繋いで食堂に向かった。

愛する人は、隣にちゃんといるから。